特集

May 09 2017

【フリーランスと社会保障④】1階部分しかもらえない!老後にどう備える?

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201704_welfare04_top.jpg"フリーランスと社会保障制度"について考えるこちらの特集。「時代背景編」「病気・ケガ編」「妊娠・出産編」と続き、4回目は、フリーランスの「老後のお金」に注目します。

今回も比較するのは、民間企業に勤める"会社員"の社会保障制度。フリーランスは老後にもらえる年金が少ないと聞きますが、それは本当なのでしょうか。

まずは国の制度を知り、老後に備えて、フリーランスが今すぐ考えるべき対策について、ファイナンシャル・プランナーの氏家祥美先生に教えていただきます。

Profile / 氏家 祥美さん

prof_ujiie.jpgハートマネー代表 ファイナンシャルプランナー
女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追及する。『いちばんよくわかる!結婚一年生のお金』(学研パブリッシング)ほか、著書・監修本多数。
https://www.heart-money.net/

会社員の公的年金は2階建て。フリーランスは1階建て

まずはじめに、日本の年金制度の構造を確認しておきましょう。

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厚生労働省サイトより ※(参考)『いっしょに検証!公的年金』(厚生労働省)

日本の年金制度は、公的年金、任意加入の年金をあわせて「3階建て」とよく言われます。

1階:「国民年金」(日本に住む20歳から60歳未満の人すべてが加入)
2階:「厚生年金」(会社員や公務員が加入)
3階:「企業年金」など上乗せ分(公的年金(「国民年金」「厚生年金」)に上乗せで、会社や個人が任意で加入)

土台である1階部分の「国民年金」は、職業に関係なく対象年齢の国民全員が加入することが義務付けられています。フリーランスと会社員で差が出てくるのは2階以降です。2階部分の「厚生年金」は、会社員や公務員のための年金であるため、フリーランスは加入することができません。また、3階部分の上乗せ分についても、「企業年金」や「確定拠出年金(企業型)」の導入企業に勤める会社員なら自動的に加入することになりますが当然ながらフリーランスには自動的に加入しているものはありません。

つまり、このまま国民年金のみで何も対策をとらなかった場合、将来フリーランスがもらえる年金は1階部分だけ。2階、(人によっては)3階建てと手厚い会社員に比べて、もらえる年金額が少ないのです(参考:平成29年度新規裁定者の国民年金額は、月額:64,941円。※「平成29年度年金額改定について」(厚生労働省)より)。

はたして、1階部分のみで、老後を安心して過ごすことができるでしょうか。フリーランスは、会社員の2階、3階にあたる部分も、自分で対策をとらなければいけないのです。

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厚生労働省サイトより ※(参考)『いっしょに検証!公的年金』(厚生労働省)

国の制度である「小規模企業共済」「確定拠出年金(iDeCo)」を利用して将来に備える

では、フリーランスが、老後の資金を準備するためには、どのような方法があるのでしょうか。

1)「小規模企業共済」を使って準備をする

「小規模企業共済とは、国が作った経営者や個人事業主のための退職金制度です」と氏家先生。

「中小機構が取り扱う制度で、月額1,000円~7万円までかけられ、廃業した時や、老齢になった時に共済金(解約手当金)を受け取ることができます。小規模企業共済の一番のメリットは、掛け金が全額所得控除になること。掛け金が全額経費扱いになって売上から差し引けるため、税金を安くすることができるのです。投資性のある商品ではないので、増える期待はできませんが、"節税効果のある貯金"と言えばイメージしやすいでしょうか。難しい知識は一切不要で、毎月貯金をするような感覚で、税金を減らしながら、将来のお金の準備が出来るのです」

老後のお金は心配だけれど、自分で資産運用の勉強をするのはちょっと......という人や、とりあえず心配だから貯金してみよう!と考えている人にとっては、ほぼ貯金と変わらない感覚で節税もできるという点が大きな魅力と言えそうです。

ただし、

「共済金は基本的に、廃業した時、もしくは老齢になった時にうけとるためのもの。任意解約もできないわけではありませんが、掛け金納付期間が20年以上にならないと元本割れしてしまいます。月々の掛け金は、くれぐれも無理のない金額に設定しましょう」

2)「確定拠出年金(個人型)」を検討してみる

そして、もうひとつが「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に加入して準備する方法です。

「確定拠出年金とは、国民年金基金連合会が取り扱う制度です。老後に向けた資産形成を目的としたもので、原則60歳から受け取りが可能です。小規模企業共済が貯蓄タイプであるのに対して、確定拠出年金は、中身が投資信託を中心にできています(元本保証の貯蓄等も選べる)。拠出金の範囲内で、どの金融商品にかけるのかを自分で選ばなければいけないため、投資に興味があったり、老後に向けて資産運用をはじめてみたいと考えている方向けの制度と言えるでしょう」

掛け金(フリーランスの上限は、月額68,000円。国民年金基金に加入している場合は、合わせて68,000円)は全額所得控除になるので、節税効果が期待できます。さらに、運用期間中の運用益は非課税になるというメリットもあります。

ただし、

「確定拠出年金は、投資信託等を中心に構成されているため、選ぶ金融商品によっては元本割れのリスクがあります。また、別途口座管理料等のコストがかかります。しかし、老後まで15年以上の年数がある人なら、多少のリスクをとってでも増える可能性を追う価値はあるでしょう。ぜひ、老後の資産運用を考えている人や、まずは小規模企業共済からはじめてみたけれど、事業に余裕が出てきた方などは、確定拠出年金も検討してみてほしいですね」

この他にも、月々の国民年金保険料に400円プラスするだけで、将来もらえる国民年金の額を増やせる「国民年金付加年金制度」もあるようです(参考:「付加保険料納付のご案内」(日本年金機構))。

生命保険会社の保険商品や、投資信託でも老後の資金づくりはできますが、それよりも節税効果が大きい国の制度があるということを、ぜひ知ってほしいと氏家先生は言います。

このままでは、1階部分しかもらえないフリーランス。これらの制度をうまく利用して、2階、3階部分にも備えていきたいですね。

<まとめ>

1階部分しかもらえない!にどう備える?

・貯金感覚で老後資金を用意でき、節税効果が大きな「小規模企業共済」を検討してみる

・老後の資産運用を検討しているのであれば、節税しながら運用できる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」がおすすめ

・2つの制度は併用できるので、資金に余裕のある人は両方検討してみるのも◯

さて、次回は、フリーランスに万一があった場合に残された家族がもらえる「遺族年金」に注目します!

<目次>
第1回 【時代背景編】 なぜフリーランスの社会保障は手薄いのか
第2回 【病気・ケガ編】 病気・ケガでの収入ストップにどう備える?
第3回 【妊娠・出産編】 会社員とここまで違う!フリーランスの産前・産後
第4回 【老後資金編】 1階部分しかもらえない!にどう備える?
第5回 【遺族年金編】 家族のために考えたい、フリーランスの遺族保障
第6回 【信用力編】 フリーランスが信用力を高めるには?

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