【フリーランスと社会保障⑤】家族のために考えたい、フリーランスの遺族保障

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"フリーランスと社会保障制度"について考えるこちらの特集。「時代背景編」「病気・ケガ編」「妊娠・出産編」「老後資金編」と続き、5回目は、「フリーランスに万一があった場合」に注目します。

フリーランスに万一があった場合、残された家族がもらえるお金(遺族年金)は、会社員が亡くなった場合と比べてどのように違うのでしょうか。民間企業に勤める会社員の社会保障制度と比較しながら、フリーランスが考えておくべき対策についてファイナンシャル・プランナーの氏家祥美先生に教えていただきます。

Profile / 氏家 祥美さん

prof_ujiie.jpgハートマネー代表 ファイナンシャルプランナー
女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追及する。『いちばんよくわかる!結婚一年生のお金』(学研パブリッシング)ほか、著書・監修本多数。
https://www.heart-money.net/

フリーランスは、遺族年金も一階建て

まずはじめに、国の制度を確認しておきましょう。

前回の【老後資金編】で確認したとおり、国の年金制度は、1階部分(国民年金)、2階部分(厚生年金)、3階部分(公的年金の上乗せ分)で成り立っていました。

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厚生労働省サイトより ※(参考)『いっしょに検証!公的年金』(厚生労働省)

その中で、フリーランスの公的年金は、土台の1階部分である国民年金のみ。何も対策をしなければ、2階、(人によっては)3階まである会社員に比べ、将来貰えるお金(老齢年金)が少なくなるのでした。

今回のテーマである「遺族年金」も、考え方は同じです。フリーランスに万一があった場合、残された家族がもらえる遺族年金は、1階部分の「遺族基礎年金」のみ。しかも、受給要件や受給期間が、「遺族厚生年金」よりも厳しくなっているのです。

遺族基礎年金は、「子」が18歳に達する年度末で終了

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」では受給要件が異なり、中でも注目したいのが、「子どもがいるかどうか」と、その「子どもの年齢」です(受給要件の詳細は「年金に加入している方または加入していた方が亡くなったとき(日本年金機構)」でご確認ください)。

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※会社員の遺族は、受給要件を満たせば、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方を受給できます。
※会社員の遺族は「子」がいなくても、その他の要件を満たしていれば「遺族厚生年金」を受給できます(「遺族基礎年金」は、要件を満たす子どもがいなければ受給できません)。
※「遺族厚生年金」を受給していた人が、「老齢厚生年金」を受けられるようになった場合は、どちらかを選択しなければなりません(「年金の併給又は選択」(日本年金機構))

そもそも遺族基礎年金は、要件を満たす子どもがいなければ受給できず、かつ、受給できたとしても、子どもが18歳に達する年度末で受給が終了してしまいます。一方で、遺族厚生年金は、子が18歳に達する年度末を過ぎても、配偶者が遺族であり続ける限りずっと受給し続けられます(遺族厚生年金を受給するのが40歳以上の妻の場合は「中高齢寡婦加算」が加算されます。詳細は「中高齢寡婦加算」(日本年金機構)でご確認ください)。

つまり会社員の遺族は、要件を満たせば、子どもの年齢に関係なくずっと遺族厚生年金が続くのに対し、フリーランスの遺族は、子どもが18歳に達する年度末を経過した時点で(その後大学などに進学をするのならば、まだまだ大きなお金がかかる時期です)、国からの遺族年金がなくなってしまうのです。

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※フリーランスの遺族が「妻」の場合、要件を満たせば60歳~65歳までの間「寡婦年金」を受け取ることができます。詳しくは「寡婦年金を受けられるとき」(日本年金機構)でご確認ください。
※その他、年金に関する詳細は「年金のことを調べる」(日本年金機構)でご確認ください。

事業主であるという自覚を持ち、民間の保険で死亡保障を手厚くすることが大事

では、自分に万一があった時の遺族保障が手薄いフリーランスは、残される家族のためにどのような対策を考えるべきなのでしょうか。

「民間の保険をうまく活用して、万一に備えていきましょう」と氏家先生。

「最近は、掛け捨ての安い死亡保障がいろいろ出ています。収入保障保険、定期保険などのキーワードで探してみてください。そして、子どもが小さい時の保障額は多めに、大きくなるにつれ死亡保障を減額していけば、割安な保険料で必要な保障が手に入ります」

ライフステージに応じて保険内容を見直し、保険料をうまくおさえながら、必要な保障額を確保していくことが大事ということですね。

「そもそもフリーランスは会社を自分ひとりで経営しているようなイメージです。ですから、自分が事業主であるという自覚を持ち、自分の生活費のみならず万一の時の保険料なども踏まえて稼ぎ、備えていく必要があるのです」

会社員のパートナーから、フリーランスになりたいと言われたら?

また、これまでずっと会社員だったパートナーから、フリーランスになりたいと言われることもあるかも知れません。そんな時は、

1)遺族厚生年金の資格期間に注意

「会社員時代は、厚生年金の加入者であれば、遺族には「遺族厚生年金」が支払われます。若くして亡くなったために仮に一年しか保険料を納めていなくても、保険料の滞納がなければ、300月保険料を納めたものとして計算されるので、それなりの年金を受け取ることができます。

しかし、退職後はそうではありません。会社を辞めた後は、亡くなった時点で「老齢厚生年金」の資格期間を満たしていなければ、遺族は遺族厚生年金を受給することができません(老齢厚生年金の受給資格は、老齢基礎年金の受給資格を満たした人に与えられます。2017年5月現在は最低25年の加入が必要) 。

これは意外と盲点だと氏家先生は指摘します。

「ですから、会社を辞める前にきちんとこれを確認した上で、これまで入っていた民間の保険を見直す必要があります。体を壊してから気づき、慌てて保険に入り直そうとしても、もうできないのです」

2)自営業者に「扶養」の考えはない。自分も働き続ける覚悟が必要

「また、社会保障制度が整った背景を見ると、当時の自営業者は、たとえ夫が亡くなっても、家とビジネスがあるのだから、残された家族がそれを続けていけば生活は成り立つでしょ?という考え方です。自営業者には、家族に対して『事業の従事者』という考えはあっても、『扶養』という考え方がありません。まずはそこを理解した上で、妻も働き続けることが必要です」

会社員であったパートナーが会社をやめれば、手厚い社会保障もなくなります。自分もずっと働き続ける覚悟を持つことが必要なのです。

<まとめ>

フリーランスは、自分に万一があった場合、残される家族のためにどう備える?

・安い掛け捨て保険をうまく活用し、子どもにお金がかかる期間は、会社員よりも死亡保障を手厚くする。

・会社員のパートナーからフリーランスになりたいと言われたら、

 ① 「遺族厚生年金」の資格期間を確認し、民間の保険を見直す。

 ② フリーランスに「扶養」はないということを理解した上で、自分も働き続ける覚悟を持つことが必要。

次回はいよいよ最終回。番外編として、「フリーランスが信用力を高める方法」について考えます!

<目次>
第1回 【時代背景編】 なぜフリーランスの社会保障は手薄いのか
第2回 【病気・ケガ編】 病気・ケガでの収入ストップにどう備える?
第3回 【妊娠・出産編】 会社員とここまで違う!フリーランスの産前・産後
第4回 【老後資金編】 1階部分しかもらえない!老後にどう備える?
第5回 【遺族年金編】 家族のために考えたい、フリーランスの遺族保障
第6回 【信用力編】 フリーランスが信用力を高めるには?
釘宮 優子

Writer 釘宮 優子

広告制作会社でのカタログ・パンフレットの編集・コピーライティング、金融専門研修会社でのテキスト編集等を経て、2016年よりフリーランスの編集者・ライターに。マネー・働き方関連の取材記事、人物インタビューをメインに活動中。AFP。プライベートでは、10歳年下の夫と2013年生まれの娘の三人暮らし。

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