変わる子どもの入試。未来のための学校選びはどうする?

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photo by jinkazamah

テロ、戦争、難民...日本の子どもが学んでおくことは?

前回は、教育改革の鍵のひとつアクティブ・ラーニングについて考えました。参考にしたのは、日本でも導入が進められている、国際バカロレアという教育プログラムの理念。そして、子どもたちを、将来の日本社会や国際社会の課題も超えて生きる人を育てる授業だということ、誰もがクリエイティブになり、一人ひとりが自分らしく力を発揮しあう社会をめざす教育であることが確認できました。

先日は、パリで同時多発テロが発生し、テロリストを倒すという名目でシリアへの空爆などが行われています。そのシリアでも、子どもを含む多数の犠牲者が出て、難民となった子どもたちも明日をも知れぬ状態で学校にも行っていないとの報道が。日本でも多くの人が、この暴力の連鎖から生まれる不幸に心を痛めていることと思います。また、この過酷な環境で育つ子どもたちが大人になる将来、それぞれの価値観や人生観を抱えて同じ地球で共に暮らしていくのが、今の子どもたちです。

子どもたちに、今授けておきたいもの、育ててあげたい力はどのようなものでしょうか。

アクティブ・ラーニング授業のテストは?

日本では冬が近づくこの時期、子どものいる家庭では、小さな子から10代後半までそれぞれ次年度の進路や今後の学習環境を考えたり、入試勉強が本格化したりしているのではないでしょうか。すでに進路が決まった人、試験が終わった人たちもいると思います。

今、急速に小学校から大学までの教育現場でアクティブ・ラーニングが試みられていますが、そこでは、答えがひとつでない問いに対して自分で考えたり表現したり協働したりすることを学んでいるはず。そのように育てられた力は、知識を確かめる従来のテストでは適切に計れません。

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PHOTO BY Joe Goldber

とはいえ、知識やトレーニングといった従来のような学習も必要。アクティブ・ラーニングの方法や取り入れ方は学校によってさまざまで、テストの内容やあり方についても、同時に模索されているようです。

以前ご紹介したとおり、政府が進めている高大接続システム改革は、大学の入学試験内容を変えることで大学や高校の授業も一体的に変え、中学校、小学校の授業も変わっていくという構想。授業が変わるだけではなく、今、中学校の入試にも新しい動きが生じています。

公立中学校も選ぶ時代。中高一貫? 受験する?

現在、小学6年生は、公立に進学するとしても「3年制の中学にいくか、6年制の中高一貫校に行くか」「入学試験(正確には、適性検査などの選考)がある学校にするか」などの選択を迫られます。文部科学省は、私立の中学校・高等学校を中心に広まっていた中高一貫教育の利点を認め、「中等教育の一層の多様化」をめざし、中高一貫教育の推進を開始(平成11年)。公立の中高一貫教育校も設置されています。

公立中高一貫校には入学に選抜がある学校も。小学生の過度な受験勉強には批判や心配もありますが、文部科学省も、次のように言っています。

受験準備に偏した教育を行ういわゆる「受験エリート校」になったり、受験競争の低年齢化が生じたりするようなことは、教育改革に逆行するものであり、あってはならないこと
中高一貫教育Q&A

そのため、公立中高一貫校では、「学力テスト」ではなく、「適性検査」や作文、面接、小学校の調査書などで入学者を選抜。「適性検査」は、覚えた知識でなく「考える力」や「表現する力」などを問うもので、国語、算数、社会、理科などの教科を融合させた、身近なテーマからの出題が多いのが特徴です。この教育観への共感や、6年を通した特色ある教育内容、卒業生の進学実績の高さ、経済的な負担の軽さなどから、公立中高一貫校はとても人気があります。

入試問題で学校チェック? 親は「選ぶ力」を身につける

さらに最近では、私立の中学校でも、適性検査型の入試の実施や、通常試験に「考える力」を問う問題を出題する学校が増加。背景には、公立中高一貫校をめざす受験生のとりこみだけでなく、自校のアクティブ・ラーニング授業にあった生徒旧タイプの試験での得点が低くても伸びしろの大きい生徒の獲得に対する思いもありそう。問題はそれぞれユニークで、「こんな学習をしてきてほしい」「こんな授業をするよ」というような学校からのメッセージさえ感じる入試問題もあります。学校を知るためには、入試内容を見ることもおすすめします。

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適性検査型の入学試験を実施する私立の学校のチラシの一部。「公立中高一貫校」受験生にも対応、との言葉も。

アクティブ・ラーニングと同様に、この、知識でなく思考力を問うテストについても、各現場で、内容や使い方の模索がまだまだ続くと思われます。しかし、このタイプのテストで力を発揮できるような学習環境を日頃から整えていくことが、今の時代の進路選択のひとつの指針になるのではないでしょうか。選抜のある学校に行かなくても、そのような学びができればいいですし、受験をして入った学校でも、方針が違うようでしたら、学校外での工夫がいるかもしれません。

また、受験する学校を選ぶ場合、中学でも高校でも大学でも、これだけ世の中や教育内容が変わっていると、何年か後に卒業する時のことや10年後20年後の社会での活躍の度合いは、偏差値ランキングからだけでは見極められません。保護者は、この時代にめざす教育を頭において、それぞれの家庭や子どもにあった教育環境を選んで行くために、求めることと選択肢を整理することも大切。「選ぶ力」が必要とされます。進路指導についても、そのような視点からのアドバイスや情報を取り入れたいものです。

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どんな学校を選ぶ? / photo by Gutifoll

「学校」に行かない選択も。多様な育ちができる社会へ

今後は、正規の学校だけでなく、今まで法的に認められていなかったフリースクールなどの選択肢も実現しそうです。10月に就任した馳浩文部科学相が以前から力を入れて作成してきた議員立法が、今月、自民党によってまとめられました。野党の大筋合意も得ており、来年の通常国会で成立すれば2018年にも施行される可能性が。それにより義務教育の場を学校に限った国民学校令が出された1941年からの路線が大きく変わることになります。

これは、全国12万人を超える不登校児(2014年)の支援につながるものですが、既存の学校教育にとらわれない独自の教育を望んできた家庭にとっても、希望の兆しが。選択の責任も生まれるものの、子どもたちひとりひとりを大切にする、多様な育ちの選択肢がある社会への流れが、今、確かに起きていると感じます。

メリットの部分を活かせるように、この時代の転換期をみなで前向きに歩みたいものです。

仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

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