いじめを解決して子どもたちを救う!いじめ解決支援の専門集団|NPO法人ユース・ガーディアン

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第17 回目はNPO法人ユース・ガーディアン代表理事、阿部泰尚さんにお話を聞きました。

ユース・ガーディアンのご活動内容を教えてください。

いじめに関する証拠を収集し、時には直接介入して交渉をサポートしたり、いじめ問題解消後のシステム提案などを行っています。また、被害者へのインタビューによるいじめに関するデータの収集を行っているほか、地区道徳公開講座やPTA研修会などの講師を行い、いじめに関する予防、防止活動を行っています。

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いじめ防止についての講演をする阿部さん

なぜ、このような活動をされようと思ったのですか。

私が探偵調査業をしていた平成16年に子どものトラブル関係の依頼を受け、いじめの証拠を収集したことがきっかけです。この時、万引きの強要が行われており、その被害の状況から調査として本格的に取り組む問題だとして、T.I.U.総合探偵社に「いじめ調査カテゴリー」が発足しました。

こちらは、探偵社としての初の取り組みとして新聞などで報道されて注目されましたが、これをきっかけにいじめ解決の実績のない探偵社が便乗広告を出すなどした結果、解決できずに二次被害が出ていることを知り、企業のCSR(社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動)として、無償調査をはじめました。その後、探偵調査による証拠収集によって解決する手法に限界を感じ、有志を募り、NPO法人を発足しました。2015年12月末までに5,000件以上の相談を受け、330件以上の解決実績があります。

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まずは電話やメールで相談を。(画像はイメージ)

いじめとは具体的にどのようなことをさすのでしょうか。

いじめには定義があります。まず、被害者の立場に立つこと。行為言動などがあること。相手(加害者)との人間関係(クラスメイトや部活、塾など)があること。そして、受けた行為や言動などによって、被害者が精神的な苦痛、身体的な苦痛を感じていること。これらの条件があって、いじめとして成立します。「いじめ」というと複雑に思われることも多いと思いますが、定義はシンプルです。

何かしらの行為言動によって、辛い、痛いと感じたら、それはほぼ「いじめ」です。物がなくなる、汚されるなど、誰がやったかわからないということであっても、起きた場所が教室などと特定することができ、やった人が限定できる場合もいじめです。

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いじめの定義はシンプル。誰かの言葉や行為で心と体が苦しかったらそれはいじめ。(画像はイメージ)

親(大人)は、子どものどんなサインや変化に注目して、「いじめ」に対応するのがよいでしょうか。変化を感じたら、どんなアプローチをしたらよいでしょうか。

もし、お子さんが学校や友人の話をしなくなったり、物がなくなるようになったり、帰宅が遅い、メールなどの連絡が頻繁に来ている、お金を欲しがるなど、それまでと違う変化が見えた時には、遠慮せずにお子さんに話しかけてみてください。

「孤立させない」ということは、すべてにおいて重要です。全面的に味方であり、どんな状況も受け入れる、受け止めるというメッセージを、態度や言葉で示すことが大切だと思います。そして、ぶつかならなければならない時があれば、本気でぶつかり、その上で、しっかりフォローしていくことで「話してみよう」という安心感や信頼関係も生まれるのだと考えています。

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大人は子どもが話しやすい環境を作ることが大切。(画像はイメージ)

今までどのようないじめを解決してきましたか。

万引き強要、LINEいじめ、ツイッターによる匿名の誹謗中傷いじめ、暴力被害、性的な被害、組織犯罪誘導型など、ほぼ全域にわたる解決事例があります。

最も多いのは、物壊しで犯人が名乗り出ない場合に、探偵調査による専門調査によって判明した事例です。このほか、上履き外履きが下駄箱で連続していたずらされた件では、学校協力のもと下駄箱を廃止し、クラスごとに大きな箱で靴を管理して、行為ができないようにするという解決例もあります。

また最近は、ツイッターの匿名性から、成りすましによって学校や部活などの誹謗中傷をツイートしまくるといういじめが多数発生しています。成りすましを受けた本人は、何もしていないのに犯人にされてしまい、学校の関係者や部活の先輩後輩などと関係が悪くなったり、暴力や暴言を受けたりします。こうした場合には、本人がしていないことの証明を行い、成りすましを立証し、同時に真犯人の追求を行い、誰がやったか、グループでやったかなどを調べます。学校には校長や学級の担任、部活の顧問などを通じて、保護者会や全校生徒に向けて、本人の名誉回復のためのコメントなどをしてもらいます。本人へ苦情を言った部活の先輩やクラスメイトなどとは謝罪の会を設けて、関係性を元に戻すよう慎重に対応します。実際にいじめを行った児童や生徒については、状況次第で学校に通告する場合や水面下で謝罪を求め、保護者による指導の徹底などを求めるという解消を図るなどします。著書『いじめと探偵 』(幻冬舎新書)に、具体的な解決事例も公開しています。

活動をしていてうれしいこと、難しいと感じたことはありますか。

うれしいことは、それまで苦しそうにしていた子が、笑顔になって学生生活を楽しんでいる様子を聞いたり、手紙をもらったりすることです。難しいのは、性的被害や長期間いじめによる被害の深刻さです。生涯苦しむかもしれない状況でもありますので、終わりのないサポートを続けています。

今後の展望や、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

「いじめ」やその対応に関する問題点の発見のために、被害を受けた子どもや保護者、学校の方に1,000人インタビューを実施しています。インタビューを重ね、研究することで、より効果的な対策を打ち出せればと思っています。

いじめがない社会は理想です。もちろん、撲滅を目指しますが、まずは減らすことから。そして、傷の浅いうちに再生できる「いじめ予防+迅速な初期対応による解消」というシステムを公表したいと考えています。

読者の方へのメッセージをお願いします。

いじめられている方、誰にも相談できないという方、そんなお子さんをお持ちの方、そんなお子さんを知っている方、私たちなら解消できるかもしれません。有志の個人、企業からの寄付金が集まっており、現状、無償で対応させていただいていますので、安心してご相談ください。

また今後いじめ予防プログラムとして「いじめGメン」を公開し、いじめについての基本的な知識、相談の受け方、対応の仕方を講座として実施します。これには、学校全体でいじめを限りなくゼロにするプログラムもあり、とくに保護者やPTAの方には受けていただきたいなと考えています。

また、いじめの被害を受けた方、現在悩んでいる方にお願いです。無償でのご相談と同時に1,000人インタビューを受けていただけませんか。あなたの声をしっかり届けていきたいと思っています。

take action-いま私たちにできること-

「過去40年間の日別自殺者数で18歳以下の自殺者が最も多かったのが夏休み明けの9月1日である」という内閣府の発表を目にしました。夏休み中、子どもたちは何かサインを出してくれるかもしれません。それに気づくのは大人の役目でもあります。一緒に解決してくれる場所があるんだよ、ということをご紹介できればと思い、今回取材させていただきました。(林)

NPO法人ユース・ガーディアン

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林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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