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前編では、マイナンバー制度の概要について解説しました。後編は税金関係の仕組みを中心にご紹介します。自分の仕事ではどんなところが変わるのか、普段の生活で何に気をつければいいのかがわかるようにポイントをまとめました。最後に専門家のアドバイスも掲載していますので、参考にしてくださいね。
変わるのは事業者が役所に出す税金関係の書類
マイナンバー制度の対象となるのは税務関係、社会保障、災害対策の3つの分野です。
ここでは税務関係の変更点について、ご紹介します。
税務署がマイナンバーを使って個人の所得を把握するため、今後、源泉徴収票や支払調書のような事業者が税務署に提出する書類にはマイナンバーの記載が必要になります。図のような仕組みです。
政府公報『いよいよマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)が始まります。』 より抜粋
事業者がこれまで従業員に給料を払うときやフリーランスに外注して料金を支払うとき、講演などで講師に謝礼や報酬を払うときなど、源泉徴収が必要な報酬や料金を支払った際に税務署に提出していた書類(支払調書や給与所得の源泉徴収票)のなかに、支払先のマイナンバーの記入欄が追加されます。フリーランスの皆さんのなかには、取引先から「提出書類に記入しなければならないのでマイナンバーを教えてください」と問い合わせを受ける方もいるでしょう。その場合は、先方のマイナンバーの管理体制を念のため確認したうえで、求めに応じてマイナンバーをお知らせします。
<POINT>
・変わるのは"税務署に提出する"支払調書、源泉徴収票
・そのため、"源泉徴収される場合"はマイナンバーを問われることもある
あなたは当てはまる?マイナンバーを提供する必要がないケース
源泉徴収が必要ない報酬や料金の場合には、事業者にマイナンバーを提供する必要はありません。そのほか、源泉徴収の対象であっても支払調書を交付する必要がないケース(たとえば、原稿料や講演料、弁護士や公認会計士、司法書士等に支払う報酬で年間5万円以下の場合など)は税務署に書類を提出しなくてよいわけですから、事業者にマイナンバーを提供する必要はありません。
また、5万円を超える報酬でも、発注者が個人事業主の場合(たとえば、フリーランスの編集者がライターに原稿を依頼するようなケース)は源泉徴収の必要がないことがほとんどです。これは発注した編集者が「源泉徴収義務者」である場合が少ないからです。「源泉徴収義務者」でなければ、わざわざ源泉徴収をする必要はありません。したがって、マイナンバーを使うこともありません。
事業者が法律で定められた目的以外にマイナンバーを使うことは禁じられており、マイナンバーを聞くときには何の目的で使うのかを明らかにするよう義務づけられています。不審に思ったときには、何に使うのかを確かめるようにしましょう。また、事業者が個人へ交付する支払調書には、マイナンバーは記載しないことが法律で定められていることも覚えておくとよいでしょう。
<POINT>
・(税金関係では)源泉徴収が必要な場合に限り、マイナンバーを使う
※源泉徴収義務者について、詳しくはこちら
仕事用のマイナンバーはつくれないの?
ところで、マイナンバー制度では法人にもひとつずつ13桁の番号が割り当てられます。これを法人番号といいます。会社のほか、NPO法人や一般社団法人などの団体にもこの法人番号が指定され、登記されている住所あてに、番号の通知が届きます。法人番号は法人番号公表サイトで公開され、誰にでも使えるようになっています。
この法人番号が指定されるのは、企業や行政機関、それ以外の法人税や消費税を納める必要のある団体で、個人事業主や法人の支店などには、番号は指定されません。つまり、個人でお仕事をしている方が仕事用として番号を取得するということはできないということです。
■専門家から一言
必要以上にナーバスにならなくても大丈夫
今回の制度のポイントは、税と社会保障の一体化による行政側の業務の効率化です。
したがって、一般の方はマイナンバーが導入されたことで大きく変わることは特にありません。
ただし、本当は一定額以上の所得があるにも関わらず、夫の勤務先にその事実を告げずに夫の被扶養者として社会保険に3号被保険者として加入している場合や、夫の所得税の計算上、配偶者控除を受けている場合には、行政側が容易にその事実を発見できる体制になりますので、運用が開始する2016年1月までに見直されることをお勧めします。
また、勤務先に内緒で副業としてフリーランスのお仕事をなさっている場合、マイナンバー導入により副業をしていることが勤務先にばれるのではないかと心配されている方がいるようですが、マイナンバー導入によりばれるということはありません。必ず確定申告を行い、確定申告時に住民税の納付方法を「自分で納付」を選択するようにしてください。
教えていただいた専門家
市川恭子さん(市川税務会計事務所)
公認会計士。税理士。MBA。NPO法人役員。東京都中小企業振興公社登録専門家。大手監査法人、資産税特化税理士法人、メガバンク本部を経て、公認会計士・税理士として2011年に独立。起業・創業支援から、中小企業の事業承継対策、個人の相続対策、企業の上場支援まで総合的に対応。いきいきと自分らしく生きていこうとされる方々が「親友」と話すように相談できる相手でいられるよう日々精進中。著書に「リテール営業で今すぐ使える税金の本」中央経済社(共著)など。
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※この前後編は2015年10月14日時点の情報に基づいて掲載しています。マイナンバーの運用方法は現在も度々、変更が行なわれていますので、ご注意ください。