難病フリーランサーの「生きる知恵袋」

May 11 2017

難病を抱えながら働く人は「こんなことを知って欲しい」

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こんにちは。ライターの江口たま(@ta_mocha)です。
2013年暮れに高安動脈炎(膠原病の一種)の治療で入院していたときのこと。病棟内のロビーで患者同士、雑談をすることがしばしばありました。そのときに出会った女性たちのことを少しご紹介したいと思います。

50代の女性(膠原病)

私が「息子がまだ3歳と幼いので、入院中、それがいちばん気がかりなんです」と言うと、50代のある女性は「親がいなくても子は育つものよ~。それより、うちは親の介護が大変でね......」と言った。その女性は、大学生と高校生の2人の息子をもつ母親で、入院は4回目になるのだとか。彼女の子どもは、「母親の入院に慣れたもので、家事に協力的」「とても素直に育っている」と育児のベテランである彼女はおおらかな笑顔で語っていた。

出産して間もない20代の女性

同室の隣のベッドには、出産して間もない20代の女性もいた。彼女は消化器系に炎症を起こしているので、口から食べ物を食べられない。「点滴がごはんなんです...」と苦笑いしていた。でも、生まれたばかりの赤ちゃんに母乳を与えなくてはならないので、慣れないながら懸命に搾乳しているという。私よりもひとまわり歳下だったけれど、難病をかかえながらも母親になった覚悟と強さがにじみ出ていた。

20代後半の女性(SLE)

ほかにも、SLE(全身性エリテマトーデス)患者の20代後半の女性と親しくなった。彼女は独身で、一人暮らし。週に一度、高齢の母親にわざわざ地方から出てきてもらっているのが申し訳ないという。腎臓疾患があるので、「妊娠はムリかな...」と寂しそうに語っていた。お付き合いしているパートナーとその後どうなったか? まだ仕事を続けているだろうか? また、話がしたいと思える人だった。

保育士をしている20代女性

担当医から「薬の副作用で抵抗力が落ちているので、感染症にかかりやすいから、いまの職場(保育園)で仕事を継続されるのは難しいかもしれませんね」と告げられていた。彼女は「仕事を辞めることを考えている」と悲しげに言った。

皆それぞれ事情や悩みを抱えている

このように、入院中はさまざまな人たちと話をする機会がありました。そのなかで感じたことは、人それぞれ自分の生活があり、いろいろな生き方がある、病気のあるなしにかかわらず、育児、介護など、皆さまざまな事情をかかえている、つらいのは自分だけではない、ということです。

一人ひとりの状況は異なるので、患者同士でさえ、他人のことは聞いてみないとわからないことばかりです。ましてや病気やケガなどで入院した経験のない人は、闘病中の患者さんの状況は理解しづらいでしょう。

しかし、誰しもいつ何時、病気や障がいを抱えるかはわかりません。いまは健康である人でも、想像力を働かせて、ぜひとも難病や障がいを持つ方々の気持ちを察していただければと思います。

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難病のある人と働くうえで理解して欲しいこと

たとえば、「免疫力が低下している」と聞いただけでは、イメージが湧きにくいかもしれませんが、免疫力が低下している人は、感染症にかかりやすく、風邪が悪化して肺炎になって入院、なんてことも珍しくありません。それが命取りになる場合もあるので、医師からの指導で、私も含めてつねにマスクを着用している人は多いです。

ほかにも、「体力がない」という人は、全身のスタミナ不足のため、立ちっぱなしでいること、重たい荷物を運ぶ力仕事、屋外で長時間過ごすこと(紫外線を浴びる)などは症状が悪化しやすく、長時間の外出や作業が難しい状況にあるかもしれません。

それから、意外と多いのが、いわゆる「気象病」で、急激な気温や気圧の変化に弱い人や、低気圧や台風が接近してくると体調が悪化しやすい人もいます(私の場合で言えば、低血圧になって立ちくらみがひどくなります)。日によって急に体調が悪化してしまうこともあるので、突発的な休みを理解して欲しいと思っている当事者は少なくないと思います。

状況を理解するために、病気のことを聞いてもよい?

周囲の人の中には「知識がないので、なにか変なことを聞いて傷つけてしまったら......」と思うと、なかなか深く突っ込んで病気のことを聞けない、と遠慮してしまっている人もいるもしれません。それが難病に対するイメージの掴みにくさにつながっているのだとしたら、それはとても残念なことです。

実は当事者のなかにも「病気のことについて知ってもらいたい」「あまり気にしない」と思っている人は少なくありません。病気のことを既にオープンにしている人に対してであれば、どんどん本人に聞いてみるといいと思います。詳しく突っ込んで聞いてもらったほうが、むしろ「理解しようとしてくれているんだな」と思って、相手も好意的に受け止めてくれるでしょう。

ビジネスシーンにおいても、「どんなときに、どんなことで困っているの?」「どんなことに配慮すればいい?」など、こんな風に聞かれると答えやすいですし、相手が面白半分で聞いてこない限り、いやな気分はしないと思います。さらに、「どのような症状が出るの?」「どんな薬を服用してるの?」「食事制限とかあるの?」など、より具体的に聞けば、自分の状況について率直に話してくれる人もいるかもしれません。

「がんばって!」というフレーズは要注意

ただし、踏み込んで聞くにしても、難病や障がいのある人たちなどに対して、気軽に「がんばって!」と声がけすることは控えた方が無難かもしれません。

難病を抱えながら働く人たちの中には、ある程度病状が安定している時期(寛解期)でも、日々の体調管理に人一倍努力し、またいつ病気が再燃するかもわからない不安をかかえながら、精神的にもギリギリの状態で働いている人も少なくありません。

そのような状況で、たとえば、「お仕事がんばって!」と声をかけられた本人は、「私はこんなにもすでに必死でがんばっているのに......」「もうこれ以上がんばれないわ」と悲しい気持ちを抱くかもしれません。期待以上の仕事をしてくれるからとさらに仕事を任されようものなら、「これ以上仕事を押し付けないで!」と心の内では叫び声を上げているかもしれません。

「がんばれ」という一言は、相手にストレスやプレッシャーを与えてしまう恐れがあることを念頭に、それぞれの状況や心情を察したうえでの声がけが求められます。

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特別扱いは無用。ナチュラルサポートが望ましい

一方、ビジネスシーンにおいては、こまめに進捗を確認する機会を設けながら、本人の状況や意向を確認し、本人に困っているようすがあれば、じっくり耳を傾ける姿勢が大切と思います。

とはいえ、あれこれ気をつかわれると、まるで特別扱いをされているようで、逆に居心地が悪いと感じてしまう人もいるかと思います。当事者は「難病」であることを理由に特別扱いをしてもらうことを欲しているのではなく、あくまで自分の能力を発揮して社会に対して貢献するために、業務上のちょっとした"調整"を求めているケースが多いと思います。たとえばライターの私であれば、取引先にお願いして納期や進行スケジュールにゆとりを持たせてもらう等の調整に応じてもらうなど、ナチュラルなサポートを得ていて、それはとても助かります。

完成物や「できること」に対して「ほめる」「感謝する」ことの大切さ

日ごろから「体調大丈夫?」「不安に感じていることはない?」など、もちろん相手を気づかうことも大切ですが、それよりもむしろ、難病・障がいのあるなしにかかわらず、能力を活かして企業や社会に貢献している、役立っているということを正当に評価してあげることのほうが大切と思います。

わかりやすい例で言えば、相手がイラストレーターであれば、完成物であるイラストに対してきちんと評価をする、できていることに関してはほめる、感謝の気持ちを伝えるなどです。これらは、ビジネスシーンにかかわらず、良好な対人関係を築くうえで不可欠なことと言えるでしょう。

相手の「できないこと」に目を向けるのではなく、「できること」に目を向けて声がけや気づかいをすることによって、本人に自信とやりがいを感じてもらいながら、職業人として活躍してもらうことが何よりの心づかいと言えそうです。

お互いのことを気づかう姿勢や心がけが大切

先に述べたとおり、症状は人それぞれです。100人いれば、100通りの症状があるでしょう。『困ってるひと』でおなじみ作家・大野更紗さんと評論家・荻上チキさんが共同編集長の「見えない障がい」をテーマにした情報共有メールマガジン「困ってるズ!」などへの投稿内容をみても、難病や障がいと一言でいっても、困っていることは実に多種多様であることがわかります(ちなみに、このメルマガvol.84で私が登場しています)。

ですから、大切なことは、難病や障がいのあるなしにかかわらず、お互いのことを気づかう姿勢や心がけを日ごろから意識することだと思います。

周囲の方々へのちょっとした声がけや気配りで、誰もがより働きやすい環境、より安心して暮らせる社会や未来を実現できるはずです。この考え方は、「フリーランスがより活躍できる社会や未来」を考えていくうえでも、大切なことと言えるのではないでしょうか。

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