聴覚障がい者の耳となる「聴導犬」の育成と普及を目指す|一般社団法人 日本聴導犬推進協会

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第14 回目は一般社団法人 日本聴導犬推進協会の秋葉さんにお話を聞きました。

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聴導犬が起こしてくれるので、寝坊の心配はありません。

「日本聴導犬推進協会」の活動について、教えてください。

聴覚障がい者の方々の自立と社会参加を実現するため、「良質な聴導犬を育成し、聴導犬を普及させることで、障がい福祉や、動物愛護への理解を社会に広める」をミッションに、ユーザーさんへのフォローはもちろん、聴覚障がい者が暮らしやすい社会を作っていくことが協会の活動になります。

聴導犬の育成では保護犬を引き取ってトレーニングをしており、動物愛護の分野にも関わった活動もしています。普及活動では、さまざまなイベントに参加して聴導犬を啓発するとともに、学校などの教育現場でも講演を行って、広く聴導犬の役割を伝えるなど、聴導犬が当たり前の社会を目指して活動を行っています。

現在、日本には聴導犬はどれくらいいるのでしょうか。

日本全国で64頭の聴導犬が活躍しています(H28年4月1日現在)。その数はまだまだ少なく、聴導犬を知らない方が多いのが現状です。そのため、聴導犬や盲導犬は、身体障害者補助犬法という法律で施設への同伴が認められているにもかかわらず、同伴を断られたり、「なんで犬がいるの?」という目で見られたりする場合が多くあります。聴覚障がい者が社会参加するための聴導犬なのに、逆に聴導犬といることで行ける場所が減ってしまうという問題もあるのが現状です。

聴導犬の役割、仕事内容について、教えてください。

さまざまな音を聴覚障がい者に伝えて生活をサポートすることが、聴導犬のお仕事です。家の中では、目覚まし時計が鳴ったらユーザーを起こし、インターフォンが鳴ったら玄関まで誘導します。また、外出時は後ろから来る車の音や、非常ベルの音など、主に危険を知らせる音に反応して伝えます。

また、聴導犬には聴覚障がいの目印になるという役割もあります。視覚障がい者の目印となる白い杖や、肢体不自由の方々の車椅子のように、聴覚障がい者にはわかりやすい目印がないため、周囲とのコミュニケーションがとりにくいという問題があります。話しかけても無視されたと思われたり、まず「自分は聞こえない」という説明をしなければならないなどの苦労が多くあります。ですが、聴導犬はわかりやすい目印になるため、必要な時に必要な手助けが受けやすくなります。これも聴導犬の大事な存在意義です。

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後ろから自転車が来ている音も知らせます。

聴導犬になるためにはどんな訓練を受ける必要があるのでしょうか。

まず、動物愛護センターなどに保護された犬の中から適性を見て、生後3~4ヶ月くらいの子犬を引き取ります。その後、主に訓練士が24時間一緒に生活をしながら、さまざまことを学習させていきます。この間はボランティアさんに預かってもらうこともあります。そして人間社会に慣れるためにいろいろな場所にでかけたり、多くの人に会わせたりということを繰り返します。そして、良いことや悪いことを学習し、自分で考えて行動する力を身につけさせていきます。

また、音を知らせるというお仕事に関するトレーニングも同時に行っていきます。聴導犬の場合、人からの指示でお仕事をするのではなく、音が鳴ったら自分で判断して動かなくてはならないので、この考える力が非常に重要になります。

聴導犬になるにあたって最終的に認定試験に合格する必要はありますが、日常的に犬の様子を見て評価し、その犬が聴導犬になれるかどうかを判断していきます。能力があるから聴導犬になれる、能力がないから聴導犬になれないというのではなく、その犬の性格が聴導犬として暮らすことが幸せかどうかということが判断基準になります。

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聴導犬の候補は保護された犬達です。

どんな方が、聴導犬と暮らすことができるのでしょうか。

基本的には、身体障害者手帳を持っている聴覚障がい者が対象となります。その上で、聴導犬と一緒に社会参加したいという意思がある方に聴導犬をお渡ししています。例えば、「家の中で少しだけ音を知らせてくれればいい」というような軽い気持ちや、ペットは飼えないけど聴導犬ならペット不可のマンションでも一緒に暮らせるから聴導犬が欲しい、などの要望にはお応えできません。また、聴導犬がその方のニーズに合っていないという場合もあります。聴導犬よりも他の補助具のほうがその方に適しているという場合にもお断りさせていただくケースがあります。同伴拒否などまだまだ苦労の多い社会ですので、ユーザーとなる方に求めることが多くなってしまうのが現状です。そのあたりは他の補助犬とも大きな違いはないかもしれません。

活動をしてうれしいこと、反対にちょっと大変なことはありますか。

うれしいことは、ユーザーさんが聴導犬と一緒に幸せそうに暮らしている姿を見ることです。一頭の聴導犬を育成するまでには長い時間とたくさんの苦労があります。でも、その幸せそうな姿を見ると、頑張ってきて本当に良かったと思うことができます。

また、イベントなどで「聴導犬知ってます、応援してますよ」と言ってもらえることで、少しずつ聴導犬が広がっているということを直接感じたり、私達のビジョンに共感してくれる支援者の方からの声も励まされます。

大変なことは、例えば、犬のトレーニングもマニュアルがあるわけではないので、その犬に合った方法を考えながら行わなくてはなりません。うまくいかない時は本当に悩みます。また、普及活動でなかなか真意が伝わらなかったり、間違った理解をしている方に「犬への虐待だ」と怒鳴られたりすることもあります。

日本聴導犬推進協会が未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

「聴導犬の存在が当たり前の社会」になってほしいと思います。そうなれば、捨てられたり、殺処分されたりする命を1匹でも多く救うことができます。また、障がいについて理解が深まり、助け合いができる社会になればいいと思います。私たちの活動は聴導犬を育成して広げていくことが最終的なゴールではありません。聴導犬や活動を通じて、人にも動物にも優しい社会を作っていくことがゴールだと思っています。

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こうした講演会を行い、聴導犬を多くの方に伝えています。

私たちが街で聴導犬を見かけたとき、聴導犬、そして、視覚障がいを持つ方に対して、何かできることはありますか。

聴導犬については、温かく見守ってあげて下さい。聴導犬は基本、人のことが大好きな性格です。触ったり話しかけたりすると、それが遊びの誘惑になってしまいます。もし、そこで知らせなくてはいけない音が鳴っても、遊びに夢中でお仕事をしなくなってしまうかもしれません。犬たちは無理してお仕事しているわけでも、お仕事が嫌いなわけではありませんが、当たり前のものとして持っているお仕事への集中力をそっと見守ってあげて欲しいなと思います。

そして、聴導犬と一緒にいるユーザーさんには、ぜひ話しかけてあげてください。例えば、近くで何か放送があったら内容を伝えてあげるなどです。聞こえない方は放送があったことにも気がついていません。ですので、そういった手助けをしてもらえると喜んでくれると思います。また聴導犬のかわいらしさやお利口さを伝えていただくのも嬉しいことだと思います。手話ができなくても、紙に文字を書いたり、口を大きくゆっくり動かしてしゃべっていただければ会話することはできます。

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聴導犬と書かれたオレンジ色のケープが目印です。

読者の方へのメッセージをお願いします。

聴導犬のこと、聴覚障がいのこと、犬のこと、もし、少しでも聴導犬に興味を持っていただけたら、ぜひ調べてみて下さい。書籍やインターネットを見るなど、アクションを起こしていただければと思います。直接的な支援はもちろんですが、少しでも知っていただけるということが私たちの目指す社会に繋がっていくのだと信じています。そして、一緒に聴導犬を発展させていきたいという方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に活動してけたらと思います。

<take action-いま私たちにできること->

犬たちは、盲導犬、聴導犬、介助犬、セラピードッグなどとして、私たち人間を助けてくれています。最近も、盲導犬の同行が拒否されたニュースもあり、人のために働く犬について、まだ理解が少ない社会であるという現状を知り、障がいや介助をする犬たちのことを知りたい、その中でも、今回は特に「聴導犬」にスポットを当ててみたいと思い、取材させていただきました。まずは「知る」ことからはじめませんか。

一般社団法人 日本聴導犬推進協会
ホームページ:http://www.hearingdogjp.org/
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ご支援はこちらから。 
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林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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