みなさま、はじめまして。弁護士の長谷川千代と申します。
今月から、毎月第1水曜日に、フリーランスのみなさまに役立つ法律に関するあれこれについて連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。私の似顔絵は、趣味でのお友達であるかぴこさんに描いてもらいました。ありがとうございます!
私はRhythmoon編集部メンバーのほか、専門家相談コーナーにも参加することになりましたので、そちらの方でもよろしくお願いします!
弁護士バッチの模様をご存知ですか? ひまわりの花びらの中に小さな天秤をあしらったデザインで、ひまわりは、太陽に向かって明るく咲く花として「自由」と「正義」の象徴、天秤は「公正」と「平等」の象徴とされています。
今回は、先日の編集部の会議で話題になった著作権と「引用」の話です。「せっかく書いた記事やイラストを無断で引かれている......」「どこから引用したか書いておけば著作権侵害にならないんでしょ?」ということがありますね。
著作権については、また改めて書こうと思いますが、著作権は著作物を表現したときに発生します。著作権を持っていると、勝手に著作物が使われたりすれば損害賠償を請求したり、侵害を排除してもらうことができたりします。 でも、著作権による権利主張ができない場合もあります。そのうちの一つが『引用』です。
どういう場合に「引用」になるの?
では、どういう場合に『引用』にあたるのでしょうか。 著作権法の『引用』の条文は以下のようになっています。
32条第1項
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
この条文でわかる要件は、①「公表された著作物」であること、②「公正な慣行に合致するもの」であること、③報道、批評、研究その他の引用の目的上「正当な範囲内」であることです。
さらに、④明瞭区分性、⑤主従関係をあげている判例もあります。
④明瞭区分性とは、引用部分がその他の部分と明確に分けられていることを言います。括弧でくくるなどです。 ⑤主従関係とは、引用以外の部分が主、引用部分が従であることを必要としています。しかし、主従関係を判断するのは単純ではなくて、分量だけでは決まりません。引用する著作物や引用される著作物がどういう性質のものか、引用の目的や分量、態様などの様々な要素を考慮することになります。
また、⑥引用をする必然性、⑦出所の明示(複製以外は明示する慣行があるとき)も必要とされます。
ここまで書いても明確にこれが引用だ!とは言い切れないところが難しいところです。
ただ、最初に書いた「どこから引用したか書いておけば著作権侵害にならないんでしょ?」という点については、どこから引用したかを書いただけでは著作権侵害にならないわけではなく、他の要件も満たさなければいけないですよということになるのです。
要約をして引用することはできるの?
そして、要約をして引用することはできるの?という質問もありました。
こちらについては著作権法の条文上は認められていないように読めます。要約のほうが全文を引用するより著作権侵害の程度は低いから認められるという考え方もありますが、仮に認められるとしても忠実な要約で、同じような種類の表現であることが必要であると考えられます。
書いておいてなんなのですが、曖昧ですね。
著作権法は文化を守るためのものですから、他の法律よりも曖昧かなと思います。 でも、少なくとも上に書いたような要件をみたしていないと著作権侵害になりかねませんから、『引用』しようとする方は気をつけましょうね。