地方フリーランス生活

April 28 2017

大地の恵みあふれる糸島で暮らすフォトグラファー 亀山ののこさん@福岡県

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地方で働くってどんな感じ? 地域ならではのフリーランス事情を知りたい!
「地方フリーランス生活」では、自分らしいスタイルで働く地方フリーランサーに、地方で活動することのメリットやデメリットのほか、日頃心がけていることなどを伺います。今回は福岡県で活動されているフォトグラファー 亀山ののこさんにお話をお聞きしました。

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■亀山ののこさん プロフィール

活動地域 福岡県
フリーランス歴 約20年
職種 フォトグラファー
経歴

東京生まれ。18歳から写真を撮り始め、人物写真を撮ることに夢中になる。2000年よりフリーランスのフォトグラファーとしてポートレイトを軸に、雑誌、広告、写真集などで活動。2011年に福岡県へ移住し、2012年秋、写真集『100人の母たち―"原発"のない世界へ。私は子どもを守りたい。―』を南方新社より上梓。全国の市民たちによる写真展の開催数は100を超す。日本のみならず、アジアでも写真展を開催中。3児の母。

●亀山ののこさんの公式ホームページはこちらから>>

現在のお仕事内容を教えてください。

雑誌などの写真撮影や写真の提供、個人からの依頼による撮影(妊婦ヌードや記念のポートレイトなど)をおこなっています。海外取材(昨年はネパール、ベトナム)にも行きます。その他に、写真集の制作、日本全国、アジアでの写真展や写真集に込めた思いを語る講演や、取材した先で見てきたものを伝える講演もおこなっています。

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北九州の門司にある旧門司税関で開催した写真展

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ネパール取材にて

フォトグラファーの仕事を始めたきっかけは?

18歳の頃に写真に出合い、自分が生きている意味を全身で感じ、夢中になりました。撮るとき、現像が上がってくるとき、人に見せるとき、すべての工程に興奮と喜びがありました。

その後は写真に明け暮れ、作品をブックにまとめては友人たちに見てもらっていました。そんなある日、友人の紹介で雑誌の編集者さんにブックを見ていただく機会に恵まれ、お仕事をいただけるように。大学に通いながらフォトグラファーの仕事を始め、卒業後も就職せず、そのままフリーランスとして独立しました。写真学校に行っていなかったので、仕事をしながらスタジオを借り、独学で写真撮影の技術を体得。20代前半は、写真を撮ることと、この仕事で金銭的に自立することにとにかく夢中でした。

その後、20代半ばを過ぎたことから自分の作品の発表も始めたのですよね?

20代半ばを過ぎ、収入が安定した頃、「本当に撮りたい写真を撮っているか」と疑問を抱くようになってしまいました。そこで、作品として写真を撮り、コダックフォトサロンなどで個展を開き始めたんです。こうした活動が認められ、業界誌「コマーシャルフォト」の注目する100人のフォトグラファーズに数年連続で選ばれました。このあたりから、仕事で撮る写真と、自分が作品として撮りたい写真が寄り添っていくようになりました。

その後、結婚、出産を経験しましたが、産後も2ヶ月で仕事に復帰。ずっと東京で写真中心の生活を送っていました。

なぜ福岡県に移住されたのですか? きっかけや経緯を教えてください。

2011年3月11日、韓国に撮影に行っている矢先に東日本大震災が起こり、それまでの価値観を大きく揺るがされました。そして、その頃6ヵ月だった双子の息子たちを守りたい、仕事のあり方も見つめ直したいと思い、東京を離れ福岡県に移住しました。「今ある仕事を失ってしまうかも」という考えも頭をよぎりましたが、失ったとしても「原発」というものに「NO」という声をあげなければ、と思いました。

当初は福岡市の都会の真ん中に住んでいたのですが、しばらくして、福岡市から車で1時間弱の場所にある、海と山と田んぼ、大地の恵みにあふれる糸島市に魅了されました。そして移住から2年後に糸島に引っ越し、現在に至ります。

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近所の風景

働く土地を変えたことで、働き方やライフスタイル等の変化はありましたか?

東京にいた頃は、常に仕事中心の毎日を送っていました。仕事のために子どもたちを保育園に預け、24時間すべてを仕事のために使っていました。今も心の中心には写真がありますが、「仕事」としてだけでなく「人生と共にあるもの」としての存在感が増しています。

また、普段の生活と仕事の垣根が低くなり、普段の生活の中で撮った写真を自分の写真集の1枚にしたり、「メディアで使いたい」というオファーをいただいたりするようになりました。こうした新たな循環が生まれているのは糸島に住んでいるからこそだと思います。

仕事の幅も広がりました。ここに来て写真というものの価値、可能性をより深く考え「雑誌や広告などのマスメディアの写真撮影は、撮影、納品、印刷を経て反響があり素晴らしい感動を味わうけれど、写真という存在はそれだけのためのものではない」と思うようになりました。個人の方からのオファーも、写真として尊い仕事だと気づいたので、今は自作スタジオや糸島の自然の中で、個人の方の写真撮影もおこなっています。
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福岡で仕事をはじめるにあたって、苦労したことはありますか?

移住後は、地元の温かい人々の助けでたくさんの縁をつないでいただけました。また、東京時代のクライアントの方が福岡での撮影を頼んでくださるなど、ありがたいお仕事もいただくことができ、移住後もだんだんと仕事を軌道に乗せることができました。

あまり意識的に営業活動はしていませんが、主にSNSやホームページ、写真集を見て下さった方が連絡をくださっています。現在の地元と地元以外のクライアントの割合は5:5です。

現在の土地で働くことを選んで良かったこと、悪かったことは?

東京に住んでいた時は、家が郊外にあったこともあり、日常的な移動に長い時間を取られていたのですが、福岡県は渋滞も少なくて快適です。時間にゆとりができました。それに加えて福岡は空港が近いので、糸島に住みながら、日本全国、世界へと出かけています。

また、子どもたちの成長を見つめ、自然の恵みを全身で享受しながら仕事ができるのは、大きな喜びです。

ただ、東京には優れたスタジオマンがいる素晴らしいスタジオがたくさんあり、フォトグラファーは写真を撮ること存分に集中できたのですが、福岡ではスタジオも機材も自分持ちというスタイルが多いことに最初は戸惑いました。幸い機材はそれなりに持っていたので、小さく荒削りながら、自分でスタジオを準備してポートレイトなどの撮影を行うようになりました。またこれから、感性の通い合うヘアメイクさんやスタイリストさんやクリエイターと出会って、共に作品を産み出す関係を作っていきたいと思っています。

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自宅スタジオ

遠方のクライアントとスムーズに仕事をするために心がけていることはありますか?

何より、遠いところに住む私へ仕事をくださる感謝の気持ちを忘れないことを心がけています。撮影前の準備では、事前の打ち合わせでスカイプミーティングを活用したり、資料を共有したりすることで、クライアントと自分のイメージを近づけるようにしています。

今お住まいの場所ならではの、仕事の合間のリフレッシュ方法を教えてください。

家から3分で海に行けるので、海を見に行くことが最大のリフレッシュ方法です。夏は毎日飛び込みます。海では貝やワカメを拾い、野草を摘んで、夕飯の材料にします。最高においしいですよ。

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子どもたちと共に、海にて。

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写真を通して日常の風景の美しさ、その愛しさを切り取っています。

今後の目標をお聞かせください。

311以後、原発を始めとする社会問題を常に考えるようになりました。子どもたちに希望のある未来を残すために写真を通してメッセージを発信できたらと考えています。これが1つ目の目標です。

もう1つの目標は、写真で国境を越え、心を通わせ、友だちになっていくこと。社会問題は世界につながっていることが多いので、社会問題を考えるようになってから、日本だけでなく世界にも目が向くようになりました。そうした想いから、NGOが手がけるフェアトレードのカタログ撮影のお手伝いなどを続け、環境や貧困、ストリートチルドレンなどの問題に取り組む団体と関係を深めてきました。また、新たな縁がつながり、今年2月、3月には韓国の50以上の会場で写真展を開催していただき、大きな反響がありました。今後も韓国やアジアをはじめ、世界の方と写真を通してつながっていきたいです。

今後も、どこにいても自分と向き合い、嘘なく作品性を深めていく努力を重ねていきたいです。

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韓国で開催した写真展の様子

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韓国の新聞でも紹介されました。

最後に、地方で働くことに興味のあるフリーランサーへ、メッセージをお願いします。

移住してみて「今一歩の勇気があれば、人生は何が起こるか分からないし、思っているよりずっと自由なんだ」と痛感しました。糸島に住んでいる今は、本当に幸せです。

※この連載のバックナンバーはこちらからご覧ください。

<亀山さんの著書はこちらでCHECK!>

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