アクティブ・ラーニング!? 何が子どもに求められているの?

20151026_semba-1.JPG

アクティブ・ラーニングが将来を決める?

前回は、今の日本で進められている教育改革が、グローバル化、人口減少や超高齢化、職業の変化などを見据えていることをお伝えしました。必要なのは、実社会で、個を活かし多様な人たちと課題解決をしていく力。私たち大人も、自分たちの仕事や暮らしの中で、新しいありかたやしくみを、模索し協働しながら作りあげようとしています。

今回とりあげたいのは、この教育改革のカギのひとつ「アクティブ・ラーニング」。将来の社会に対応する人材を育てるために必要とされている新しい授業の形です。実践する学校や民間の教室なども出始めていますが、このアクティブ・ラーニングとは、一体どのようなものなのでしょうか。

今の日本人の多くは、知識を一方的に受け取る授業を受け、受験勉強など知識を試すテストに答えるための勉強をして育ちました。しかし、今回の改革で文部科学省(以下、文科省)が導入しようとしているアクティブ・ラーニングは、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ授業スタイル。いま教育界で盛んに議論されているところです。

20151026_semba-2.jpg

一方的に授業を聞くだけの学習の時代はもう終わり? PHOTO BY NASA Goddard Space Flight Center

国際バカロレアは、平和な世界をつくる人を育成

このアクティブ・ラーニングについても、やはりまず本質を理解することが、的確に考えたり実践したり選択したりするためにヒントになりそうです。

その際に知っておきたいのが、「国際バカロレア(International Baccalaureate:以下、IB)」という教育プログラム。それにより、文科省が、アクティブ・ラーニングの導入によってめざしているものがわかりやすくなると思います。

IBは、ジュネーブに本部がある国際バカロレア機構が提供。対象の3歳から19歳までを年代別に分けた4つのプログラムで構成されています。世界共通の大学入学資格である国際バカロレア資格が取得でき、現在、世界140以上の国・地域の4,344校が実施。日本でも、文科省が、次のように述べ、積極的に普及を推進しています。

課題発見・解決能力、論理的思考力、コミュニケーション能力をはじめ、文章執筆能力、プレゼンテーション能力などが培われ、物事を多様な観点から 考察する訓練になるといった点において、優れたカリキュラム

英語力はもちろん、グローバル化社会でいかにも有用な上記の能力や国際的な大学入学資格など詳細も気になりますが、今回注目したいのは、その理念です。IBは「全人教育」をめざした総合的なプログラムで、その使命は、より良いより平和な世界を築くことに貢献する若者の育成。戦後ヨーロッパで、二度と戦争を起こさないための「世界市民」を育てるという思いをベースに、生まれたと言われています。

その理念は、下記の学習者像にも表れています。

◆ 国際バカロレア(IB)がめざす10の学習者像

①探求する人 ②知識のある人 ③考える人 ④コミュニケーションができる人 ⑤信念をもつ人 ⑥心を開く人 ⑦思いやりのある人 ⑧挑戦する人 ⑨バランスのとれた人 ⑩振り返りができる人

20151026_semba-3.jpg

先生はサポート役。ディスカッションやプレゼンで知識を活用

たとえば、日本の高校で導入されるIBのディプロマ・プログラムの内容は、「探究型学習」「プロジェクト型学習」「協同型学習」など。言葉だけ見ても、受け身の授業とは違うタイプの学習が想像できるのではないでしょうか。実際、これらの授業の中心は生徒で、先生はサポート役とされています。

さらに注目したいのが、IBの中核とされる「TOK(Theory of Knowledge)」という学習。教科の枠にとらわれず、「知識」を様々な角度から捉えて活用する力を育てます。

たとえば、生物で学ぶ「目の構造」。「網膜に到達した光が電気信号に変わり、神経を経て脳に伝わり、その信号を脳の視覚野が認識する」という知識について、私達は正しく暗記することを重視してきました。しかし、文科省の資料によると、TOKの学習では、この「知識」に対し、たとえば、「見えているものは、目で見ているのではなく、知識で見ている」と考えることなども有意義とするそうです。また、生徒の経験や他の授業で学んだことと関連づけてディスカッションすることも。

これらの授業に決まった筋書きはなく、地域や学校、生徒の実態に応じた創意工夫で特色ある授業が展開されます。こうして、将来、予測できない様々な場面に直面しても状況理解ができるよう、ものごとを多様な観点から考察する力を大切にし、論理的思考力を育てていくのです。

いかがでしょうか。これは、日本の教育改革の目標にも重なります。また、授業は、文科省が提唱するアクティブ・ラーニング型と言えそうです。

国際社会の1人として。誰もがクリエイティブに

日本社会は課題を抱え新しい教育を模索していますが、国際社会もまた、紛争や貧困、環境問題などの未曾有の課題に直面し、それを解決する人材を育てようとしているのです。これまでは、一部のリーダーが創造的な動きで社会を率いてきましたが、これからは、誰もが世界各所でクリエイティブに問題解決していく必要があると言われます。

20151026_semba-6.jpg

世界中のみながクリエイティブに力をあわせて良い世界を。PHOTO BY Danumurthi Mahendra

IBは、現在、日本国内での認定校も増え、東京大学をはじめ入試で活用する大学も増加中。文科省は、2018年までに認定校を200校にするという目標を立てています。ますますの広がりが期待されますが、IBプログラムそのものでなくてもこの理念や趣旨、実践例をふまえることで、日本に導入したい教育の姿が見えてくるのではないでしょうか。

20151026_semba-4.jpg

PHOTO BY Kevin Krejci 

いま日本では様々な形でアクティブ・ラーニングが模索実践されていますが、有効な手段とされるディスカッションやフィールドワークなどを形だけ取り入れることには意味がないとも言われています。

子ども自身の中でいきいきとしたアクティブ(能動的)な学習が行われ、正解がひとつでない問題への対応力、つまり、課題を見つけてみなで解決する力が育つ学び、それが、めざすアクティブ・ラーニングだと思われます。変わり目の時代ですが、必要な教育の本質をとらえて、それを少しでも子どもたちに与えて未来に送りたいものです。

ひとりひとりの個性を活かしていく社会。その実現が、切実な社会問題のための策だとしても、また、模索の道は大変でも、やはり希望にあふれた素敵なことを、今、社会全体のみなでしているのだとも思います。

国際バカロレアについてのオススメ本はこちら

世界で生きるチカラ---国際バカロレアが子どもたちを強くする
坪谷 ニュウエル 郁子
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 11,384

国際バカロレアを知るために
大迫弘和 長尾ひろみ 新井健一 カイト由利子
水王舎
売り上げランキング: 300,567
仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

仙波 千恵子さんの記事一覧はこちら