街と人をつなげて笑顔に。参加型の地域コミュニティづくり│NPO法人 街ing本郷

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第26回目は「NPO法人 街ing本郷」代表理事の長谷川大さんにお話を聞きました。

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NPO法人 街ing本郷の活動内容を教えてください。

既存にあるモノ・ヒト・チカラをつなげて街を活性化する、みんなを笑顔にする、をモットーに活動をしています。地域の活性化とは、【地域財産×地域課題×地域活動】で成り立っていると考えており、地域において、この×(かける)の役割を担っているのが私たち「街ing本郷」だと思っています。

具体的には、地域、学生、大家、デザインをつなぐ「書生生活」、シニア、学生、デザインをつなぐ「ひとつ屋根の下」、地域、防災、デザインをつなぐ「黄色いしるし」、商店街の魅力を店主の人柄から伝える冊子やウェブサイトを作成する「本郷百貨店」など主に多種多様な活動を行っています。この「本郷百貨店」という取り組みは、2015年のグッドデザイン賞を受賞しました。

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2015年グッドデザイン賞を受賞した「本郷百貨店」

興味深い活動の数々ですが、なぜ「街ing本郷」のような活動を始めようと思われたのですか?

私は、生まれも育ちも本郷(東京都文京区)で、鮮魚店「魚よし」の3代目をしています。この街には、歴史や文化をはじめ大学や病院、安全・安心など多くの地域財産があり、もともと多くの商店主がこの街を作ってきたんです。でも、若い世代が少なくなってきて、今後の担い手不足が心配されていたんですね。そこをなんとかできないかなと考えました。すでに多くの方々や組織によって活性化が図られているのですが、さらにつなげる組織があればもっとよくなっていくのではないかと思い、地域の有志を募り2010年12月に、法人を設立しました。

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生まれも育ちも本郷! 大正末期創業の魚屋の3代目の長谷川さん

設立当初からある学生さんと大家さん、地域をつなぐ「書生生活」とはどんな仕組みなのでしょうか。

本郷のある文京区は、東京大学やお茶の水女子大学をはじめとして、近くには日本大学や明治大学などいくつもの大学があり、学生の街でもあります。昔から、学生下宿が多かったので、味があるアパートの空き部屋がたくさんあるんですよ。そんなことから、大学の近くに住みたい学生と使用されていない物件を所有する大家さんをつないで、地域の担い手不足を解消すべく活動するプロジェクトとして誕生しました。2011年にスタートしてから、男女合わせて16名の書生が誕生しています。

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地域と暮らす。学生と空き部屋を持つ大家さんを結ぶ「書生生活」

書生さんになるために必要な条件はあるのでしょうか?

地域活動に興味があることが条件ですね。学生さんたちには、家賃を安く抑えながら学校の近くに住み、地域のお祭りやイベントへの参加、学習セミナーの実施など、本郷の街づくりに参加してもらっています。どんな活動をするかは話し合いで決めていきます。

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夏祭りでかき氷屋のお手伝いをする書生さんたち

ちなみに、本郷は東京のど真ん中に位置するという場所なので、アパートもやはりお高いのかな......なんて思ってしまうのですが。

もちろん家賃はそれぞれだと思いますが、「書生生活」では、現在、大家さんの協力により、書生さんたちに7室のお部屋を提供しており、3万円~4万円くらいで暮らしてもらっています。家賃が安くなるので経済的負担の軽減になりますし、家と学校が近いので時間を有効活用することができます。また、多世代で交流することでコミュニケーション能力を向上させることができるのがいいところかなと思います。そして、何よりも本郷を楽しむことができるさまざまな経験ができると思います!

これまで16名の書生さんが誕生しているとのことですが、このプロジェクトに関して、書生さんの評判はいかがですか。

「家賃が安くなるから」「卒論や実験で遅くなる時でも家が近いといいから」「友人に誘われて」など参加のきっかけはさまざまなようです。でも、3年、4年、またそれ以上、この街に住み、地域のお祭りなどに参加しているうちに、ただ住む場所というだけでなく、「本郷」の街と人に馴染むことができ、「今では第2の故郷です」というような声ももらってます。

また、2015年には地域のみんなに愛された本郷最後の銭湯「菊水湯」がその幕を下ろしました。その時に「さようなら」と「ありがとう」を伝える見学会を企画して、当日は150人以上の方に来ていただきました。見学会の企画・運営に携わってくれた書生さんは、きっといろいろと感じてくれたんじゃないでしょうか。

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菊水湯の見学会の前に掃除をする書生さん

「書生プロジェクト」から派生したのが、「ひとつ屋根の下」なのでしょうか?

はい。平成25年の調査では、文京区に住む介護不要の高齢者のうち4割ほどがひとり暮らしという結果が出ており、本郷の街でもシニアが増えてきたという印象がありました。一方、「書生プロジェクト」を通じて、部屋を安く借りたい学生がたくさんいることもわかっていました。そこで、大学生・大学院生が、文京区のシニアの住む家の空き部屋を借りてともに生活することで、お互いに助け合い、支え合いながら共生を目指すプロジェクトをやってみようということで「ひとつ屋根の下」が始まりました。部屋の貸し手と借り手としてただ一緒に住むだけでなく、週に何度か一緒に食事をとったり、お手伝いをしたりと団欒の機会を持つようにしています。

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ひとつ屋根の下で暮らす学生さん(左)とシニアの方(真ん中)、立会人(右)

活動をしてうれしいことはありますか。

おかげさまで、設立して7年、活動メンバーは多士済々、学生、社会人、企業、団体、主婦、フリーランスなど、多くの方々に参加いただいています。2016年から、東京大学大学院教育学研究科研究室のみなさんが、一時休刊していた「街ing 本郷」の活動やイベントを紹介する「街ing本郷だより」の編集や発行をしてくれ、この街をよりよくするための活動が形になってきているところがうれしいですね。

課題は、安定した活動を実施するための運営資金の調達です。現在、認定NPO法人化に向けて、準備中です。

街ing本郷が未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

超高齢化社会を迎えるにあたり、地域ではさまざまな地域課題が発生しています。街全体を考え多くの地域課題に対応するためには【つなげる組織】は、有効な方法であると考えています。

私どもが多くの活動事例を積み上げ、少しでも多く地域の参考になり、また、同じように地域活性化に挑戦する同志を勇気づけられれば......と思います。

10年後、20年後、50年後も街が元気であるために、引き続き活動していきます!

Take Action! 〜いま私たちにできること〜

異世代の交流、助け合いが街を住みやすくする。それはどちらかが一方的に行うのではなく、お互いに必要なことをマッチングしてこそ機能していくのだと思いました。何よりもみんなで本郷の街を愛し、楽しんで活動しているのが印象的でした。他の地域でも参考にしたい活動です!

NPO法人 街ing本郷
ホームページ: http://m-hongo.com/
Facebook:街ing本郷
書生生活:https://www.shosei.tokyo/

林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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