児童養護施設から巣立つ子どもたちの自立を支援|認定NPO法人ブリッジフォースマイル

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんを紹介していきます。第9回目は、認定NPO法人ブリッジフォースマイルの広報・植村百合香さんにお話を聞きました。

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「カナエール」スピーチコンテストのための原稿づくり。奨学生と社会人ボランティアが、真剣に向かい合う瞬間。

「ブリッジフォースマイル」の活動について教えてください。

児童養護施設から社会に巣立つ子どもたちの自立を支援しています。具体的には、自立支援、啓発活動、人材育成の3つの活動を通して、社会的養護の元にある子どもたちを社会につなぐ架け橋となり、どんな環境で生まれ育っても、夢と希望を持って笑顔で暮らせる社会を目指しています。

なぜ、そのようなご活動、支援を始めようと思われたのですか。きっかけを教えてください。

代表の林が起業を目指して子連れMBA留学を計画していたときに、あるビジネス研修に参加しました。そこで、「児童養護施設を支援するCSRプログラムを企画、提案してほしい」というクライアントの依頼を受け、ビジネスプランを作成し、発表することになったのが児童養護施設との出合いです。

プレゼンのための調査中、児童養護施設の現状、日本の子どものおかれている困難な状況に大きな衝撃を受け、MBA留学をやめてNPOを立ち上げることになりました。

児童養護施設には、どのような子どもたちが暮らしているのでしょうか。施設の現状を教えてください。

日本の児童養護施設では、虐待、貧困、病気などを理由に、親と暮らせない2~18歳の子どもたちが3万人以上生活しています。その9割には親がおり、6割以上は虐待をされた経験があると言われています。子どもたちを支える児童養護施設の現場は、さまざまな課題を抱えています。たとえば、1人の職員が6人の子どもを担当し、問題行動の対応に追われ、疲弊し退職してしまうということも少なくありません。そのような中で、退所した子どもたちへの支援までは、なかなか手が回らないのが現状です。

施設では18歳までの子どもたちが暮らすことができるということですが、18歳を過ぎると施設を出なくてはいけないということでしょうか。

はい、児童福祉法で定められている年齢が18歳であるため、彼、彼女たちは18歳で高校を卒業すると同時に施設を出て、自力で生きていかなければなりません。親を頼れず、公的支援もほとんどない中、大学等へ進学する子はわずか20%。ほとんどの子どもたちが、社会に出て働きます。

そんな中、経済的、精神的に不安定な状態で、小さなつまずきから、孤立、精神疾患、ホームレスに陥ったり、暴力団や性産業に巻き込まれたりする可能性があります。さらには、貧困、虐待の連鎖や、犯罪や自殺に追い込まれることも。もちろん、必ずというわけではありませんが、とても厳しい現実があります。

ブリッジフォースマイルが行っている施設を出た後の子どもたちへのサポートについて、少し詳しく教えてください。

施設で生活する中高生には、働くことへの将来イメージを高められるよう職業体験プログラム「ジョブプラクティス」や実際に働く体験をする「インターンシップ」、施設を訪問して行う「出張セミナー」などを通じて、自立へ向けて、主体的に進路を選択できるように支援を行っています。

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「巣立ちプロジェクト」グループワークの前に、自己紹介がてらハイタッチ!

看板プログラムは、高校3年生に向けた「巣立ちプロジェクト」です。社会人の先輩から金銭管理や引っ越しの手続き、危険から身を守る術など一人暮らしに必要な知識や知恵、スキルを伝えるセミナーや生活必需品の寄付仲介を行っています。今年は10の支部に分かれ、120名の高校生、それと同数の社会人ボランティアが参加しています。

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「巣立ちプロジェクト」修了式の様子。半年間、顔を合わせたメンバーとも一旦ここでお別れです。

自立のヒントをまとめた自立支援ハンドブック「巣立ちのための60のヒント」は、全国の児童養護施設で利用されています。

退所後支援としては、「アトモプロジェクト」があります。仲間と交流するためのイベントを設けたり、ボランティアと退所者が毎月マンツーマンの面談をする「自立ナビゲーション」を実施しています。孤独になりがちな退所者とつながり続けることで、困った時に頼ってもらえるような関係づくりを目指しています

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「アトモプロジェクト」バスケットボール大会。久しぶりの仲間と、本気で点を取り合い、思い切り体を動かしました。

そのほか、児童養護施設の子どもたちが抱える「進学格差」と「希望格差」の解消を目的として、スピーチコンテストを実施し、大学や専門学校に通う退所者に返済不要の奨学金を提供する「カナエール」も実施しています。

活動をしてうれしいこと、大変なことはどんなことですか。

10年目を迎え、今では年間ボランティア250人、協力企業100社のお力添えをいただけるまでになりました。社会と児童養護施設の橋渡し役として、双方の笑顔を見ることができたときはやはりうれしいですね。

一方で、自立支援はゴールを定義するのが難しいテーマなので、成果や答えがハッキリしていない分、迷ったり、仲間内での議論が激しくなったりすることもあるんです(笑)。受益者となる子どもが、きちんと真ん中にいるような話し合いを心がけていけたらと考えています。

ブリッジフォースマイルが未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

児童養護施設出身であることを、隠して生活している人はたくさんいます。いま支援している子たちにも、その傾向があります。これは、いまの社会における児童養護施設への偏見や哀れみを、当事者たちが感じ取っていることの現れではないでしょうか。

施設出身であることがまわりの人に当たり前に受け入れられ、当事者がそれを隠す必要もなく、わざわざ丁寧に説明する必要もないくらいに、普通のこととして語られるようになるといいと思います。

読者へのメッセージがありましたら、お願いします。

子どもの貧困、虐待のニュースは度々聞かれるようになりましたが、その受け皿となる児童養護施設のことは、まだまだ知られていないと感じます。

身の安全の確保やプライバシー保護の観点から、当事者の顔を積極的に出せないのも、大きな理由のひとつです。ですが、実際に彼らに会っていただくと、イメージはガラリと変わるかもしれません。先ほどご紹介した奨学金支援プログラム「カナエール」は、現在、奨学生を支えてくださるボランティアを来年1月まで、大募集しています。スピーチコンテストは、毎年6月に開催していますので、実際の彼、彼女たちの生の声をぜひ聴きにきていただけるとうれしいです。

通年で募集しているのは、広報啓発活動のボランティア。ライティング、写真撮影、映像編集、デザイン、Webプロモーションに強い方大歓迎です! ぜひ仲間になってください。

take action-いま私たちにできること-

誰もがそうですが、新しい世界に飛び立つとき、挑戦するときは、不安が多いもの。その時に、頼れる人がいたら、そして、生涯を通じて、一緒に楽しんだり、泣いたり笑ったりできる安心できる場所があるのは、心強いですよね。

子どもたちが安心して人生を歩めるように一緒に寄り添う、HUBであり懸け橋。ブリッジフォースマイルは、子どもたちの笑顔を未来へ繋ぐ、そんな存在に違いありません。

これからも、ひとりでもたくさんの笑顔が社会に巣立っていきますように。

認定NPO法人ブリッジフォースマイル
ホームページ:http://www.b4s.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/bridge4smile/

林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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