特集

April 18 2017

【フリーランスと社会保障①】なぜフリーランスの社会保障は手薄いのか

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201704_welfare01.jpg「働き方改革」がさまざまなところで言われ、「フリーランス」という"雇われない働き方"に注目が集まる一方で、残念ながら、フリーランスが働きやすい社会環境が整っているかというと、そうとは言えません。

そこで今回は、「社会保障制度」に注目します。

雇われる立場である「会社員」と、雇われない働き方である「フリーランス」では、社会保障制度にどのような違いがあるのでしょうか。この特集では、「病気・ケガ編」「妊娠・出産編」「老後資金編」など、全6回に渡って、今の社会保障制度を知り、私たちができる対策について、ファイナンシャル・プランナー・氏家祥美先生にお話をうかがいます。

第1回目である今回は「時代背景編」として、フリーランスの社会保障が手薄い理由を、戦後、今の社会保障制度が整った時代背景から探っていきます。

Profile / 氏家 祥美さん

prof_ujiie.jpgハートマネー代表 ファイナンシャルプランナー
女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追及する。『いちばんよくわかる!結婚一年生のお金』(学研パブリッシング)ほか、著書・監修本多数。
https://www.heart-money.net/

社会保障制度は「労働者を守るため」にできた!

まずはじめに、なぜ社会保障制度が必要とされるようになったのか。その背景を見てみましょう。

「そもそも社会保障制度が必要とされるようになった背景には、産業構造の変化があります」と氏家先生。

「昔はほぼ第一次産業だったのが、戦後の復興の中で都市部に会社ができました。そこで、後継ぎとなれない次男、三男といった子どもたちが「労働者」として都市に出てきました。家族みんなで暮らしていた時代は、何かあっても家族や親戚、地域のつながりで助け合えましたが、たったひとりで地方から出てきた労働者たちは、それができません。そこで、何の資産も持たず、親兄弟でも助け合うことができない、当時の「労働者」を守るために、社会保障制度が整っていったのです」

なるほど。もともと社会保障制度は「労働者を守るため」にでき、整っていったということですね。このように考えると、そもそもフリーランスは誰かに雇われて働く「労働者」ではありませんから、まずはここをしっかりと認識する必要がありそうです。

日本の高度成長とともに整ってきた社会保障制度

では、今の社会保障制度はいつ、どのような時代背景のもとできたのでしょうか。

今の社会保障制度は、1980年代までにほぼほぼ整ったと言われています」と氏家先生。中でも、1961年の「国民皆年金」「国民皆保険」のスタートは大きいと言います。

「例えば、"国民皆年金""国民皆保険"のスタートが1961年、労災保険法改正が1965年です。1960年代と言えば、1964年に東京オリンピックがあり、新幹線開通もこの時期です。日本の経済がうなぎのぼりで成長していく中で、社会保障制度も整っていきました」

今から50年以上も前の時代。銀行にお金を預けているだけでもお金は増え、給料もあがり、日本中が活気づいていた時代に、今の社会保障制度の基礎ができたというわけです。

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当時の家族構造は、お父さんは会社員、お母さんは専業主婦かパート、子どもは二人くらいというのが一般的。社会保障制度も、これをモデルケースとして整っていきました。だから、このモデルケースに当てはまる人にとっては、今も大変手厚いものとなっていますが、ここから外れてしまっている人は、厳しいですね」

当時は、今ほど多様な働き方はなく、会社で働くことが当たり前だった時代。まさに今のフリーランスは、ここから外れてしまっているひとつと言えるでしょう。

制度ができた頃の「自営業」とは?

"労働者を守るために"社会保障制度ができたということはよくわかりました。では、「自営業者」はまったく守られなくてもよいのでしょうか?

「この時代の自営業者と言えば、"農家"や"商店街でお店をやっている人"のイメージが近いでしょう。その人たちは、先祖代々の土地・建物があり、自分のビジネスを持っています。また、自分が引退しても子どもが跡を継ぎ、老後の面倒も見てくれる。だから国がそこまで手をかけなくても大丈夫だよね?という考えです」

確かに、土地を持ち、家もあり、ずっと続けられるビジネスもある。家族が一緒に商売をし、引退したあとも面倒を見てくれる。そんな状況であれば、そこまで保障を手厚くしなくても、大丈夫のような気がしてしまいます。

「逆に言うと、そういう先祖代々の資産を受け継がなかった人が労働者になっているので、そういう人は老後の資金も自分で蓄えていかなければなりません。だからこそ、何の資産も持たない労働者を手厚くする方向で制度は整ったのです」

当時は商店街も活気づき、"商売をやっている"というと裕福なイメージがあったかもしれません。当時の国が考える自営業のカタチは、そのようなものだったのですね。

多様化する働き方。時代とともに変化する自営業のカタチ

ところが、国民皆年金、国民皆保険のスタートからすでに50年以上。フリーランスという働き方が注目を浴びます。

「パソコンひとつで働ける時代になり、誰もが自分で事業を起こしやすくなったというメリットがある一方で、そういう人たちは、かつての自営業者が持っている前提だった"資産"を持っていない人が多いです」

時代の流れとともに人々のライフスタイルが変化し、多様な働き方が出てきているのに、社会保障制度は、古いまま。「今の時代に国の制度が追いついていない」ということが、今フリーランスの社会保障が手薄い最大の理由と言えそうです。

では、この現状に対して、私たちができることは何なのでしょうか。

まずは、声をあげること。そして、ただ不満を言ったり、国の制度が変わることを待つだけではなく、今すぐ自分自身でできる対策を知り、動くことではないでしょうか。

次回以降は、具体的に国の制度を知り、どのような対策が考えられるのか、について教えていただきます。

<目次>
第1回 【時代背景編】 なぜフリーランスの社会保障は手薄いのか
第2回 【病気・ケガ編】 病気・ケガでの収入ストップにどう備える?
第3回 【妊娠・出産編】 (5/2更新予定)
第4回 【老齢年金編】 (5/9更新予定)
第5回 【遺族年金編】 (5/16更新予定)
第6回 【信用力編】 (5/23更新予定)

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