家族のこと、これからのこと
山形へ戻ってほどなく第一子を授かったきくちさん。妊娠中も産後もきもので過ごし、その様子を綴ったエッセイ『きもので出産!』が出版されるなど、母としての側面も仕事に加わった。現在は田舎でのびのびと3人の子育てをしながら仕事をし、平均して月2回、2泊3日程度の泊まりの出張をこなす。東京へも毎月足を運び、打ち合わせや執筆などに費やす。この時間があることで、地方と東京、両方の良さがバランスよく暮らしの中に溶け込んでいると言う。
きくちさんが留守の間は、子どもの面倒を見るのは夫や両親。産むのは女性だけど、育児は「チーム子育て」としてみんなでやる、がモットーだ。そんな理想的とも言えるワークスタイルを確立できたのも、ただ仕事に邁進するだけじゃなく、最初からトータルな人生設計があったことが秘訣のよう。
「これからは一人っ子同士の結婚も多いだろうし、お墓の問題、家の問題などいろいろ出てくると思う。そういう時に私は仕事をやめたくなかったんですね。だから育児も介護もお墓もすべてひっくるめて考えていました。3世代での同居は初めから順風満帆というわけではなく、何度か決裂しかかったこともありましたが、そのたびに離れられないんだなと思わされることが起こる。今ではだいぶ忍耐力もつきました(笑)。」

きくちさんの仕事場風景。
自分の書く文章が、何かと何かをつなぐ接着剤のような役割になるとうれしいと語るきくちさん。書評だったら本と人、エッセイだったらモノと人、自然と人、大人と子ども......。今までは、きもの関連のテーマが多いが、今後はもっといろんなことを書いていきたいと言う。
「きくちいま、母親、妻、娘と自分にはいくつもの役割があり、時間はいくらあっても足りない。でも限られた時間の中で日常に埋没せず、自分の足で立ちたいと思ったら、本に埋もれた中からざっと立ち上がるような、そんなイメージで自分を奮い立たせるしかない。実家は江戸時代から先祖代々、女性が結婚をせず、養子をもらいながら継いできた歴史ある本屋だったんです。祖母が亡くなった時にたたんでしまったのですが、跡を継ぐつもりだったのでさびしかったですね。いつかその屋号で何かを書きたい。その思いはずっと温めてあります」
きくちさんのお仕事道具
自らデザインしたという半幅帯で作られたバッグ。きもの姿に合うように持ち手が短く、収納力抜群のお仕事バッグ。






















