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June 09 2013

Vol.86 NGOユイマール・代表 照屋朋子さん

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Profile

1984年生まれ、沖縄県出身。早稲田大学卒業後、上智大学法学科大学院卒業。大学院在学中の2007年にNGOユイマールの前身である「NGOゆいまーるハミングバーズ」を設立。NGO活動の傍ら2007〜2009年まで国際協力機構(JICA)の中国経済法・企業法整備支援プロジェクト等に従事。2011年に世界経済フォーラムが選ぶ20〜30代のリーダー「グローバル・シェイパーズ・コミュニティー2011ジャパン」の30名に選出される。現在はNGOユイマールの代表として活動中。

照屋朋子さんのサイト
NGOユイマール

高校時代に見た1枚の写真、モンゴルの子どもたちとの出会い

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「マンホールチルドレン」をあなたは知っているだろうか。日本から約3000km離れた国・モンゴルで雨風凌ぎ暖をとるためにマンホール下で暮らしているストリートチルドレンを指す。NGOユイマール代表の照屋朋子さんが、過酷な環境で暮らす子ども達の存在を知ったのは16歳の時だった。
「皮膚病を煩い髪は抜けている......そんな子ども達の写真を見てショックを受けました。その後の高校生活はボランティア活動に明け暮れる日々。活動を通じてアフリカの少年兵や東南アジアの児童買春など『世界の子どもたちに起きている問題』について知るように。さまざまな問題を知るにつれ、解決しなくては!と思い始めたんです。国際弁護士になって世界各国の法整備をするというのが当時の夢でした」

高校卒業後は早稲田大学法学部国際関係コースに進学。2004年8月、大学2年生の時にモンゴル訪問の機会に恵まれた。訪問先は現在ユイマールが支援活動を行っている孤児院「太陽の子ども達」。この出会いが照屋さんの人生を大きく変えた。
「実は、最初はどこの国でもいいと思っていたんです。世界中にいろんな問題が起きていて、全てを解決したいという想いは常々あったので。でも急には世界を変えられない、まずは一点突破だと考え原点であるモンゴルを選びました。孤児院の子ども達と1週間ほど寝起きをともに暮らしたのですが、彼らの優しさや純粋さに触れ『なんて可愛いのだろう』と感激し、幸せな時間を過ごしました。帰国後、子ども達が書いた作文が届き、私の滞在を心から喜んでくれたことが伝わってきました。双方に気持ちが通じ合っているのだな、というのが分かり本当に嬉しかったですね」。

大学でモンゴル語を学び、学生時代は1年のうち数ヶ月はモンゴルに滞在するまでにモンゴルにハマった。滞在中は太陽の子ども達以外の孤児院を訪問したり、ストリートチルドレンに直接話を聞いたりもした。それは調査や研究の対象ではなく「ただ、モンゴルが好きで子ども達に会いたい、いろんなことが知りたい」という気持ちが強かったとからだと言う。

モンゴルの子どもたちを助けるためにNGO団体を設立

モンゴルに行き続ける中で照屋さんは大きな問題に気付いた。「孤児院を卒院した子ども達の98%がマンホールに戻っていると知りました。モンゴルはマンホールチルドレンを保護する活動は活発になされているのですが、孤児院卒院後のサポートがないに等しい状態でした」大学院に進学した頃、「太陽の子ども達」の卒院生が大学に合格しているものの学費が払えずに困っていることを知った。「素直にどうにかしなくては、と思い大学院を休学し就職してお金を送金しようと思ったんです。今から考えると本当に甘い考えで......働いて個人の収入からとなるとかなり限度がありますよね、それが分かったのはお給料をもらってから。これでは意味がない、組織化しないと何も出来ないと気付きました」

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2007年にNGOゆいまーるハミングバーズ(現ユイマールの前身)を設立。大学進学のための奨学金制度を整備し、日本への来日コンサートも企画した。
「支援している『太陽の子ども達』ではアートや音楽によって自己肯定感を養う教育プログラムを取り入れています。さらに成功体験を積んでほしいと、日本でのコンサートとホームステイを盛り込んだ『太陽のコンサート』イベントを企画しました。日本はモンゴル人にとって憧れの国、頑張れば日本に行ける、奨学金制度を利用し大学にも行ける、想像できなかった人生になる。学びをサポートすることで、彼らが成長していく様子が良く分かりました」

2008年に大学院復学。2009年までは会社員もしていたため、三足の草鞋を履く年もあった。
「朝9時〜夜10時頃までは会社員、帰宅後と土日はNGO活動。ほぼ休みなく働き、大変な時期でした。どちらの活動も中途半端になっていたと思います。さらに弁護士資格取得の葛藤もありました。焦点をしぼらないと......と思っていたものの道を1本に決められないまま過ごしていました」

そんな照屋さんの心が決まったのは2011年3月11日、東日本大震災がきっかけだった。
「あの震災を通じ、人生はどうなるか分からない、後悔しないように自分がやりたいことをしようって。また、孤児院の子ども達がモンゴル国内で募金活動を行い、果てには自分達の児童手当までを寄付したいと言ってくれた。全てを差し出してくれた子どもたちの姿勢をみて、自分の小ささを痛感。NGO活動をメインにしようと心を決めました。弁護士になってからでもいいのでは?と言って下さる方もいたのですが、活動を5年間続けてみてNGOは大変有用な手段だと思いました。NGOの立場から国策にアプローチすることも出来るし、その際に法律の知見は役立てることが出来ると思いました」

ユイマール設立から6年、新たなステージに向けて歩み始める

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モンゴルの子どもたちと撮影した写真。

2012年4月からはユイマール運営にフルコミットすることになった。それが照屋さんにとって良い状況になったと語る。

「これまでも支援してくださる方はたくさんいたのですが、NGO活動1本に心を決めたことで応援の声が増え、さらには皆様からの評価も変わった気がしています。財界からの支援も増えてきました。またフルコミットすることで生活も変わりました。行動の制限がなくなり、やりたいことを優先的に考えられるように。これまでは目の前の課題にのみ注力していたのですが、5年先の計画も立てられるようになりました」。

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日本でホームステイを体験するモンゴルの子どもたち。

現在、ユイマールは複数のプロボノ(職業人が専門知識・技能を活かして行う社会貢献活動)スタッフに支えられて組織運営を行っている。今後は常駐の正職員採用も行っていきたいという願望もある。

「プロボノスタッフ一人一人にモチベーションを持って活動してもらうのは難しい。参加してくれた方がユイマールを通じて得たいことは何か、何を提供できるか......を常に考えています。有り難いことにスタッフ数は増えつつあるのですが、その分マネジメントも大変に。今は私が担っている部分を正職員に託していけるようにしたいですね。また組織としては変革期にはいったと思います。『太陽の子ども達』の支援は落ち着き始めていて、他を支援する余裕が出てきました。

今は日本の児童養護施設に暮らす子ども達についても気になっています。モンゴルと同じく日本でも施設を出た後のサポート体制が整っておらず、貧困や精神疾患等の病気から抜け出せない子ども達がいます。生活保護という福祉整備が整っているだけに問題が表面化しにくいのです。日本の問題も放ってはおけないですね。今も昔も『世界中の問題を解決したい』という想いは変わりません。まずは1点突破。どこかの施設、国。徐々に変化の輪を広げていきたいです」

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照屋さんのお仕事道具を拝見!

ノート、PC、ペンの他にビデオカメラ、携帯は3台を使用。「ビデオカメラはモンゴルの孤児院やマンホールチルドレンの様子を撮影するのに使います。携帯ですが1台はモンゴル用、2台は日本用でのネット用と電話用と分けて使っています」。

ある一日のスケジュール

07:00 起床
08:00 経営者の方々と朝食兼ミーティング
10:00 メールチェック
12:00 NGO関係者とランチミーティング
14:00 デスクワーク
17:00 帰宅。家事をしたり、読書したり、ゆっくり過ごす
21:00 スタッフとSkypeミーティング
23:00 メールチェック
01:00 就寝

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

温泉に行きリラックスすること。大分の別府温泉が特に好き。

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

ON・OFFの切り替えはどうしていますか?
NGO活動にフルコミットするまでは休みなしの生活でした。それでは心身ともにもたないと思うように。今では1週間のうち2日は休むようにしています。この前は友人に誘ってもらって静岡までお茶摘みに行きました! 良いリフレッシュになりましたね。
ワークスタイルについて家族の理解を得るのに苦労した点はありますか。
両親が私に弁護士の道に進んでほしいと思っているのは強く感じていました。だからNGOで行くと決めた際には、前もって相談はせずに「弁護士にはなりません、NGO一本で頑張ります」と結果のみ報告しました。普段は怒らない父から「絶対にダメ。必ず1回は司法試験を受けるように」と怒られましたが、仕事への姿勢をみて徐々に応援してくれるように。最近では父が寄付会員に登録してくれたんです! その時は嬉しかったですね。
プロボノスタッフのマネジメントで気をつけていることをお教えてください。
参加者がユイマールに求めていることは何かを常に考えながらマネジメントしています。やりがい・刺激・成長・楽しさ・ネットワーク。それらがプロボノをやるメリットだと思っているので、その部分を満たす経験が提供できるように努力しています。ボランティアと言えどもコミットメントは高いです。毎日1、2時間ほどの業務時間確保と、月1回の全体MTG、週1回のグループMTGへの参加のほか、最近は月2回の未来会議というのも始めました。価値観の共有、他の組織から学ぶ勉強会、お互いを褒め合うポジティブセッション等、内容はさまざまですが組織の活性化が狙いです。団体ミッションと個人の自己実現を上手く動機付けさせていくのがマネジメントのコツかもしれませんね。
尊敬している師はいますか?
経営者の小城武彦さんです。小城さんはカネボウや丸善の代表取締役を務められた方で、ユイマールサポート委員の一人として私達の活動を支えてくださっています。小城さんは普段は厳しく、簡単には手を差し伸べてくださらない方。でも昨夏、ユイマールの資金がショートし私が精神的に弱ってしまい、泣きながら電話した時に「私がついているから絶対大丈夫! まずは自然の中でリフレッシュしてきなさい。帰ってきたら作戦会議だ!」と力強い言葉をかけてくださって......。資金的に本当に苦しくて辛い時期だったのですが、その力強い言葉に救われ、経営の立て直しが図れました。
照屋さんのような働き方を目指す方へのメッセージをお願いします!
スキルやネットワーク、お金は後からついてくると思うので、まずは自分と対話し本当にやりたいことは何かを見つめてください。それが分かれば覚悟を決めて取り組めば道は開けると思います。

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