未来へ紡ぐストーリー

April 04 2017

家族を介護する人(ケアラー)をさまざまな面からサポート│NPO法人UPTREE

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誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第24 回目はNPO法人UPTREE代表の阿久津美栄子さんにお話を聞きました。

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NPO法人UPTREE様のご活動内容を教えてください。

介護を受ける側を支えるサービスや制度は年々充実していく一方、介護を行う側をケアするものが少ないと感じ、家族を介護する人(=ケアラー)をサポートする活動をしています。

1つ目の活動は「介護手帳」、「介護新聞」や書籍を発行して、介護とはどんなものか、これからどんなことがはじまるのかを知ってもらうための情報発信をしています。

2つ目は、介護保険外のことをカバーする「助け合い事業」を行っています。介護保険を利用して、訪問介護やデイサービスなどさまざまなサービスを受けることができますが、サービスが提供される時間によって費用が異なったり、時間にも制約があります。介護保険でカバーされないけれど、介護者が望むニーズに応えるため、地域の主婦の方々をはじめとするみなさんに参加していただき、付き添い、見守り、買い物代行、家事代行、話し相手などの活動を行っていただいています。
認知症の奥様の介護をされていたご主人から、息子さんの結婚式に同席して欲しいと依頼があり、式中は奥様に寄り添い、奥様が退席することなく無事結婚式を全て参加でき、諦めかけていた家族全員参加のセレモニーを実施することができた、というのもその一例です。

3つ目は、介護する家族と当事者が、同じ仲間に相談したり、情報共有をしたりする場づくりをする「居場所事業」です。現在、「認知症カフェおれんじ」「認知症カフェぬくきた」「1Dayケアラーズカフェ」を東京の小金井市内3か所で開催しています。「認知症カフェおれんじ」では、認知症に対してのマイナスのイメージを払拭するため、同時間に小学3年生から中学3年生を対象に、地域の大学生による「プログラミング教室」を開催しています。現在では、大学生講師はカフェで高齢者の方に折り紙を教え、高齢者は大学生に得意な編み物を教えるような関係が自然と生まれ、とても面白い相乗効果を感じています。

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なぜ、このような活動をされようと思ったのか、きっかけを教えてください。

私自身、2005年、比較的若い年齢のときに、介護がはじまりました。子育てをしながら、実家の長野と当時の勤務地である大阪を片道7時間かけて行き来する遠距離介護で、加えて両親同時介護という「四重苦」でした。子どもを見てもらえるところもなくて、連れて帰るしかない。いろいろなことが次々と起こって、それに対応して......日々堂々巡りでした。そんな中、「介護者となった自分自身のこと」を相談する人、居場所がなかったことがきっかけで、介護をする人のサポートができればと思いました。

家族介護の現状はどのようなものでしょうか。

現在の家族介護は、核家族が主流になり、兄弟や子どもの数が少ないことから、1人で何人もの介護を同時にしなくてはならない状況になっています。誰もが介護に関わる可能性を持ちながら、ある日突然介護がはじまってしまうと、戸惑っているのが現状です。

また、急に介護が始まったとき、ケアマネージャー、行政職員、医療従事者など専門職の話を聞き、言われるがままにするしかなかった経験から、家族介護をする上で、事前に知識、情報を得ることが大切だと思いました。

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家族介護者(ケアラー)の方々が持つ悩みや葛藤にはどのようなことがありますか?

共通しているのは、自分の代わりがいない......ということです。介護は、家族の中で、ほぼ1人が主たる介護者となり、家族から期待、責任を任せられる傾向があります。また、子が親を介護する場合、もともと過干渉や過保護などの親子関係だった時には、介護においては子が親に依存するパターンというのも多く見られます。その場合、介護が終わることで、依存先がなくなり、精神的な部分でダメージを過度に受ける傾向があり、社会から孤立することも多いのが現状です。また、先の見えない不安を抱え、先を見ることを避ける傾向も多々あります。

UPTREEが作成した「介護者手帳」とはどのようなものでしょうか?

介護者手帳は、介護ロードマップで全体の流れを把握することからはじまります。先が見えない不安、全体の時間が読めないことを、フローチャートやリストに記入して見える化することで、ご本人を取り巻く状況を考えるきっかけになります。「介護版の母子健康手帳」といえる手帳です。介護保険、施設、サービス、医療、相続、看取り、グリーフケアといった介護のさまざまな局面に対応、介護の最初から終わりまでが一連でわかる手帳となっています。

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活動をしてうれしいことはありますか。

最初は介護者として、相談に来ていた人たちが、介護者支援を一緒にやりたいと支援する側になってくれることや、UPTREEに関わる人たちが介護者支援の今後を真剣に考え、意見をしてくれる時が本当にありがたく、うれしいです。半面、収益事業が確立できていないこともあり、運営・活動資金の確保については今後の課題です。

未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

UPTREEは、立ち上げた当初から、介護者が介護の合間にふらっと立ち寄れるような常設のカフェを作りたいと、日々頑張っています。

また、イギリスではケアラーズ支援センターがあり、社会的活動、サポート活動、カウンセリングやセラピー、情報提供、経済支援、ヤングケアラーへの支援、医療機関に対する働きかけや多文化社会への対応が確立されていますが、日本は介護者にとってのケアが確立されていないという状況があります。

介護者がもっと知識や情報を得ることができ、当たり前の日常の中で介護者として過ごせる環境を整えていきたいと思っています。そのためには、今の子どもたちにも介護について、知る環境が必要と考えており、義務教育の中で介護者の現状が取り入れられ、知る、備えることができるようになるといいと思います。そして、大人も今後の人口統計、社会保険制度、社会課題を知る機会を得て欲しいと思います。

知識、情報を得ることで、少しだけ介護を楽にすることが可能です。今すぐ介護に関わらなくても、できるだけ多くの人が事前に「知る」、「理解する」ことで、次世代に押しつけられる未解決の問題を残さない社会にしていけたらと思っています。

著書紹介

ある日、突然始まる 後悔しないための介護ハンドブック
ある日、突然始まる 後悔しないための介護ハンドブック
阿久津 美栄子

ディスカヴァー・トゥエンティワン (2017-02-28)

いま私たちにできること

突然、親兄弟や配偶者などの介護がはじまったら、まず何をしたらよいのでしょうか。もし困ったことがあったら?いつ介護がはじまるかわからないからこそ、「知る」ことで備えることができる。また介護者も苦しくならないよう「こころの拠り所」を見つけておくことが、大切なのですね。

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