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May 11 2016

こんなに便利!フィンランドの乳児用液体ミルクで育児環境を考える

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5月のメーデーは毎年天候に恵まれないのですが、今年はラッキーなことに前日から快晴が続きました。日照時間もやっと延びてきて、南西部では現在午前5時から午後10時までの約17時間も太陽が照っています。

このたびの熊本県を中心とする九州の大規模地震により、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。フィンランドでもこの大震災のニュースはタイムリーに伝えられていました。5年前の東北大震災の際に私自身は東京にいたので、震災直後の混乱や情報の錯綜が容易に想像でき、今回フィンランドにいる自分が何もできないもどかしさを感じていました。

そんな中、乳児用の液体ミルクがフィンランドから支援されるニュースが入ってきました。1995年に起きた阪神大震災でこのミルクの必要性が話題となり、5年前の東北大震災ではフィンランドから支援された液体ミルク。約20年かけて少しずつ日本国内で認知されてきたようですが、いまだ製造販売までには至っていません。

今回はその乳児用液体ミルクについて。フィンランドで日常的に使われている現状と日本でなぜ製造販売されないのか。そして導入するメリットなどについてお伝えします。

いつでもどこでも、誰でも使える乳児用液体ミルク

日本の人工乳は水や電気を必要とする粉ミルクが一般的ですが、フィンランドをはじめ米国、イギリス、ドイツなどでは乳児用液体ミルクが主流です。これは、すでに調乳されたミルクが紙パックまたはペットボトルに入って密封されているため、衛生的に安全で常温での保管が可能です。夜中の授乳や外出時などにもすぐに与えられ非常に便利です。粉ミルクだと人肌の温度までに冷ます必要があり、人それぞれで体温が異なるため、作る人によってミルクの温度が微妙に変わりやすいです。液体ミルクだと常温で与えられて必要あれば電子レンジなどで少し温めるなど簡単に準備もできるので、誰でも育児に参加しやすい利点があります。わが家も夫をはじめ、育児から遠ざかっていた義家族などでも簡単に準備して与えていました。

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スーパーの棚にずらりと並んだミルクの品々。今回義援物資として送られたミルクは、手前の青いダンボールに積まれた200mlのミルク。6カ月まで用と6カ月から12カ月まで用の2種類でどちらも約0.60ユーロで販売。注ぎ口がキャップ式なので、開閉が簡単で哺乳瓶などへ注ぎやすくなっています。またストロータイプや上段には粉ミルクも販売されています。

二度にわたる支援と署名運動などで認知度アップ

このように水も電気やガスもいらないミルクが災害時にあったらどんなに便利でしょう。5年前の東北支援の際に、フィンランド在住の日本人のお母さんたちが「液体ミルクを被災地に送りたい」とツイッターで次々に呼びかけたところ、たちまち両国の有志の方々が集まり、無事にミルクを送り届けました(後に『Tutteli to Japan』で情報発信されています)。今回の九州支援は、その実績を小池百合子衆議院議員(日本フィンランド友好議員連盟会長)が憶えていらっしゃり、議員の方々へ呼びかけて支援が実現したようです。

その一方で、出産前から液体ミルクに関心があり出産後の授乳周りに苦労されていた末永恵理さんが2014年、「液体ミルクを日本にも」とオンライン署名運動を始めました。当時はフェイスブックなどで100人ぐらい集まれば、と思っていたところ、こちらもたちまち署名数が集まり、現在およそ4万人のもの署名が集まっています(2016年5月現在)。さらに最近では有名人の方々からも関心が寄せられているようで、少しずつ認知度が上がってきている様子が伺えます。

「粉乳」限定の省令と需要面がネック

ではなぜ日本国内で製造販売できない(されない)のでしょうか。それは厚生労働省の省令(1951年制定)に乳児用ミルクの品目として「乳児用調整粉乳」とあるため、液体ミルクは該当しないとのこと。もう一つ、乳業メーカー側がこの液体ミルクの需要を把握しておらず、粉ミルクが一般的であるため、新規事業の必要性がないとのこと。さらには、常温保存する場合、微生物が増殖しやすいために、製造者側が安全性を示す必要があると厚労省からの指摘もあるため、なかなか解禁には至っていないようです。

災害国の危機管理と負担が少ない育児環境を

解禁までのハードルがかなり高いように見えますが、阪神大震災から21年も経ち、今でも自然災害が後を立たない災害国の危機管理として、このハードルをさげていく必要があるのではないでしょうか。私の専門であるCSR(企業の社会的責任)やサステナビリティの世界からみると、これは「企業の社会的課題」と捉えることができます。企業と行政が連携してこの課題を解決していくことが、日本全体のサステナビリティへと繋がっていきます。

今回、熊本の被災地へミルクを送ったフィンランドの乳業メーカーの担当者は「昔はフィンランドをはじめ欧州でも粉ミルクが一般的でした。しかし時代とともに需要が変わり、1973年から液体ミルクの製造販売をしています。それ以来、粉ミルクとともに販売を続けています」と話していました。

母乳を基本としてミルクの選択肢を増やすことは、災害時だけではなく普段の育児環境の改善、そして女性の社会進出を促す意味で、母親の負担を減らし社会全体で育児に携わることに繋がると思います。キッチン環境と同じく、女性の社会進出に必要な要素だと思うのは、私だけでしょうか。

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