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April 07 2012

Vol.74 サステナビリティ活動家 丹羽順子さん

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Profile

1973年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業後NHKの報道記者として3年間勤務した後、フリーランスで映像制作の仕事に携わる。その後、イギリスの大学院で「持続可能性とリーダーシップ」を1年間学び、帰国後はサステナビリティーを軸に活動を開始。古着の交換会「xChange」や鎌倉を持続可能にする「NPOかまわ」の立ち上げに関わるなど、新しい社会のデザインづくりに積極的に取り組む。2010年より、J-WAVE「LOHAS SUNDAY」のナビゲーターを担当していたが、2012年3月より、地球を感じる世界放浪の旅をスタートする。オーガニック育児雑誌『クーヨン』で「旅するママの地球で子育て」を連載中。

丹羽順子さんのサイト
「koko online」

ライフスタイルを根底から見直した先にあったのは「旅」だった

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香川では、福島原発の近くで放射能汚染にさらされている子どもたちを原発から少しでも離れた場所に呼び、自然遊びを中心に夏休みをのびのび過ごしてもらう「おいでプロジェクト」や、のびのびした子育て・子育ちをシェアする場として「のんたん幼稚園」を開催した。「子どもたちが本当に美味しそうにごはんを食べるんです。決してご馳走ではないんだけど、実りを感じる豊かな食生活がこんなにも人間を生き生きとさせてくれるんだって実感しましたね」

「去年の3.11以降、働き方、住む場所、お金との付き合い方など、いろんなことが"この先どうなっていくんだろう"という迷いの中にある。今こそ常識を疑って考え、行動すべき時だと感じているんです。手探りの部分もありますが、それが周りから見れば、常識的な"働き方"とか "社会との関わり方"というのとはすごく真逆な方向へ進んでいるかもしれません」と話すのは丹羽順子さん。

 震災をきっかけにそれまで暮らしていた大好きな鎌倉を離れ、西日本を転々として香川県に行き着いた。しかし、その当時からしばらくの間は、海外に拠点を移すことは決めていたそう。

取材当時(2011年12月)、東京と香川を行き来しながら、J-WAVE「LOHAS SUNDAY」のナビゲーターやエコイベントの司会、講演会、執筆などさまざまな分野で活動していた丹羽さんだが、それもあと少しだと話す。「今の仕事の大部分を手放して、家族で旅に出ます。いろんな国を訪れて、できるだけ無銭旅行に近い感じでね。生きること、命を輝かせるってことを一番に考えて、原点回帰の旅に行こうって決めたんです」

フリーランスという働き方では、仕事関係や人とのつながりが重要になってくる。これまでに築いた仕事の流れを断ち切って旅に出ようとする丹羽さんの生き方はとても自由奔放に見える。しかし、うちに秘める信念は強い。

妊娠・出産をきっかけに、本当にやりたいことだけやればいいと気づいた

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丹羽さんの信念の1つに「walk and talk」という言葉がある。「(自分が)話している道を歩みなさい」というものだ。肩書きや年収ではなく、実践している人こそ信頼でき、それが丹羽さんの中の評価基準になっているという。

大学卒業後、NHKで報道記者をしていた丹羽さんは、当時ネットのグローバル化などにより個人メディアに関心を持ち始めていた。昔から思い立ったらすぐ行動に移すタイプだった丹羽さんは3年間務めたNHKを辞め、フリーランスで映像制作の仕事に携わった。しかし、意気込んでフリーランスになったものの、NHKという看板がなくなった丹羽さんは、何度も「こんなはずじゃなかった」という経験をしたという。

「極端な性格で、一度これをしたいと思うととことん突き詰めるタイプ。本当に深く考えずに辞めちゃったんです。貯金がどんどん減っていくし、フリーランスって結構大変なんだ、立て直さないとまずいなって思った時に奨学金が取れてロンドンに留学することになりました」

留学は丹羽さんとって大きな転機となった。元々関心のあった環境問題を学び、サステナブルというライフワークのテーマに出合えた。また、多くの友人にも恵まれ、触発されたという。ハンガリーの友人は自国でNPOを立ち上げ「Buy Nothing Day(無買日)」という消費を考える活動をしていたり、アフリカの友人はエイズ撲滅の活動をしていたり。彼らは、政策に頼った小手先の環境活動や政府への批判ではなく、自分でできる1つの行動を起こすこと、自分の暮らしに関わる身近なところからの環境活動をすでに実行していたのだ。

もうひとつの転機は、妊娠・出産を経験したことだった。「この世で、これ以上クリエイティブなことはないって思いました。命を司って、親から子へと命をつないだわけです。これ以上、自分がやらなきゃいけないことはないと思ったら、なんだかとても気持ちが楽になって、やりたいことを自由にやればいいじゃないって思えたんです」

本当に必要なものだけあれば、あとは勇気を出して手放す

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「私もまだまだ修行中の身です。でも分かっているなら勇気を持って手放す。それが一番大きな修行かもしれませんね」

そうした転機を経て、丹羽さんは「small is beautiful(小さいことは美しい)」をモットーに、本当に必要なものだけで暮らすシンプルな暮らしを実践してきた。今あるものだけでなんとかしようと本気で思えば、そこに工夫が生まれ、充分に幸せだと感じられる豊かな暮らし。2007年に古着の交換会「xChange」をはじめたのも、そんな想いから。

xChange」は、着なくなったけれど捨ててしまうにはもったいない服や靴などのファッションアイテムにエピソード・タグをつけて持ち寄り、無料で交換し合うパーティだ。続けて開催しているうちに活動が広がり、今では全国各地で開催されるようになった。「今日の洋服もすべてxChangeで交換したものなんです。ここ数年、洋服は買ってないですね。田舎では食べ物も物々交換なんて日常のことなんですけどね(笑)」と、丹羽さん。

環境問題というと自然環境を連想するが、本当の環境問題は、「自分のまわりの環境」にあるという。自分にとって心地よい状態をキープするために、「時間」という限られた資源をどう使うか?を一人ひとりが考え、実践することが大事だという。

「今はあれもこれもって欲張ってはいけない時代だと思うんです。それを考え直す時に今きているんだと感じています。私の場合、今は家族や子どもとの時間が一番大事なんです。back to basicsの精神で、当たり前のことを当たり前にする生き方を追究し、地球の美しさを感じながらしなやかに生きることで命を輝かせたい。そのために、今旅に出ようと決めたんです。もちろん、日本にいてもできることかもしれないけれども、どんどん小さくなっていく世界の中で、日本に住むことにこだわらなくてもよいのかなって」

もちろん、収入の不安が全くないわけではない。しかし、老後の蓄えの心配よりも、「今ここ」を大切に、自分の道を歩いて生きていきたいと目を輝かせながら話す。

丹羽さんの旅は、今、始まったばかりだ。

丹羽さんの著書『小さいことは美しい〜シンプルな暮らし実践法

vol74_4.jpg本のタイトルは、1973年に出版された古典的名著『スモール・イズ・ビューティフル』に由来している。「より大きく、より早く、より安く」という行き過ぎた経済のあり方を痛烈に批判し、身の丈にあった小規模なスケールの経済や科学技術が大切だと説いた本で、その理念を誰にでもわかりやすく伝えたいという想いで執筆したという。

丹羽さんのお仕事兼旅道具

vol74_5.jpg「旅に出る前に一眼レフのカメラを新調し、あらたな表現に挑戦中。写真に感動をおさめる前に、まずはその場をたっぷりと味わい、心と記憶にしっかり記録させてから撮影するようにしています」(丹羽さん)

ある一日のスケジュール

旅の途中のため掲載なし

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

ヨガの先生に教わった深呼吸のやり方で、「深い呼吸」をして毎日少しずつ身体のチューニングを心がけています。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

今回は、取材中、印象に残った丹羽さん語録をご紹介!


●自分にとって、命を輝かせることは何か

生きることは「命を輝かせる」こと。私の一番の贅沢は、家族や子どもたちとゆっくり生活したり、手作りをしながらていねいな暮らしを楽しむ時間。この充実感が命を輝かせてくれます。フリーランスだと、生活ありきの時間の過ごし方を選びやすいという面はありますよね。


●すべての常識を疑ってみる

肩書きや年収、プロジェクトの数、フォロワー数などで人を判断したり、メディアからの情報に頼る世の中では本当に自分に必要なものが見つけにくい。今の流れに乗っかっているだけでは何も変わりません。


●仕事選びの基準は、わくわくするかどうか

ステータスや名誉、肩書きに惑わされず、自分自身の評価軸をしっかりと持ち、わくわく度数の高い仕事をやらせていただくようにしています。


●勇気を出して手放してみる

何もかもを手にしようとすると大事なものを掴めません。本当に必要だと思うものだけを選択して、他のものは手放す勇気を持つことが大事。ぶれない軸を持ち、貫くことが、後々になって仕事に跳ね返ってくるということもあると思います。


●当たり前のことを当たり前にする

「働く」という言葉は、大和言葉で「傍(はた)を楽にする」という意味があります。田舎で生活してみると、食べる、寝る、子どもと遊ぶ、近所の人とおしゃべりを楽しむなど当たり前の生活そのものが「働くこと(=傍を楽にすること)」だと実感します。

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