長野県在住 エディター 増村江利子さん

地方で働くってどんな感じ? 地域ならではのフリーランス事情を知りたい!
「地方フリーランス生活」では、自分らしいスタイルで働く地方フリーランサーに、地方で活動することのメリットやデメリットのほか、日頃心がけていることなどを伺います。今回は、長野県で活動されているエディター、増村江利子さんにお話をお聞きしました。

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プロフィール

活動地域 長野県
フリーランス歴 4年
職種 エディター、ライター
経歴 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。東京都から長野県諏訪郡へ移住し、DIY的八ヶ岳暮らしを始めて半年が経過。"小さく暮らす"をモットーに、賃貸トレーラーハウスにてミニマルライフを実践中。一児(4歳)の母でもある。
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フリーランスになる前は、どういった仕事をされていましたか?

制作ディレクターとしてWeb制作会社に勤めていました。その後は、Webマガジンで広告制作や編集を担当。会社のために身を粉にして働いてきましたが、産後に育児休暇を得て会社に戻るか、フリーランスになるかを考えていた際に、人事担当者から「子育てしながらの時短勤務では制作の第一線に戻ることは難しい」と言われたため、フリーランスになることを決めました。会社のためではなく、自分と社会のために働こうと思ったのです。

エディターという職種で独立した理由は、「伝える」ことを仕事にしたかったから。現在のニュースメディアを批判するわけではありませんが、週刊誌のように感じることも多くて。私はもっと明るくポジティブになれるような、勇気づけられるようなことを伝えたい。そのためにも、メディア業に関わり続けたいと考え、編集職を選びました。

東京から長野県に移住されたきっかけを教えてください。

長野県諏訪郡富士見町で活動をする空間制作ユニット「グランドライン」を取材する機会があり、彼らの活動や作品に惚れ込んだことがきっかけです。
彼らは、資材を購入せずに、使われなくなったものを見つけてきて、その素材を活かして空間をつくります。それは、規格品よりも規格外で、依存ではなく自立したものです。私は、大量生産、大量消費の今の社会に対するカウンターカルチャーとして「生きるリテラシー」を感じました。彼らのもとで、彼らのつくるものを間近で見ながら暮らしたい。その思いが募り、東京都新宿区神楽坂から長野県諏訪郡富士見町にある八ヶ岳の麓に移りました。

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増村さんが住む地域の風景

働く土地を変えたことで、働き方やライフスタイルはどのように変化しましたか?

当時の夫と離婚し、シングルマザーとして移住したので、ライフスタイルががらりと変わりました。とくに住環境については、都心からの移住だったため、大きな変化がありました。移住先では、コンビニまで車で20分かかり、手紙をポストに投函するのにも車が必要でした。
でも、自然の中に身を置くことで、過剰なモノやサービスが不必要なものとなり、暮らしがシンプルになって、等身大で暮らしている感じがします。風の音を聞いて、雨の音を聞いて、雪の白さに驚いて。季節ごとにさまざまな気づきがあります。移住してから、気持ちがおおらかになったようにも感じています。

また、4歳の娘との遊び方も変わりました。移住する前は、何をして遊ぶかを考えてしまっている自分がいましたが、移住してからは、毎日の暮らしがそのまま遊びになりました。田園風景の中で、賃貸の小さなトレーラーハウスに住んでいることもあり、毎日が旅行気分。親も子も無理することなく、のびのびと過ごしています。

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増村さんが暮らすトレーラーハウス

長野県で仕事をはじめるにあたって、苦労したことはありますか?

Skypeなどオンライン上で会議ができる職業を選んでいたこともあり、移住したことによる支障はありませんでした。むしろ移住してから、「移住」「小屋」といった自分の暮らしに見合ったキーワードに関する編集の仕事が増えたような気がします。
ただ、自宅のネット環境が整うまでは、図書館で仕事をしていました。私の住んでいる地域では、ネット環境が整っているカフェや図書館などのスペースが少なかったのですが、ネット環境さえ整っていれば問題はありません。

一方、娘の通う保育園については東京と違った慣習がありました。春休みがあったり、4時のお迎えが基本でそれ以降は延長保育になったり。でも、自然豊かで広い園庭や畑もあり、子どもたちが畑で収穫した野菜が、その日のお昼ごはんになります。子どもが自然の中で遊び、ともに生きることを身につけることができる、良い環境だと思っています。

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増村さんのご自宅の様子

地元と地元以外のクライアントの割合をお聞かせください。

首都圏:長野県=9:1

遠方のクライアントと仕事をするために心がけていることは?

「遠方のクライアント」と感じたことは一度もないくらいです。でも、小さな娘もいるので、体調を壊して看病するなど、万が一のために早めの作業を心がけています。ただ、メールの返信などはあまり早くし過ぎないようにしているんです。近年、「すぐに返信しないといけない」という風潮があるように思いますが、「落ち着いて翌日に」と心がけています。

長野県で働くことを選んで良かったことを教えてください。

逆に言うと、移住したことで後悔したことは何ひとつありません。今でも1カ月に2〜3回ほど東京へ出張しているのですが、電車の遅延に神経を使ったり、ランチしながら30分で打ち合わせをしたりと、東京での時間は慌ただしく過ぎていきます。そうした環境から脱却でき、本当にやりたいことに向き合える余裕を得たことは、大きな利点だと感じています。

また、私たちを温かく迎え入れてくださった地域の方々には、本当に感謝しています。再婚予定のパートナーと一緒に暮らしており、夫、私、娘でそれぞれ苗字が異なる期間があるなど、家庭環境が複雑な時期もあったのですが、地域の人みんなに温かく見守られていることが大きな支えとなりました。

長野県ならではのリフレッシュ法は?

毎日、犬の散歩がてら森の中へ入ります。八ヶ岳の山に30年ほど染み込んだ伏流水を手に取って、静かな森を歩くと神聖な気持ちになります。そのほかにも、移住先の友人たちと家でゆっくりと語り合ったり、親しくなった町の長老たちに美味しいお料理屋さんに連れて行ってもらったりすることもあります。

今後の目標をお聞かせください。

現在、週3日は編集やライティングの仕事、週2日は大工仕事をしていますが、もう少し大工仕事ができる時間を増やしたいです。 そして、味噌や醤油、お米や野菜などの食べ物だけでなく、家の中で使う家具や道具など、すべてを自分の手でつくりたいと思っています。今後、少しずつ「商品」を買う機会を減らして、すべて自分でつくりたい。そのつくる行程の中に、編集者として個人として発信していきたい「未来のヒント」があるように思います。

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大工作業中の増村さんとお子さま

最後に、地方で働くことに興味のあるフリーランサーへ一言お願いします。

まず飛び込んでみてください! 移住すると収入が減ってしまうのではないか、現地で仕事をどう取ってくるのか、いろいろ頭で考えていても何も前に進みません。足を運び、人と話し、つながりをつくっていれば、その先に自分の暮らしと仕事があるはずです。都心に比べて家賃が安いので、「稼がなくちゃ!」と力むことなく、やりたい仕事ができるようになると思いますよ。

※この連載のバックナンバーはこちらからご覧ください。
※次回の「地方フリーランス生活」は12月14日(月)更新予定です。
南條祐弥

Writer 南條祐弥

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
児童文化や女性のライフスタイルの分野を得意とする、大阪在住のフリーランスライター。コラムやシナリオを執筆するほか、書籍の編集協力、取材レポートの提供なども行なっている。リズムーンでは、地方で働く女性フリーランサーの多様なライフスタイルを発信中。趣味は絵本を読んだり、映画を観たり。ハイキングに出かけるのも好き。
http://ameblo.jp/original-ehon/

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