「障がい者」のイメージを豊かに

June 21 2017

フリーランスだからこそ知ってほしい「障害年金」

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4、5月に、リズムーンでは"フリーランスと社会保障"を特集しました。本コーナーでは、フリーランスに知ってもらいたいもう一つの社会保障である「障害年金」についてご紹介します。社会保険労務士として障害年金業務を中心にご活躍中の山下律子さんにお話をうかがいました。

yamashitasan.jpg■Profile/山下律子さん
社会保険労務士
食品会社勤務などを経て昭和55年にS区役所に入職。国民健康保険・国民年金・介護保険などの業務に携わる。平成5年行政書士、平成7年社会保険労務士・日本マンパワー認定年金コンサルタント資格を取得。早期退職後、障害年金専門の社会保険労務士として独立。
http://yamashita-nenkin.net/

その存在すら知らない人も多い「障害年金」とは?

障害年金は、病気やけがが原因で障がいが残るという、人生における"事故"に対して支給される年金です。

「公的年金は『老齢年金』『遺族年金』『障害年金』の3つになります。老齢というのは、ほぼ全員が迎える"事故"でそれを保障するのが『老齢年金』。結婚して結婚相手が亡くなるというのも"事故"でそれを保障するのが『遺族年金』になります。そして、本人が目が見えなくなった耳が聞こえなくなった、人工透析をしなくてはいけなくなったという"事故"に遭ったときに保障するのが『障害年金』になります」

対象は、「車いすになった」「目が見えなくなった」といった身体障がい者だけでなく、精神障がい者やガン、糖尿病等の方も対象になる場合があります。
障害年金は、自分で申請しない限り支給されず、行政からの案内もないため、その存在すら知らない人も少なくありません。なお、よく勘違いされがちですが「障害年金」と「障害者手帳」は別制度です。手帳制度はあくまでも福祉制度であり、障害年金は保険制度であるという点で両者は本質的に異なります。

障害年金受給のための3要件は下記になります。

【1】初診日要件
病気やけがで初めて病院に行った日を自ら証明する必要があります。

【2】年金保険料(以下、保険料)納付要件
初診日の前日において、次のいずれかを満たす必要があります。

①全期間の3分の2以上納付
初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
例えば、35歳の6月20日が初診日となった場合...
6月19日の時点で、前々月である4月までの間に、20歳からの15年間の3分の2以上、つまり10年以上の納付期間または免除があること

②直近1年間納付
初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
例えば、35歳の6月20日が初診日となった場合...
6月19日の時点で、前々月である4月までの1年間に保険料の未納がないこと

【3】障害状態要件
障がいの状態が年金受給レベルに該当するか、主治医の診断書を中心に判断されます。

自営業者には「3級」がない!

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」、そして一時金である「障害手当金」があります。
このうち、自営業者である国民年金納付者が受け取れるのは、障害基礎年金になります(ただし、初診日が会社員時代にある場合、障害厚生年金支給対象になる可能性があります)。

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障害年金のイメージ

障がい程度の重いものから、1級、2級、3級となります。
自営業者が受け取れる障害基礎年金には、1級と2級があり、金額は下記になります。

1級:97万4,125円(月額約8万1,000円)+子の加算
2級:77万9,300円(月額約6万5,000円)+子の加算
※子の加算:1人目・2人目の子がある場合は1人に付き年額22万4,300円、3人目以降は1人に付き年額7万4,800円

例えば、2級該当で子どもが1人いる場合、受け取れる月額は...
2級年金分約6万5,000円+子の加算分約1万8,000円=約8万3,000円

厚生年金(会社員)には、このほかに、報酬比例の年金額である障害厚生年金、配偶者加給年金、労災保険の障害補償年金もあります。

~会社員にあって自営業者にないもの~
・障害基礎年金と障害厚生年金の2階建て
・3級と障害手当金
・配偶者加給年金(事実婚でもOK)
・労災保険の障害補償年金

やはり障害年金でも、フリーランスの社会保障の手薄さがわかります。ただ、定期的に決まった金額が入ることがどれだけ心の支えになるでしょうか。

「障がいを持つと、身体的・精神的な大変さだけでなく、収入が減ったり途絶えたりして経済的な困難も重くのしかかってくることが多いです。障害年金で定期的にお金が入ってくることで、これからの人生に対して心の持ち方も違ってきますよね。障がいや病気を持ってからの、その方の人生を支えるとても重要な制度だと思っています」

フリーランスが障害年金で後悔しないためにできること

①普段から保険料をきちんと納める、もしくは免除申請をする

障害年金の怖いところは、納付期間がたった1か月でも足りなければ、どんなに重い障がい状態だったとしても1円も支給されないことです。これはフリーランスが一番気をつけないといけないことだと山下さんは指摘します。

「たとえば、数分後、交通事故に遭い、障がいを負ったとします。その場合、多くは今日病院にかかりますよね。そうなると、初診日は今日になります。そして、障害年金を請求しようとなった時に、自分が払うべき保険料を払っていなかったことがわかって、慌てて今日、もしくは明日以降保険料を払い込んでもダメなんです。免除申請も同じです。事故の起きる前日、つまり昨日までに払っているか、免除をしていないとだめなんですね。それが自営業の方にとって一番怖いところですね。会社員だと、基本的に会社が払ってくれていますから」

普段から保険料をきちんと納めること。経済的に難しい場合は、免除申請を検討します。自分の納付状況をチェックする一番確実な方法は年金事務所できくことです。不安な方は、年金事務所で確認しておきましょう。

②初診日を証明できる可能性のある診察券等は保管しておく

また、初診日という問題もあります。病院のカルテの保存期間は、最終診療日から5年と法律で決まっています。5年を過ぎるとカルテを破棄してしまう病院も多いのです。
初診日が5年よりも前で、その後通院していなかったけれど悪化し、障がい状態になるケースも少なくありません。カルテがなく、初診日が証明できないことで、障害年金を受け取れないという制度の在り方が長年問題になっていました。
改善を訴える声に、国もやっと重い腰を上げました。

「2015年10月から、初診日認定が少しですが緩やかになりました。第3者による証明や診察券・入院記録も資料価値として認められる可能性が高まったのです。普段から診察券等の資料は大切に保管しておくことをお勧めします」

③申請前には情報収集をして慎重に

「もし、障害年金を請求する段階になったら、かなり慎重に進める必要があります。突然の事故の場合は難しいと思いますが、それ以外の場合は、きちんとご自分で、もしくは私たちのような専門家を使って情報収集をして心構えをしてから年金事務所に行くようにしていただきたいです」

そして、初診日と納付要件がここでも重要です。
「自営業の方で気をつけないといけないのは、未納付期間が長い場合、古い分から一生懸命納めていて、3分の2以上になっていなかった、というケースです。その場合、もう一つの納付要件である直近の1年間納付にも当てはまらなくなって、結局受給要件に当てはまらないという結果になってしまう恐れがあります」

初診日はいつになるのか、そして自分の納付状況は2つの要件のうちどちらかに当てはまるのか等の確認・心構えが重要です。

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他の公的年金に比べ受給要件が厳しい障害年金。ぜひその制度を知ってもらい、もしものときに後悔しないよう、自衛できる心構えを持っていただきたいと思います。

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