旅するファッションコラム

October 30 2015

旅行のパッキングは訓練のチャンス! ワードローブを育てる力を磨く

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前回、ワードローブは育てるものであり、自分らしいワードローブを作るためには「自分が好きなものってなんだろう?」と考えてみるのが有効、という話をしました。そして、ワードローブに欠かせないのは、やはり「機能的である」という視点です。

旅のパッキングを訓練機会と捉える

カプセルワードローブ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 「カプセルワードローブ」とは、「Wardrobe」というロンドンのブティックのオーナーであるスージー・フォックスが1970年代に作った言葉で、スカートやパンツ、コートなどのように流行り廃りのない欠かせないアイテムで構成されるワードローブのこと。アウトフィット(=コーディネート)数を最大限にできるよう、どの組み合わせでも機能するような服で構成され、過剰に服をもたなくてもどんな状況にでも対応できることが主な目的でありメリットであるとされており、欧米ではかなり浸透した考え方のようです。日本でも数年前から断捨離が流行っていて、カプセルワードローブのようにミニマルで整然とした機能的なワードローブは多くの人にとって魅力的に映るのだと思います。

しかし! 実際にカプセルワードローブを構築するのはとても大変な作業です。

「まず、クローゼットのなかにあるものをいったん全部外に出してみましょう」と言われてしまうと、躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。むしろそれができるなら大体の問題は解決していると言っても過言ではないかもしれません。その目の前にそびえる高い壁を乗り越える、あるいはぶち壊すことなく、なんとかワードローブを洗練させていく方法はないものでしょうか。

そこで利用したいのが、旅行のパッキングです!

旅行のパッキングとは、すなわち「持ち出し用ワードローブ」をつくること。クローゼットから一定量を取り出し、そのなかでアウトフィット数を最大化し、できるだけ多くの状況に対応でき、きちんと機能する「カプセルワードローブ」を作ること、と捉えてみてはどうでしょうか。

私は旅行や出張などで、年間10回以上、パッキングの機会がありますが、その度に、「カプセルワードローブ」を構築していると感じていて、それは「機能的なワードローブを育てる」うえでも役立っています。

年相応の大人の旅を楽しむためのパッキングポイント

ところで旅行は、行く先々でその土地の美味しいものをいただいたり、地形や気候の影響も受けながら形成される街のキャラクターを感じ取ったり、その街に行かないと見ることができない美術品を見たり...と、服を着ること自体が決して目的にはならないはずですが、とはいえ適切な服選びなくしては快適で豊かな経験はできないものです。

10代や20代前半の若い頃は、まわりも大目に見てくれるし、快適かどうかなんてことよりも、より多くのことを経験できることの方が重要で旅自体が大冒険。正直、何を持っていっても、何を着ていても、エネルギーのみなぎった身体自体がどんな服よりも魅力的に見えるし、それはそれでいいのです。

でも、ある程度年齢を重ねたら、やはり判断力のある大人として、状況に合わせた、街の空気を壊さない、快適でありつつ無難ではない、そんな服選びができると素敵です。

ラクちんだからという理由だけでどこに旅行に行くときにも、自分に似合っているわけでも、アイテムとして美しいというわけでもないのに、ひらひらのフラワープリントのチュニックにレギンスや中途半端なカプリパンツ、あるいは今なお10代の時のように、Tシャツにデニムにパーカーにスニーカーというスタイルになってしまっていませんか?

若い時よりは、旅行にかける金額も増え、滞在するホテルや旅行プランのランクが上がっていくこともあるでしょう。かけたコストに対して見合う体験ができるかどうか、行く先々で適切に扱ってもらえるかどうか、旅先での装いはそんなところにも影響します。動きやすくて快適ということだけで旅服選びをしてしまうのはもったいないことです。

そんな大人の旅行におけるパッキングで考えなくてはならないチェック項目をあげてみました。

・旅行日数に十分に足りるだけの数があるか
・その土地の気候、天気に対応できる服かどうか
・旅先でのアクティビティに適切か
・旅行地の文化や雰囲気にあっているか(現地の雰囲気を壊さないか)
・一緒に行くメンバーとの整合やポジショニングはどうか
・泊まるホテルや訪問する場所のクラス感への配慮はできているか
・こうありたいという姿になれそうか(どんな風に写真におさまりたいか、旅行先でどんな人 として扱われたいか)
・体型
・自分のキャラクターと価値観
・洗濯環境

最後の3つについて補足します。まず、「体型」については、長所を引き立て短所をカバーするというパーソナルスタイリングのこととは別に、調達容易性の観点も必要です。特に海外旅行の場合には、私のように小柄(150cm)だと自分のサイズで見つけにくいという問題があります。それでもアウターやトップスなどは多少大きくてもなんとかなるのですが、体のラインにきれいに沿ったドレスやパンツなどのボトムスに関してはそうもいきません。ですから、現地で短時間で調達するのが難しい可能性が高いものは多めにもっていくという判断につながることもあります。逆に欧米人に近い体型の方が欧米に旅行するようなケースでは、日本から持っていくものは最小限におさえ、現地で自分の体型にあうアイテムを調達することを考えた方がいい場合もあります。

次に「キャラクターや価値観」について。一般的に旅行のパッキングに関する記事は「いかに軽量にパッキングするか」「いかに無駄をなくすか」を重視するものが多く見られます。そうしたニーズや価値観をもった人は多いのでしょう。しかし私の場合はそこをあまり重視していません(旅行の種類にもよります)。それよりも、私の場合は「現地の雰囲気に合わせてコーディネートを楽しみたい」「オプションは常にたくさんもっていたい」ということの優先度が高いため、自分の価値観に照らすとコンパクトなワードローブが絶対だとも思っていないのです。だからといって、無尽蔵に何もかもを持っていくこともできません。ですから「カプセルワードローブ」のエッセンスを取り入れることにしています。旅行に行くのは自分です。周辺の情報に惑わされずに自分はどんな価値観や指針をもっているかを考えてみましょう。

そして「洗濯環境」。着た服はすべて汚れ物として持ち帰る人もいれば、その日に着た服はその日のうちに洗ってしまうタイプの人もいると思います。また地域や宿泊施設の湿度によって洗い物が2〜3時間で乾くところもあれば丸一日干しても乾かないということもあります。それによって必要枚数、素材選び、洗濯関連用品の要不要に影響もあるでしょう。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、パッキングで考えなければいけないチェック項目として取り上げたこれらは、実は日常生活を完全に凝縮しているともいえます。ですから、1週間分程度の服のパッキングでも、これらのことを念頭に置いて選んだ服は、日常的に活躍させることができる可能性が高いのです。

今回は、パッキングで考えなければいけない観点を紹介しましたが、次回記事では冒頭で触れた「カプセルワードローブ」の視点も取り入れながら、私が普段の旅行でどのように、パッキングする服を選んでいるか、また機能的なワードローブを育てるのにどのように役立っているかについてご紹介します。 (次回は11月18日更新予定)

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9月に訪れたマルタ共和国の首都ヴァレッタで。「地中海のへそ」と呼ばれることもあるマルタは海に囲まれたマリンリゾートでもあり、また要塞の島でもあります。ネイビーのリネンスカートに極細ボーダーのチューブトップがついたようなデイドレスに、ウェッジソールのパンプスで街歩き。10kmぐらいは歩きました。

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