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August 25 2010

Vol.41 旅行会社代表 花本英実さん

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Profile

岡山県出身。大手旅行会社でヨーロッパ方面など海外をはじめ日本国内外のツアーコンダクターとて18年間勤務した後、2009年12月に株式会社ヴァカンス ドゥ レーヴを設立。会社員時代は、面接で「人を怒らせない自信があります」と自己PRしたことが面接官の間で話題になったというエピソードも。それを今も貫く仕事ぶりには定評があり、会社員時代から花本さんを慕う常連客も多い。

10年先のためにスピーディに決断。競争が厳しい旅行業界で起業へ

花本英実さん

スイスの山々。ある旅行プランで、ツェルマットの街に宿泊し、登山鉄道で標高3090メートルのゴルナーグラードへ向かったときに出合った絶景。当日はすばらしい天気に恵まれ、予定にはなかったハイキングをすることになったそう。その日の天気や体調で旅程を変更できるのが自由旅行のよいところだ。写真は花本さんが撮影。

海を遠く越えた憧れの国。もしそこへ訪れるとなったとき、誰もが一生心に残るような時間を重ねたいと思うのではないだろうか。そんな旅行者のさまざまな期待と少しの不安を受け入れ、旅を満喫できるようにサポートするのがツアーコンダクターの仕事である。花本さんは、大手旅行会社のツアーコンダクターとして 18年のキャリアを積み、2009年12月、自分の会社を立ち上げた。大人の女性のかわいらしさがしぐさや表情に自然と表れる、魅力的な人だ。

「私の独立は、思いつきから始まったんです」
こんな、どきっとするようなことを花本さんは清々しい笑顔で言った。「昨年の誕生日を迎えたとき、ふといまの仕事をあと何年続けられるだろうと思ったんです。多分10年は大丈夫だろう。でもその先を考えたら、不安がわいてきてしまって」

そして花本さんが選んだ答えは、独立。スタイルはフリーランスではなく、会社設立にこだわった。「やはりお客様の海外での安全を預かる仕事ですから、信頼性の高さが最も重要な条件。幅広いお客様から信用をしていただくためには、株式会社であることは必須でした」

花本さんによると、旅行業界での起業を志すのは主に男性で、女性はごくわずか。また、ツアーコンダクターがフリーランスとして独立する場合、多くは派遣会社に登録し、派遣添乗員として仕事を請けることになる。時間が超不規則で収入は不安定なため、フリーランスで長く生計を立てるのは難しいそうだ。そんな事情を熟知している同僚や友人からは、「独立なんてやめたほうがいい」と反対もされていた。しかし、「不安よりもワクワク感のほうが強かったんです」と、それをあえてふりきった花本さん。もともとなりたくてなったツアーコンダクターの仕事を「天職」と自身がいうなら、この決断はごく自然な成りゆきだったのだろう。

構想から2ヵ月で会社代表に お客様一人ひとりに合った上質な旅を提案

会社名のヴァカンス ドゥ レーヴは、フランス語で「夢の休日」という意味。「せっかくの旅行だもの、最高に贅沢な旅行をしてほしい」という花本さんの願いが込められている。業務内容は、一人から参加可能なプライベート旅行を中心に、旅行の手続きからプランニング、現地での観光ガイドなどを含む旅のサポート。得意なスタイルは、"海外での上質なヴァカンス"をテーマに、お客様の希望にあったプランをつくるオーダーメイド感覚の旅だ。

花本英実さん

「はじめてのお客様は、会社員時代にお世話になっていた常連のお客様からの紹介でした。『独立したら必ずお願いするから』と言ってくださって、本当にありがたかったです」

とくに路地裏の上品なプチホテル、地元で古くから愛される隠れ家風レストラン、星付きレストランのなかでも眺めのいい部屋など、団体旅行では手配が難しいプランを実現する小回りのよさは大きな魅力。すべてにおいて、お客さま一人ひとりのペースにあわせ、当日の体調や気分でプランを変更することができるなど、柔軟性のよさも大切にしている。「今日は何が食べたいですか?」との会話から、おすすめのお店に連れて行くこともよくあるそうだ。

「会社員時代、ハードスケジュールな団体ツアーが多いことに疑問を感じていました。移動が多く、1日のうちに何時間もバスで移動しなければならなかったり、お腹は満腹なのに星付レストランで食事をしなければいけなかったり。会社側の事情としては、どうしても人気の観光スポットやレストランなどを短時間で組み込むことになるのですが、旅慣れた私でも体力的につらかった。いつかツアーにはないものを自分でつくりたい、という思いはいつもありましたね」

費用面でも、大手旅行社が海外ラウンドオペレーターを通して予約等をするのに対し、花本さんはダイレクトに行うため、旅費はかなり割安に抑えられるという。団体旅行での仕事、旅先の魅力、その国ならではの楽しさ、安全面などを知り尽くしている花本さんだからこそ実現できる上質な旅行は、紹介やクチコミを通して人気を少しずつ広げている。

高齢者や障がいのある人が満喫できる旅をつくりたい

いま、花本さんは月の半分を海外で過ごし、残りの在日期間で営業、お客さまとの打ち合わせ、旅行のプランニング、チケットなどの手配、出発当日までの準備業務などをこなす。「出発前日にプランの変更や希望等をリクエストされることも少なくなく、徹夜明け状態で旅行に出ることもあります。限られた時間をうまく配分させることが課題ですね。将来的には、国内外で活躍するフリーのツアーコンダクターの方と一緒に組んで、仕事の幅を広げたいです」

また営業活動として、お客さまとの信頼関係を深めるために、海外からもエアメールを出したり、日本で定期的に電話をしたりと、いつもお客さまと関わる努力も欠かせない。「何日も一緒に海外で過ごすわけですから、友人のような関係にならないと難しいんです。だから、お客さまとは一生お付き合いするつもりで接しています」

まさに多忙を極める毎日だが、仕事のボリュームや収入的には会社員時代とほぼ変わらないラインをキープできているという。体力的には確かにハードだが、自由に思ったとおりの旅行をつくれるのは何よりやりがいがある。「独立してから、楽しくてしかたがないんです」という花本さん。胸のなかには、これから先の夢を実現するためのアイディアがいくつも眠っている。

花本英実さん「お年寄りや障がいをもった方々が安心して旅を楽しめる個人旅行をつくりたいですね。海外ウエディングや異業種企業とのコラボ、若い人に向けた個人旅行のセミナーなど新しいことにも挑戦したい。いまは既存のお客さまと確実に信頼関係を築いていくことが最優先なのでまだ先のことですが、少しずつ始めていきたいです」

花本さんのお仕事道具

vol41_3.jpg旅の大事な相棒であるスーツケースは、使用頻度が高く、壊れて修理に出すことも多いため2個常備している。とても軽く、ふたを開けたときも場所をとらないソフトケースを愛用。落とされても割れないように強度も強い。中身は、衣類・靴、日用品、薬少々と湿布(ヨーロッパにはない)、アロマオイル・入浴剤などの癒しグッズ、ラベンダーかローズの香り袋を必ずスーツケースに入れ、旅先でも香りを楽しむ。

ある一日のスケジュール

07:00 起床
08:00 ゆっくりと朝食
09:00 海外からのメールチェック
10:00 郵便局、銀行、買い物に行く
11:00 国内からのメールチェック
12:00 ランチを兼ねて、お客様と打ち合わせ
14:00 企業で旅行説明会を行う
16:00 海外最新情報をチェック
17:00 ホテル、貸切バス、列車等の予約など、旅行手配業務を行う
19:00 夕食
20:30 音楽やDVDを鑑賞しながらリラックス
22:00 入浴
23:00 読書
01:00 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

海外添乗専用に愛用しているオーダーメイドのバッグ。収納力があるうえ、簡単にスリの手が入らないようなデザインが施されている。「本人も開けづらいのが難点ですが(笑)、安心のほうが大事!」。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

独立後してよかったこと、大変なことは?
よかったことは、すべて自分の思ったとおりにできること。お客さまをイメージしながらプランニングしているときが一番楽しいですね。自分が作った旅のプランでお客様に喜んでいただけるのは本当にうれしい。個人旅行ははじめてというお客さまから、「こんな風に自由な旅行をするとやめられないね」と言われたときは感動しました。大変なのは、会社にはクレーム専門部署があるように何かあっても会社が守ってくれますが、いまはすべて自分の責任にかかってくるという点で体力的、精神的にとてもハードです。また、会社員時代は失敗しても、落ち込んでいても給料は入ってきますが、独立後は自分の動いた分だけ。その辺が難しいし、おもしろいところでもあります。
仕事のために長く継続していることは?
月の半分は海外が基盤なので、時差対策は必須。どんなに忙しくても、帰国した翌日は日本の時間にあわせて起床し、活動するようにしています。そのため、ひどい時差ぼけで困ることはありません。また睡眠も最低6時間は維持します。不規則な仕事のため、野菜、フルーツ、ヨーグルトなど身体にいいものをとるようにも気をつけています。仕事の合間などには旅行関係の雑誌や書籍、ネットや人との会話から情報収集をしたり。普段から美しい料理、空間、音楽、美術品などにふれて五感を磨くことも大切にしています。
壁にぶつかったときの乗り越え方は?
とにかく一度、頭の中を白紙にします。そして夜「明日から私の人生が始まる」と思うようにしてモチベーションをあげるんです。困難にあったときも、未来に向けたほうが前向きな解決策が見出せます。また、モチベーションを維持するために毎朝、「今日が人生で最初の日」だと思うようにしています。
それでも決断に迷ったとき、悩んだときは?
自分とは異なる世界の人を探して相談します。同じ業界の人と話すとグチになってしまいますが、別の世界でがんばっている人だからこそ得られる意見は貴重。新しい発見や打開策が見つかるときもあります。
独立を迷っている人へアドバイスを
安定した生活を手放し、新しいことを始めるのは勇気が必要です。失敗するかもしれませんから。独立は、思い切って、いま持っている綱から手を離して、次の綱に飛び移るオラウータンのようなもの。勇気をふり絞って先に進んでみると、見えてくる世界が違ってきます。知りあう人も変わってきます。やるかやらないかで将来は大きく変わってくるし、やってみると世の中なんとかなるものです。目標に向かって行動することが大事。旅行業に携わるなら、海外はやっぱり数多く見たほうがいい。語学は慣れ。何回使ったかによって実力に差が出てくるし、実際に使わないと慣れることもできません。

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