日本の育児を変えるヒントは? 北欧子育てのイベントレポート

子育てしやすい環境や社会制度が注目される北欧の国々。リズムーンでも、現地からの記事「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」が好評です。先日、東京・二子玉川では、北欧の子育てに触れられるイベントも開催され、各国と日本の育児事情のギャップを語るトークイベントなども行われました。早速、当日の様子を、これからの子育てを考えるヒントとしてお伝えします。

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このイベントは、12月17日〜19日に二子玉川ガレリアで行われた「北欧の子育てに学ぼう!北欧ファミリーDAYS2015」。アイスランド・スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランドの北欧5カ国大使館の後援で、さまざまな展示やステージイベント、企業ブース、ワークショップなどが目白押し。北欧流のクリスマス文化にも親しめるとあって盛況でした。

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北欧グリーティングカードづくり。フィンランド人3児の母でもあるアートディレクター、Lumico Harmonyさんのワークショップ。雪だるまは三段!

父親の育児は「手伝う」ではなく「シェア」

オープニングイベントは、モデルの西山茉希さんと、東京農工大学特任准教授で文化人タレントでもある、フィンランド語翻訳通訳家の坂根シルックさんのトークショー。2才の娘さんを育てている西山さんとのトークで、日本での子育ても経験してきたシルックさんから、フィンランドの子育ての話が聞けました。

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この日は「休日に娘と一緒に二子玉川にいるようなファッションを意識した」という西山茉希さん(左)と、20年以上日本で子育てをしてきた坂根シルックさん(右)。

「9割の女性がフルタイムで仕事をする」というフィンランドは、充実した社会制度もさることながら、男女の家事分担も印象的。家事や育児は、男性に「"手伝ってもらう"のではなくて"シェアをする"」とシルックさんは言います。たとえば、母親が保育園に迎えに行くなら、父親が早めに家に帰って食事を作るなど。

普段から夫婦で育児を分担しているという西山さんも、「ええ、すごい!」「シェアするって素敵ですね」と改めて感心。男性がそれを「普通」と考える環境にまでなっているのがすごいと話し、会場にも頷く女性たちが。

日本では、まだまだ男性や子どもが家事や育児をすることを「妻の手伝い」「母の手伝い」と考えてしまう人も多いですが、北欧では臨機応変に男女や年齢に関係なく"分担"するとのこと。現在50代のシルックさんも、家事は男女別け隔てなくできるように育てられたそうです。

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「待機児童」や「専業主婦」は、ほとんどいない

北欧出身の"イクメン"やワーキングマザーによるトークセッションも行われました。

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トークセッションの登壇者。左から、司会・進行の坂根シルックさん、デンマーク出身の建築家・イェンス・マーティンさん、デンマークの父を持ち複数の国で育ってきたデザイナー・河東 梨香さん 、スウェーデン出身の高齢者施設を営むグスタフ・ストランデルさん。

国によって違いはあっても子育てを手厚く支援するシステムがあること、それにより、待機児童や専業主婦がほとんどいない状態であることなど、北欧の方々同士で話すのを聞くと、日本はまるで次元が違うと感じたほどです。

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会場には、以前リズムーンの記事でも詳しくお伝えされたフィンランドの育児支援制度「ネウボラ」の案内や、「育児パッケージ(マタニティーパッケージ)」の展示も。写真の2015年版育児パッケージには、ベビーベッドにもなる箱に約50点のアイテムがぎっしり!

しかし、北欧も、歴史とともに変わってここまでになったとのこと。「20年遅れ」とされる日本についても、「伝統的なものにも良いものがあるので、自分たちにあった子育てを」(河東さん)、「その場で変えて努力していくしかない。僕も、日本で経営する会社で社内結婚もあるので、みなが子育てしやすいように工夫していく」(ストランデルさん)などの内容が語られました。

日本も、変わっている。変わっていく。

シルックさんも、日本は以前に比べて子育てしやすくなっている、と語っていました。今、三人の子どもが10代になっている私も、そう思います。今回の会場には、私の子どもが幼かった頃に集めたBRIOの鉄道おもちゃや、手作りしたウォルドルフ人形もあり、懐かしく感じましたが、当時は知名度が低かったり、手に入れづらかったりしたものでした。

子連れでも楽しめる二子玉川の洗練された空間で、このようなファミリー向けのイベントが開催されることにも、時代の良い変化を感じます。

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イベントのイメージキャラクター「ハミングミント」(サンリオ)の撮影会も人気。会場でお聞きすると、北欧への感心や、つながりをもつ来場者も多かったです。写真はその中のおひとり。夫が「スウェディッシュ(=スウェーデン式)マッサージ」のセラピストで「東京でスウェーデンを語る会」というイベントも開いているそうです。

親子連れで賑わう会場には、北欧の家族をもつ方やマタニティーの女性、カップルや多世代の家族連れの方々も来場していました。

フィンランドの育児パッケージは、「生まれてくる子ども全員への、社会からの分け隔てない祝福と歓迎のシンボル」だそうです。日本でも、子ども達の出生や育ちを社会全体で受け入れて祝福することが実現し、その実感がもてるようになるといいな、と、会場で楽しむみなさんを見ながら、これからの時代に思いを馳せました。

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それぞれの民族衣装をまとうウォルドルフ人形。ATELIER LINNEAによる、羊毛で羊のオーナメントを作るワークショップに展示されていました。

仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

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