薬膳の力で人々を元気づける「養生ごはん」研究家・松橋佳奈子さん@愛知県

地方で働くってどんな感じ? 地域ならではのフリーランス事情を知りたい!
「地方フリーランス生活」では、自分らしいスタイルで働く地方フリーランサーに、地方で活動することのメリットやデメリットのほか、日頃心がけていることなどを伺います。今回は愛知県で活動されている養生ごはん研究家の松橋佳奈子さんにお話をお聞きしました。

201709_matsuhashi_prof.jpg■松橋佳奈子さん プロフィール

活動地域 愛知県
フリーランス歴 3年
職種 養生ごはん研究家
経歴

体調不良がきっかけで薬膳を学び、「まちづくり」から「食」の道へ。「忙しい方にこそ、食べることを大切にしてほしい」という想いを胸に、2014年8月に自身の活動をスタート。「人間も自然の一部」「すべての食材に効能がある」という薬膳の考え方をベースに、身近な材料とシンプルな調理法で作れる「養生ごはん」を提案。国際薬膳師。

養生キッチンふうど
フェイスブック

まず、「養生ごはん」とはどのようなごはんなのでしょうか?

「つくる人もたべる人もまあるくなる」をコンセプトに、薬膳の考え方をベースにしながら身近な材料で気軽につくれる食を「養生ごはん」と名付けて活動しています。

「養生」とは、「いのちを養うこと」「心と体を整えること」を意味します。「養生ごはん」を体験した方が、食を中心に、心と体を大切にした健やかな暮らしを保っていくことができたら...と願っています。

現在のお仕事内容を教えてください。

レシピ開発、メニュー監修、コラム執筆、講演活動などを通して「養生ごはん」を伝えています。

最近では、赤ちゃんと一緒にくつろげるカフェ(写真の撮れる赤ちゃんカフェAcha-kanさん)の「季節の養生ごはんランチ」のレシピを開発しました。また、お庭の素敵なカフェ(garden and cafe アルキペラゴさん)の「月替わり養生ごはんランチ」など、お店のメニューの監修もしています。

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「月替わり養生ごはんランチ」の写真です。

最近とくに力を注いでいるのが、昆布大使(日本昆布協会認定)や食のウェブマガジン、レシピサイトのライターなど、食に関するライターの仕事です。また、企業内の食のコンテンツ作成などにも携わっています。自由に記事を書くのとは違っていろいろな要件はあるものの、ライターとしての基本的なスキルやスピード感を養うトレーニングになっています。

本来は五感で味わう「食」を言葉で表現するのは難しいですが、その中にもより良い伝え方があるのではと思っています。コラムなどを通して、薬膳や養生ごはんのことをより多くの方にお伝えするきっかけになれば嬉しいですね。

なお、料理教室は2017年4月からしばらくお休みしているのですが、ヨガと養生ごはんのコラボ教室である養生ヨガのみ、実施中です。

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「女性のための養生ヨガ」の一コマ。「ぽかぽか」「ほっこり」「ぐっすり」など、その時のテーマに合わせたヨガと養生ごはん(お茶&おやつ付)をお伝えしています。

フリーランスになる前は、どのようなお仕事をされていたのですか?

建設コンサルタントで公園やランドスケープの仕事に携わった後、NPOの職員として環境教育やまちづくりなどの業務に携わっていました。

料理は子どもの頃から好きでしたが、最初は仕事にしようとは考えていませんでした。というよりも「料理好きな人はたくさんいるなかで仕事にできるのか」「仕事ではなくて趣味で楽しむ方がいいでは?」と思っていました。

30歳を過ぎた頃、たまたまご縁があって「NHKきょうの料理クッキングコンテスト2012」のファイナリストに選ばれ、その翌年には体調を崩したことがきっかけで薬膳を学び、薬膳の魅力や食の大切さを強く感じるようになり、国際薬膳師の資格を取得しました。

そして次第に「薬膳をもっと身近な料理として伝えたい」「食を通して人や地域がつながるきっかけがつくれれば」という想いが募り、起業しました。

今のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

最初は、平日はNPOの非常勤職員をしながら、休日に月1回の料理教室を開くというペースでスタートしました。徐々に教室のリピーターさんや参加人数なども増えてきて、少しずつ回数などを増やしていきました。

初回の料理教室を始めてから1年半後に、NPOを退職して自身の活動に専念することにしました。しばらくは料理教室がメインでしたが、民間の助成金が取れて「風土食」の小冊子を制作したり、カフェの方からメニュー監修やレシピ開発の声をかけてもらったりしながら、活動の幅を広げてきました。

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料理教室の様子。

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「冷え対策」をテーマにした養生ごはん教室で作った、秋冬に楽しめるお鍋とトッピング2種。

名古屋に移住された経緯を教えてください。

今から13年前になりますが、最初に勤めた会社の配属先が名古屋だったことがきっかけです。その時は「一定期間の転勤」という感覚で、神奈川県から愛知県名古屋市に引っ越してきました。

実際に住み始めてみると住みやすく、とくに「ほどよく街があり、ほどよく自然が残っている」という住環境がとても気に入りました。その後、名古屋で転職・結婚し、現在に至ります。

働く土地を変えたことで、働き方やライフスタイル等の変化はありましたか??

学生時代までは関東に暮らしていましたので(学校は東京、実家は神奈川)、まず通勤ラッシュがないことや、通勤時間が短いことに驚きました。また、車で30分ほど走ると山や海などに気軽にアクセスできるので、休日の楽しみやリラックスできる時間も増えました。

食の仕事を始めて軌道に乗せるまでに、どのくらいの期間がかかりましたか?

それまで食の仕事をしていたわけではなかったので、食・料理関係のネットワークもほとんどなく、はじめは何もかもわからないことばかり。実を言うと、料理教室を始めた当初は、「まずは始めてみよう」「3回くらいやってみて、もしダメなら考え直そう」という気持ちでした。

しかしいざ始めてみると、ありがたいことに、これまでお世話になっていた方や友人、口コミなど目には見えないいろいろなご縁にも恵まれて、想像していたほどは苦労せずに、比較的順調にスタートを切ることができました。

とはいえ、まだフリーランスになって3年ということもあり、日々模索中です。正直なところ、「軌道に乗っている」と感じることは少ないです。

声を掛けていただくお仕事は長期間に渡るものも多いのですが、いつも最初が一番大変だと感じます。2回目・3回目と繰り返していく中で、仕事相手の方とのコミュニケーションに慣れ、自分なりのやり方が見えてきます。それと共に、少しずつ成果が感じられるようになります。強いて言えば「軌道に乗っている」と感じる時でしょうか...。

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ふうどスタート当初から、春分・秋分頃に古民家にてお話会を定期的に開催しています。お庭を眺め、お茶とおやつと食べながら「養生ごはんとは何か」を学ぶ会です。

仕事相手は、地元の方が多いですか?営業スタイルなど工夫はございますか?。

現在のお仕事相手は地元(県内):地元外(県外)=5:5です。

自分から営業活動をしたことはほとんどありません。お仕事は、口コミかウェブサイトなどを見て依頼をいただくことが多いです。前職から関わっていた、まちづくりや自然体験活動などのボランティアや趣味の活動でのつながりから声を掛けていただくことも、しばしばあります。

目の前の仕事にしっかり取り組むことが、思いがけないところで次の仕事につながると感じています。

遠方のクライアントとスムーズに仕事をするために心がけていることはありますか?

当たり前のことかもしれませんが、こまめに連絡を取ることと、わからない点や不安な点は早めに伝えるようにすることを心掛けています。メールだけでなく、FBメッセンジャーやラインなどでやり取りをすることもあります。

文字上だけでのやりとりの場合、言葉不足やちょっとした表現の違いがきっかけで、お互いの認識がずれてしまうことも起こりがちです。コミュニケーション上手な方をお手本にしながら、できるだけ正しくシンプルに伝えられるようにと勉強中です。

名古屋で働くことを選んで良かったこと・悪かったことを教えてください。

自分の時間がしっかり確保でき、やりたいことに集中できるようになったことはとても良かったと思います。

神奈川に住んでいた頃は東京に近かったこともあり、自分にとっては情報量が多すぎたかもしれません。良い意味で言えば常に新しいものに溢れていて刺激的なのですが、その分情報が自分の中で消化しきれずに疲れてしまうことも多かったように思います。

今は名古屋を拠点にしながら、年に数回は東京や大阪、または他の地域に足を運んだりしながら、新しいことを吸収するようにしています。

名古屋ならではの仕事の合間のリフレッシュ方法があれば教えてください。

考えがマンネリ化してきた時や仕事に疲れた時は、自然の豊かな環境に行ってリフレッシュしています。車を数十分運転して郊外の自然スポットに行くこともあれば、近所の神社だったりもします。

私の場合、ネガティブな思考には陥っている時は「身体が冷えている」ことが多いようです。そういう時は、車で近場の温泉に行きます。身体を温めて巡りを良くし、汗をたくさん出して心身のデトックス。そうすると、気持ちも自然と軽くなります。

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よく行く、近所の神社。

現在の課題がございましたらお聞かせください。

仕事量が多い時や体調が優れない時など、自分ひとりでできることに限界を感じることもしばしばあります。これまでは何とかやってきましたが、これから長く仕事をしていくためにも、仕事の種類や量・やり方などを再考する時かなと思っています。

今後の目標をお聞かせください。

具体的なイメージはまだありませんが、拠点というか、「行きたい」と思った時にふらっと立ち寄れるような場を持ちたいと思っています。食(薬膳、養生ごはん)だけでなく、心身を健やかに保つためのセルフケアを気軽に楽しめるような空間であるといいですね。


最後に、地方で働くことに興味のあるフリーランサーへ、メッセージをお願いします。

「できると思えばできるし、できないと思えばできない」。この3年間で身に染みてわかったことです。もちろん始めは誰にでも不安はありますが、十分に準備をしたらあとは自分を信じて、思いっきり始めるだけです!


※この連載のバックナンバーはこちらからご覧ください。

曽我 美穂

Writer 曽我 美穂

子どもの頃から環境に関心を持ち続け、現在はエコライター・エディター・翻訳家として独立。環境に関する雑誌やWebサイトでの執筆、翻訳、書籍編集、フェアトレードカタログの企画編集のほか、環境NGOやNPO法人の広報活動にも関わる。また、2年前から地元の公民館や自宅で、こども英語教室の運営も行っている。私生活では2009年生まれ、2012年生まれの二児の母でもある。

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