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December 28 2012

Vol.83 MOONSOAP代表 滝井みおぎさん

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Profile

1974年生まれ。明治大学農学部農芸化学科卒業後、タイ料理レストランの厨房で2年勤務。その後タイに渡り、雑誌編集やレストランの仕事をしながら半年ほど暮らす。帰国後は派遣社員として広告代理店、IT企業で働きながら、趣味で石けんを作りはじめ、2004年から「MOONSOAP」をスタート。プライベートでは3児の母。

滝井みおぎさんのサイト
「MOONSOAP」

趣味で始めた石けんづくりがライフワークに

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ローズマリーやジンジャーの精油が入った、エキゾチックでスパイシーな香りが人気の「Malaika マライカ」。100g 880円。●購入はこちらから→

パレンケ、シシリー、マライカ、シャンハイ......。古代都市や現代都市の名前がつけられたナチュラルソープ「WORLD SOAP」。その土地にゆかりのある植物オイルとハーブを使い、じっくりと作りあげられたソープは、「MOONSOAP」設立当初からの定番品だ。クリーミーな泡とうっとりするような香りに包まれながらそっと目を閉じると、まるでその土地へ異次元ワープするような感覚に陥る。


「五感が喜ぶシンプルケア」をコンセプトに、天然原料のみを使い、顔はもちろん、全身に使える石けんやコスメを製造・販売している「MOONSOAP」代表の滝井みおぎさんは、ナチュラルソープの魅力をこう語る。

「使用する植物オイルは、生命の源である種子の栄養をたっぷりと含んでいて、それぞれ有効成分が異なります。MOONSOAPでは、食べ物を選ぶのと同じ視点で植物や素材を厳選し、原料の有効成分を壊さない昔ながらのコールドプロセス製法にこだわり、ひとつひとつ手作業で石けんを作っています。防腐剤や着色料、香料を一切加えず、植物の力を生かして品質安定性、機能性を実現させました。どんな方にも、心地よく楽しみながら、安心して使っていただけるものを作っています」

滝井さんが石けんづくりを始めたのは、友人から勧められて石けんシャンプーを使ったのがきっかけだ。「敏感肌でどんなシャンプーを使っても頭皮トラブルが治らなくて。あるとき、石けんシャンプーを試してみたら、頭皮の状態はよくなったのですが、髪の毛がゴワゴワして使い心地がイマイチだったんです」。農学部出身で、元々手やからだを使ったモノづくりが好きだった滝井さん。さっそく大学で学んだ有機化学の教科書と手作り石けんの本を参考に石けんづくりにチャレンジしてみた。できた石けんは想像以上に出来がよく、頭皮も髪も満足のいく状態に。これに味をしめた滝井さんは、石けんづくりにどんどんはまっていった。

「欲しい仕上がりのテクスチャーに合わせて、レシピの配合を変えたり、植物オイルを変えてみたり。実験感覚で楽しかったですね。はじめは牛乳パックで作って友人にプレゼントしていたのですが、すぐになくなってしまうので、次第に無印良品の衣装ケースで作るように。すると、さすがに使いきれないので、仕事が休みの日にアースデーなどのイベントやアートマーケットなどで販売するようになりました」

生産拠点をもとめてタイへ......

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生産、流通に関わるすべての人を大切にし、一つ一つハンドメイドで丁寧にモノづくりを行なっている。

石けんづくりがライフワークになりつつあったあるとき、滝井さんは、石けんを製造・販売するためには薬事法の規定を満たす必要があることを知る。「国内の工場に発注することや、自社工場を持つことも考えましたが、かかる費用を考えると現実的ではありませんでした。さらに調べていくと、海外生産で一定の検査をクリアすれば販売できることがわかって。真っ先に思いついたのがタイでした。タイには自然のものでケアするという考え方が根底にあり、ココナッツオイルや米ぬかオイル、レッドパームオイルなど石けんの原料が豊富にあります。タイに半年間滞在したことがあり、言葉や文化にも親しみがあったので、すぐにオリジナルのレシピで石けんを製造してくれる工場を探しに現地へと向かいました」

そこで、少人数経営の小さな工房とパートナー契約を結び、製造場所を確保した滝井さん。はじめは品質が安定しなかったり、輸送中のトラブルなどで苦労したりもしたが、その都度、話し合いによって問題を解決し、互いの関係を深めてきた。

また、タイでの生産を始めたタイミングで、滝井さんは有限会社を設立した。「MOONSOAP」という名前は、手作りの石けんの黄味がかった白色の有機的な質感が、月の表面と似て見えたのが由来なのだそう。資金に余裕がなく、はじめはロゴやパンフレット、Webサイトづくりはすべて自分で行った。苦手な電話や飛び込みで商品の売り込みもしたという。

転機となったのは、実際のユーザーの中にライターさんがいて、ANAの機内誌『翼の王国』中で「WORLD SOAP」が紹介されたこと。そのときに初めてたくさんのオーダーが入ったのだそう。それ以降も、人と人とのつながりの中でゆっくりとファンの数を増やしてきた。

滝井さんが、設立当時から変わらずに大切にしていること。それは、「MOONSOAP」の原点でもある、お客さんと直接話せるイベントへ出店することだ。「イベント自体は赤字で終わることも多いですが、お客様の意見や反応を直接みることができるのはとても貴重ですし、そこでの出会いがいろいろな方面に発展していくことがあります。こうした等身大でできる営業方法が自分にはあっているのかも、と感じています」

素材をつくることにもいつかチャレンジしたい!

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2012年12月に満を持して発売された「Bio Perfume」。調合が難しい希少な天然植物エッセンス100%で、トップ、ミドル、ラストの表現を実現した新アイテム。●詳細&購入はこちらから→

設立8年目となる「MOONSOAP」。現在は、タイでの生産に加え、日本でも工房を構え、数人のスタッフとともに商品開発を行なっている。その間、滝井さんは3児を出産。育児と同時進行のなか、「MOONSOAP」という会社やブランドも一緒に育くんでいきた。

はじめは石けんのみだった商品も、ヘアケア、バスアイテム、スキンケアとラインを拡大。美容室で人気のオーガニックヘアワックスは、3年の月日をかけて美容師と一緒に開発したものだ。また、2012年12月に発売されたばかりの「Bio Perfume」は、天然原料だけでトップ・ミドル・ラストの表現がある香水を作れないかと自ら発案したプロジェクトが形になったもの。決して焦らず、妥協せず、納得するモノを作る。経営者でありながら、職人マインドを持ち続けて、つねにモノづくりと向き合ってきた。

「自分とまわりの人たちが欲しいと思うもの、プレゼントしたいと思うものを作りたいんです。そして、フェアトレードであることを心に決めて日々取り組んでいます」

「いつか素材を自分たちでつくる」ことにもチャレンジしたいと話す滝井さん。「化粧品は化学製品に分類されたりしますが、オーガニック・ナチュラルコスメは農業加工品です。だから、今のモノづくりを農業や土づくりにもつなげていきたいと思っています。嫌気性菌を使った土地改良剤やナチュラルハーモニーの河名秀郎さんが提唱する自然栽培、粘土団子でアフリカの大地の緑化を行った福岡正信さんの自然農法などに興味があり勉強中です」

vol83_3.jpg最後に、滝井さんにとって、石けんやコスメづくりとは何か?を聞いてみた。

「収入を得られなくても、ほかの仕事をしながらでも続けていきたいことでした。たとえ"稼ぎ"にならなくても、"自分の仕事"だと感じたことを続けていれば、なんらかのかたちで必要とされるときがきっとくると思います」

滝井さんのノートには、「植物原料だけで作ったカラーリップを作る」「コールドプレセス製法でクリームソープを作る」など進行中のプロジェクトへの試行錯誤の様子がびっしりと書き綴られていた。「MOONSOAP」を率いるトップランナーとして、滝井さんの新たなモノづくりへの飽くなき挑戦はこれからも続いていきそうだ。


滝井さんのお仕事道具を拝見!


vol83_5.jpgノートと鉛筆、調合用のピペット。ノートには、直近のTODOや開発中のレシピなどのメモがぎっしり!「娘が小学生になったのを機に鉛筆を使うようになりました。やさしい書き心地と、削りながら使っていく懐かしい感覚が気に入ってしまって(笑)」

ある一日のスケジュール

07:00 起床、もしシャキッと起きられたらヨガ
07:30 朝食
08:15 長女を小学校へ
08:30 長男、次男を保育園へ送る
09:00 カフェで新聞を読んで、今日やるべきことをまとめたり、文章を書いたり
10:00 出社
13:00 昼食
17:00 子どものお迎えへ
18:30 夕食
20:30 子どもと一緒にお風呂に入る
21:00 絵本を読みながら子どもを寝かしつける
22:00 洗濯物を干して、掃除もできればしてしまう(夜なのでほうきで)
23:00 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

心や身体の心地よさは「MOONSOAP」のテーマでもあるので、最終兵器はたくさんあります。良い香りを吸い込んで深呼吸をすること。原料探しと調合に何年もかかったビオパフュームは、6種類の天然の香水でいつもどれかを持ち歩いています。ストレスで頭ではどうにもできないときは身体のケアをします。お風呂に入浴剤を入れたり、湯船でセルフマッサージをしたり。あと何年もやっているベリーダンスやヨガなどで身体と対話することです。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

仕事のボリュームコントロールはどのようにしていますか?
納品は、もちろんなるべく早くするのが誠意ですが、近年、即日納品が普通になってきたことで、世間すべてがとても忙しくなっている気がします。石けんの熟成期間は一カ月、ひとつひとつ形を整え、手で包み、日本に届くまでに最低でも2カ月はかかります。2カ月後の在庫を予測して、フレッシュな状態をなるべく届けられるよう日々バランスを考えています。 日々の生活リズムとしては、子どものおかげで、17時以降は仕事を切り上げますし、土日もイベントの時以外は公園などで遊ぶので仕事ができないのは結果的に良いことなのかもしれません。いつももっと仕事時間が欲しい気分ですが、子どものおかげでちょうどよいボリュームで仕事をしているんだと思います。
自分の仕事スタイルを確立するために、大事なことは?
周りの人々の理解なしにできないことなので、大事にしたいと思うことを伝えるようにしています。スタッフには、会社の方向性として関係のありそうな映画や本を勧めたり、日常的に会話をするように心がけています。借金をしないこと、自分が責任をとれないほど事業を大きくしないことが自分に合ったスタイルだと思っています。
自身のスキルアップのために続けていることはありますか?
今は子どもたちが小さいので、読書や勉強する時間はほとんどありませんが、新聞と世界の時事がわかる雑誌『COURIER JAPON』は時々読みます。語学の勉強もしたいですが、タイの工房の人たちとのやりとりは語学スキルよりも物事に対する価値観などが似ていることのほうが大切だと感じています。
おすすめの本は?
ミヒャエルエンデの本が好きです。『エンデの遺言』『パン屋のお金はカジノのお金とどう違う?』は、資本主義の問題性やお金の価値などを考えるうえでいつも参考になっています。児童文学でもある『モモと時間泥棒』や『果てしない物語』は面白いファンタジーですが、その中に深い洞察や哲学があります。『鏡の中の鏡』は眠くなってしまうくらい難しいですが、何か心を惹きつけられます。眠くなってしまう本というのも、時には必要ですね。
座右の銘は?
「犬も歩けば棒にあたる」という言葉がよく思い浮かびます。八方ふさがりなときはとにかく外に出て歩いてみると、何かインスピレーションをくれるもの、気分をよくしてくれるものなどが見つかります。本来の意味とは違っていますが... それから石けんの熟成には時間がかかるのと同じく「物事を寝かせる」ようにしています。今までも、解決しないことや満足のいかないことを一度寝かせてみると、解決法が見えてきたりしました。

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