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February 08 2017

ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の行方

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もし毎月7万円弱のお金が仕事もせずに定期的に入ってきたら、みなさんどうしますか?今の働き方を変えるでしょうか? そしてベーシックインカムは雇用を改善し、社会制度を簡素化できるでしょうか? Photo by KELA

ようやく太陽の光が射し込みはじめたフィンランド。やや寒さが緩んできたとはいえ、未だ氷が溶けきれない道路をみながら、春の訪れを待ちわびています。今回は昨年ご紹介したベーシック・インカムが1月1日から試験的に導入されたので、その内容についてお伝えします。

毎月560ユーロを2年間受給

ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の試験的導入がいよいよ始まりました。2018年12月31日までの2年間に、およそ2000人の国民へ給付。その2000人とは、2016年11月時点で25歳から58歳の失業手当を受給している失業者で、政府がランダムに選択した人々です。受給金額は、1ヶ月560ユーロ(課税対象外)。現在育児休暇など他の補助金を受給している人は、UBIの超過分を受給することができます。UBIを受給期間中にもし職が見つかった場合、フルタイムでもパートタイムでも労働形態に関係なく、このUBIの受給を維持できます。

試験導入の目的は「現行の複雑な社会福祉制度を簡素化かつ効率化し、公務員の数を減らすこと」のほかに、「雇用促進、特に失業者への労働意欲がどのように変化するか」。またAI(人工知能)による仕事の種類や質などの変化に対処できるか(AIによって失業した人々のセーフティネットとなりうるか?)」なども視野に入れて試験を開始しています。

世界初の社会制度をどう見るか?

各国が注目を集めるなかで社会保険庁の担当者は「今フィンランドは不景気に陥っているため、倒産間近の起業家やこれから起業する人々にとっては有益なものと考える。その一方で失業者たちの労働意欲がどう変化するのか。生活をより良くするために仕事や何か行動を起こすのか。それとも受給してそのまま一日中ソファーに座って過ごすのか。この2年間でそれを見極めたい」と各メディアへ発信していました。

この労働意欲を掻き立てるか否かの議論は、英国の経済学者なども注目しており「UBIは経済的、社会的不安が高まる時代の堅実な収入基盤となるだけでなく、『仕事とレジャー(余暇)』『仕事と介護や育児』などの無償労働との両立における個人の財政的自立と自由の選択である」とコメントしています。

一方、このUBIに一本化されて細かい社会制度の補助金がなくなったために(UBIの超過分は支給)、医療に関する補助金を受給していた人にとってはやや苦しくなるという見方もあります。医療システムについて以前紹介したように、高度な医療で緊急を要する場合に高額な私立病院へ行くことが最適となると、潤沢な貯蓄がある人は受診できます。そうでない人はUBIだけではカバーしきれず、社会の格差が生まれるという見方もあるようです。この辺りの影響についてもぜひ検証して欲しいと思います。

将来の働き方を考える

フィンランドに限らず今世界は先行き不透明。先進国の高齢化が進み、AIなどによる労働形態や種類、質などの労働変化が発生し、それにどう対応していくのか。このような背景からこれからの働き方を考える人が増えてくると思います。UBIはそうした社会現象に十分対応できる社会保障システムなのか。フィンランドのような小国家だけでなく、日本のような大国でも将来導入可能となるのか。日本の働き方については、国際社会から最近注目を浴びていることもあり、仮に基礎収入を受給したら働き方が変わるのだろうかと考えています。

フィンランドは小さな政府であるため、こうした社会的な実験が可能な国です。不幸中の幸いか、不景気真っ只中であるため失業者にとっては非常に有益な実験。彼らの行動が気になるところですが、社会保険庁は、受給者の個人情報を公表しないことはもちろんのこと、実験途中で受給者の言動や何かしらの調査分析により実験結果が変わってしまう恐れがあるため、受給者へのインタビューや途中経過の状況を調査することを控えるよう、各国メディアへ伝えています。

受給者の生活がこの2年間でどう変わるのか。それによりフィンランドの経済にどう影響が及ぶのか。不景気が回復するのか。そして2年間の実験後、正式に導入されるのか。独立100周年を迎えた国家の一大プロジェクトの行方が気になります。

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