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December 12 2016

暗記や暗算は存在しないフィンランド式学習とは

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11月最終週から街は一気にクリスマスモードに。今年は街の中心部を流れる川の橋にイルミネーションが点灯し、例年以上に華やかさを演出しています。Photo by turku.fi

2016年も残すところあとわずか。フィンランドでは来年独立100周年を迎えるにあたって、今年の99回目は今まで以上の盛り上がりを見せていました。そしてあと10日ほどで迎えるクリスマス。不況に喘ぎながらも無事に一年が終わろうとしています。

さて今年最後のコラムは、何かと話題が絶えないフィンランドの教育について。映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』でもフィンランドの教育が紹介されていたようで、今回は私自身の体験談を交えた身近な学習について紹介します。

ライティングは中学生から

以前の記事で紹介したように教育大臣からは「教育で大切なことは情報を与えることだけではない。自分で考える力や問題解決能力、想像力、理解力、適応力を養うことだ」ということがよくわかる一つの勉強法は、ライティングです。

まずは母語のフィンランド語でエッセイなどのライティングを中学から始めます。その後、スウェーデン語や英語など習得した語学で書き、高校・大学と教育レベルが上がるにつれてエッセイの内容も高度になり、論文などを書くまでに達します。ライティングと並行して行われるのがグループワークやチームワークで、課題を解きながら大臣が述べた能力などを養っていきます。

実際、夫が中学生の時に、スウェーデン語でエネルギーについてのエッセイを書いたようですし、私が通学していたフィンランド語の学校のテストも、「過去5年間の出来事を現在形、過去形、過去分詞形を使って80語以上で書く」という内容でした。義務教育でも、外国人向けの語学学校でも、自分の考えを書かせることがまずは学習の第一歩だと考えられているようです。

大学入試だけが唯一の国家テスト

義務教育を終えた学生が大学に入学するためには、"Ylioppilaskirjoitukset"と呼ばれる大学入学資格試験を受験します。大学入学の資格を得るためには、この国家試験と高校の成績で合否が決まります。成績は4から10段階で5以上が合格。グループワークや30分から1時間程度の宿題、学期末のテストなど日々の学習で成績がつけられるのは、日本と同じですね。

この大学入試、通常約6時間かけて行われるので、学生たちは飲食の持ち込みが許可されます。加えて、理系の学生には教官が許可したテキストなどの持ち込みもOK。それ以外の学生は、筆記用具と飲食のみ。

私の場合、語学学校のテストでは、試験範囲の文法や単語を5cm四方の両面紙に書いて持ち込んでよいと許可が出ました。この紙を準備する過程で、この中に自分が必要とする情報をどうやって入れ込むかという作業も勉強の一部。自分がどこまでわかっていて、どこがわからないのかを自覚しながら勉強し、テストに臨むことができました。

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来年から試験導入として、入試スタイルが筆記用具からパソコンへ。2018年にはこれに関連する法制化の動きも出てくる予定です。Photo by Yle.fi

理解のための学習

実際フィンランド語は15格の格変化があるので、これを「覚える」というよりは「身につけて自分のものにする」という意識で日々フィンランド語を使うよう助言されます。「覚えましょう」とは決して言わない。「『覚える』というのは単純に『記憶』するだけで『勉強』や『学習』『教育』ではありません。教育の目的は、学習したこと・していることを理解し、その過程で得たアイディアや知識を社会で実装することです」と、高校生のガイダンスカウンセラーを担当しているフィンランド人が話してくれました。

先の5cm四方の両面紙を持ち込んで良いのも、文法や単語を暗記する「記憶学習」ではなく、学習した文法を使って実際自分が体験したことを書くことが目的。まさにフィンランドの教育目的そのものだと実感しました。

独立からわずか100年しか経たない共和国の教育がここまで注目されるのは、やはり人的資源の少なさと北国の気候条件から、持続可能な国家を作る戦略の一つとして「教育」を掲げたのが非常に功を奏したのでしょう。しかし、つい先日発表されたOECDのPISAの学力調査結果では、フィンランドは総合ランキングで5位、日本は2位でした。近年、フィンランドの学力低下が言われており、特に男女の学力差(科学においては女子のレベルが高い)、成績優秀者数の減少、そして教育資金の調達が減少し、地域格差も見られることが大きな懸念事項となっています。

100周年を迎え、さらに進化していくことを期待し、私自身も機会があればまたその教育を受けたいと思います。

今年一年、ご愛読いただきありがとうございました。
それでは皆さま、よいお年を!

Hyvää Joulua ja Onnellista uutta vuotta!

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