旅するファッションコラム

March 30 2016

ワードローブの傾向をスペクトラムで考えるクセをつけよう

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photo by Paul May via flickr

前回、ちょっと背伸びのワードローブでチャンスの素を引き寄せることができること、そしてさまざまなシチュエーションに対応できるワードローブを揃えるためには、手持ちのアイテムを印象や機能のスペクトラムで考えてみることをおすすめしました。今回は、この「スペクトラム」について詳しく解説していきたいと思います。

日常に起こりうるシチュエーションには連続性がある

私がここで「スペクトラム」と表現しているのは、シチュエーションやアイテムがもつ印象の幅の連続体のことなのですが、もう少しイメージしやすくするために、7色の虹を想像してみてください。

一般的に虹といえば、赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫の7色ですが、各色の間はくっきりと分かれているわけではなく、グラデーションのようになっていて連続していますよね。

この赤やオレンジ、黄色といったそれぞれを、例えば、フォーマル、ビジネス、カジュアル...といったシーンやそこで必要となる印象に置き換えて考えてみましょう。これらのシーンは虹と同様、曖昧で連続的だと思います。たとえば、フォーマルといってもイブニングドレスを着る必要があるようなものから、ちょっとしたワンピースでOKのセミフォーマルまで度合いがあるという意味です。

洋服のアイテムは、色、シルエット、柄、素材、ディテール(装飾)、そのアイテムが生まれた背景などさまざまな要素によって印象やイメージが作られています。しかし、実際には1つのアイテムがいくつかの異なったイメージにまたがっていることもあります。また、組み合わせによって、どこか特定の印象が増幅されたり、それによって使える場面が変わったりもするので、シチュエーションや印象ごとにアイテムが必ずしも一意にはなりません。

とはいえ、アイテムがもつ代表的な特徴から「このアイテムは主にビジネス用」といったように主な使用シーンが決まっていきますし、主な用途が決まっていても、使い方によっては別のシチュエーションに利用できることはよくあります。

シチュエーションや印象のスペクトラム

以下に、日常生活のなかで起こりうる主なシチュエーションと、それに必要とされるコーディネートの印象や機能の幅を大まかに分けたスペクトラムをご紹介します。
※ 人と会うことを前提としているため部屋着は対象外とします。

◆ ブラックフォーマル
冠婚葬祭のうち、とくに葬儀に着ていくことができる悲しみを表す装い。

◆ ドレスアップ
パーティ、レセプションに着ていける服。普通の人の日常生活においては例えば三つ星レストランに行けるようなちょっとよそ行きの装いなども。


◆ ビジネス
大手企業や伝統的業種(金融など)における仕事着、またはその他企業においてはプレゼンなど改まった場で着用できる装い。職種などによって装いの幅は大きく変わります。


◆ カジュアル(きれいめ)
服装規定が厳密ではない職場での普段の仕事着や、女子会やちょっとした会食など堅苦しくはないもののきちんとした印象が望ましいシーンに着用できる装い。


◆ カジュアル(リラックス・アクティブ)
ワンマイルウェア(近所にちょっと出かけられる程度の楽な服)。ちょっとしたアクティビティをしたりショッピングに行ったりアクティブに活動できるような装い。


◆ アスレチック
フィットネスジムでのエクササイズやランニングなど、運動ができる機能的な装い。


◆ アウトドア
悪天候や屋外での活動を快適にこなせる装い。自然に触れるようなシーンで安全に着用できるもの。

お手持ちのアイテムを少し想像してみてください。それらは、このスペクトラムのどこに当てはまりそうでしょうか?
スペクトラムを横軸に、お手持ちのアイテムを縦軸にそれぞれとって、各アイテムがカバーするスペクトラムの範囲をチェックしていくと、自分のワードローブの傾向がだんだん見えてきます。

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例えば、カジュアルな服装が許される職場や、フリーランスでクリエイティブな仕事をされている人の場合、日常着としてはカジュアルで十分かもしれません。でも、いざ仕事で「大事なプレゼンや客先訪問の時に着る服がない!」となってしまうのは、持っている服がスペクトラムのなかでも「カジュアル」を中心に揃えられていて、それ以外のイメージの幅をもつ服が少ないからだと考えられます。あるいは自分としてはジャケットを着てカチッとした格好をしているつもりなのに、周りにそう見られていない場合、アイテムとしては「ビジネス」なジャケットであっても、素材が「カジュアル」に寄りすぎていて、印象としては「カジュアル」に引っ張られてしまっている、ということも考えられます。

なりたい姿に合わせたゾーンを強化

このスペクトラムの考え方は、比較的起伏に富んでいる私の日常や、旅行時のさまざまな状況を経験するうちにまとまってきたものです。実際、私自身が旅行用のパッキングリストをつくる時や、お客様のパーソナルスタイリングをする際の分析にも使っています。これまでの経験上、ワードローブについて考える時には、◯色のトップスが◯枚あればOK、といったような量的な判断より、アイテムごとにスペクトラムで考え、質的に捉えた方が効果的な場合が多いと感じています。

ご紹介したようにスペクトラムで考えるクセをつけて自分のワードローブの傾向を把握しておけば、ショッピングの時にも、「いつもだったらルーズフィットなプリントTシャツを買いがちだけど、もう少しカラダに自然に沿うラインのきれいな無地のTシャツを買った方が活用度が上がるな」といったような判断もできるようになります。

スペクトラムの多くのシーンにまたがるアイテムは活躍度が高いということになり、ワードローブが限られる旅先や、ミニマムなクローゼットで済ませたい人にとっては、多様な着回しをすることができる心強いアイテムになります。そして、そのような万能アイテムを使う場合でも、スペクトラムのなかの特定のイメージを強調したい場合には、その部分のイメージを強く持っている他のアイテムを足したりすることで調整することができます。これはミックス&マッチのスタイリングをしていくためのバランス感覚を養うトレーニングにもなります。

上記スペクトラムで挙げたいくつかのシーンは自分の生活には起こりえないという人もいるでしょうし、逆に、今の生活にはないけれど、今後目指したい生活スタイルのなかでは、もっとこのシーンでのイメージを浸透させていきたいといったこともあるでしょう。自分自身の生活傾向や今後なりたい自分の像もこのスペクトラムにあてはめて、そこを中心としたシーンの装いを強化する。そんな風にして、自分のワードローブを、チャンスが舞い込むようなワードローブへと近づけてみましょう!

<今月の旅するファッション>

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葉山にクルージングに行った時のスタイリング。「エレガントよりはカジュアルで」とだけ伝えられ、どんなメンバーでどんな雰囲気の会なのかも事前に知らされず、またどのぐらい寒いかもよくわからなかったため、現地で臨機応変に対応できるようアウターを2種類用意。往復は白のレザーダウンジャケット。現地に着いてみると想像以上の寒さだったことと汚れを気にせず動けた方がよいと感じたので、途中でアウトドアブランドのコンパクトなダウンコートにチェンジ。インナーはマリンボーダーのカットソーとグレーのパーカー。少し上質感を出すためHERMESのシルクスカーフをバッグの持ち手に結んで。足元もレザースニーカー。そして、スニーカーと同じ赤とネイビーのストライプが入ったNATOストラップの時計でリンクしてみました。

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