リモートワークと言えば、いろいろな場所やシチュエーションで仕事ができることが最大のメリットですよね。私もその強みを生かし、これまで幾多の「ありえない」ワーキングスペースで業務を処理してきました。
とはいえ、リモートワークを推進する若者がパフォーマンスのためによくチャレンジしている、「Mac担いでいろいろなところで仕事するアレ」ではないんですよ。私は一般事務(バックオフィス)の仕事を自由度の高い環境でさせていただいているせいで、「是が非でも今、処理しなきゃならん」案件が想定外の場所で発生することがあり、そのためのやむをえない事態ということなのです。今回はその中でもとくに「ありえない」シチュエーションだった3つをご紹介します。
その1・箱根でトミカ博を見ながらトラブル処理
のっけから私のダメっぷりがひどいので皆さんどうか見放さないでやってください。その日は仕事は一応お休みで、家族5人で箱根に遊びに来ていました。夏休み期間の平日で、適度に空いていたので早めに箱根入りして、最初の観光地である「かまぼこの里」を訪れていたのです。
すると、その日勤務しているはずの同僚からいきなりLINEが来ました。
「あなたにしか処理できないトラブルが発生してます...頼めます?」
っていうか私、休み中なんですけど?と内心怒り心頭でしたが、よくよく状況を聞きますと、私のミスにより取引先(お得意先)に不都合が発生しており、その担当者様も翌日から夏休みに入るので今日中に処理しないと納期に間に合わないと困ってらっしゃると言うのです。っていうか、私のミスが発端なんですけど?っていうか、私の信頼性が地の底に落ちる前に、同僚は親切で私に教えてくれているようですけど?
私はもう頭が真っ白になりまして、必死で探しましたよ、子どもを遊ばせる場所を(私には子どもが3人います)。運良く「かまぼこの里」の2階ホールでトミカ展博を開催しておりましたので、急いで全員を連れこみました。そこで子どもたちを遊ばせがてら、夫に見てるように頼みがてら、すぐさま脇にある休憩所でタブレット広げて資料ひっくり返してミスの原因解明と対応を思案しました。
トラブル回避は造作なかったのですが、その説明のために先方へ電話するための静かな場所がなく、あたふたしました。後ろではトミカがシャーシャー走っていて子どももワーキャー騒いでいるし、外に出ると今度は本物の車がブーブー走っています。観光施設はズバリ、リモートワークには不向きな場所でしょう(当たり前)。しかし、なんとか処理しきった後、すぐさま近くのビアホール「えれんなごっそ」に走り込んでかまぼこつまみながら箱根ビールを飲み干した時のカタルシスは鈴廣でしか味わえなかったでしょう(なんのこっちゃ)。
その2・水泳教室プールサイドの待合室でノマド!
これは完全に私の計略によるものなのですが、小学3年生の娘が夏休み中、水泳教室に通うのに付き添い、2日間だけプールサイドの待合室で仕事をしていたことがあります。最初は一人でもバスで通えるだろうと考え、午前中の短期レッスンに申し込んでいたのです。が、始まってみるとバスの出発・到着時間前後に30分ずつの待ち時間があり、一人で過ごさせるのに多少の不安がありました。そこで、自分の始業時間前に娘を送りとどけて、プールサイドで仕事をして、昼休み中に一緒に帰って来ればなんとか見守れるんじゃないの?と考え、「スイミング付き添いノマド」を決行するに至ったのであります。
しかしながら、屋内プールの待合室というのは想像以上にうるさく、やはりリモートワークには全く向かない環境でした。待合室でも天井が広くてホールのような反響音があるので、大事な電話対応の時などに内心ヒヤヒヤしました。何より、同級生の親御さんたちがスイミングを見学しておられるので、子どもそっちのけでタブレット見てる姿とかどう見られてるんでしょう?と考えると、恥ずかしさでいたたまれませんでした。幸い、バスの待ち時間を一緒に待っていてくれるお友だちを見つけたので、2日目ですっぱり付き添いはやめにしました。
その3・子どもの保育園の事務室で先生たちと一緒に仕事
最後は私の「だらしない体たらく」が最も露呈したこのシチエーション。息子の保育園にてなぜか先生たちと肩を並べて仕事をしたお話です。
私の周辺地域だけかもしれませんが、年に1度「保育士体験」という名のもと、子どもの通う保育園で強制労働を強いられる保護者参加イベントがあります。これは学校での「授業参観」に当たるものなのですが、なんと9時から16時までの所定労働時間をみっちり働かされ、そのうち3時間は当の子ども本人もお昼寝しているという謎の行事なのです。これを子ども3人分、通算12回はもう体験しているので、もはや体験とかのレベルでなく通例業務ですよ。
ところが、その時はリモートワーカーになってから初めての「保育士体験」だったので、慣れない出勤リズムに惑わされて重要なタスクであった「仕事用の電話を同僚宛電話に転送しておく」のをすっかり忘れてしまったのです!
その重大なミスに気付いたのは保育士として半日働いた後のお昼休みのことでした。子どもたちがお昼寝に入り、「お母さんも1時間休憩してくださいね」と言われたので昼ごはん食べながらタブレットを見ていると、なんと取引先から緊急メールが入っているではありませんか。急いで仕事用の携帯電話を見ると、留守電が入っていました。「ん?転送してなかったわ。ヤバイヤバイ。」と思った時にはすでに遅し、留守電には緊急性の高いクレームへの対応要請が入っていたのです! 急いで対応できそうな人を探しましたが、誰にも連絡つきません。だって、昼休み中だからさ...(涙)。
私には「保育士」としてのルーチンにも変な責任感があったので、昼休み中にこれを処理せねばならぬ!と焦って取引先に折り返しの確認電話をかけてしまいました。そして泥沼にはまりました。クレーム対応の基本はお分かりですか? 1にスピード2にスピード、34がなくて5に誠意です。取引先様から状況を聞き出してすぐさま「あ、コレ今私が瞬時にエンドユーザー様に謝罪電話かけないとダメなやつじゃん」と悟りました。そして、資料を見ながらメモ取りながら静かに話せる環境を求めて保育園の事務室にデスクを借りに走ったのです。
保育園の事務室もみなさんお昼休み中で人がまばらでしたので、園長先生が快く場所をお貸しくださいました。「お母さん、休日なのにお仕事なんて大変ですね。」と先生が労ってくれる傍で、エンドユーザーさんに謝罪と対応の説明を切々と語るも「なぜこんなところで私はクレーム対応を...」という疑問がふと頭をよぎりました。保育園の事務室はリモートワークに最適な場所ですが、間違いなく場違いです。
幸い、私のスピード対応が功を奏し、クレーム処理は昼休み中で完了し、私は無事に「保育士」という本業に戻ることができたのでした(いや、本業はそっちじゃないけど)。
まとめと反省
結局のところ、「どこでも仕事できる」という環境に甘んじて、だらしなく仕事をしていた私の油断がすべての元凶なのはわかっています。その油断が「ありえないワーキングスペース」を生み出しているにすぎませんでした。どうもすみませんでした。
よく言われることではありますが、リモートワークでは仕事とプライベートの線引きがとても重要です。「できない」ことは「できない」、「できる」ことは「できる」とはっきり意思表示して受ける仕事と他にお任せする仕事をきっちり分けることが大切です。そうでないといろんな人に迷惑をかけることになるし、自分も追い込まれてしまいます。
でも、箱根ビールと園長先生のくれた飴ちゃんは本当に絶品だった、ということだけはお伝えしておきたいと思います。プライベートと仕事が一緒くたになっているスタイルも、新しい働き方として"アリ"なのではないでしょうか。