編集・ライティング

August 07 2013

Vol.88 NPO法人森ノオト理事長 北原まどかさん

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Profile

山形県生まれ。地域新聞の編集記者、エコ住宅雑誌編集者を経てフリーの環境ライターに。2005年、横浜市青葉区の住民になり、2009年1月に長女出産。同年11月、横浜市北部を中心にエコ情報を発信するウェブメディア「森ノオト」を立ち上げる。現在、編集長として育児中の女性たちとチームを組み、地域密着の活動を展開している。3.11後は足元からのエネルギーシフトを目指した市民団体「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」を発足し、勉強会やドキュメンタリー上映会などを不定期で開催。また、オーガニックコットンのブランド「メイド・イン・アース」の広報も務める。

土を耕し、種を蒔き、水をやるように、 森ノオトを育てた3年半

vol88_3.jpg地域のヒト、コト、モノをつなげる情報にこだわったウェブメディア「森ノオト」。「自然と調和した持続可能な地域社会をつくる」を理念に、2009年9月にオープンした。発信地の横浜市・青葉台は、東急田園都市線で渋谷まで30分以内。都市の顔をもちながら、車を10分も走らせれば森や田畑へも気軽に行ける。まさに自然共生・地域循環を実現したようなこのエリアを中心に、自然環境や暮らしと真摯に向きあう人、街で見つけたトレンドや魅力ある店などがサイトでは紹介されている。

初夏のある日、毎月行われる会議におじゃました。そのときの議題は、会議で最も盛り上がるという「今月のおもしろかった記事シェア会」。1カ月以内に更新された記事から、リポーター一人ひとりが印象に残ったものを選び、感想を語るもの。それに対して執筆者は、なぜその切り口で書いたのか、また取材の裏話や取材で感じたことを語る。この、語る、が森ノオトではとにかく熱い。自分の視点で、言葉で、語る。ここが森ノオトの魅力なのだろう。北原さんに「森ノオトを知ってもらうにはすごくいいから」と、会議の見学を勧められた理由が納得できた濃厚な時間だった。

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編集会議はいつも、地域のコミュニティギャラリー「ウィズの森」で行われる。ここを運営している工務店、ウィズハウスプランニングからの委託事業として「森ノオト」が始まった、いわば原点でもある。この日はリポーター8名が参加、和やかな雰囲気のなか、熱のこもった言葉が交わされていた。

現在、森ノオトの制作には約15名のリポーターが参加し、それぞれの都合や得意にあわせて記事を分担しながら運営している。立ち上げ当時は、これらすべてを北原さんがひとりでこなしていたという。 「もともとは雑誌『チルチンびと』(風土社)の編集者時代に出会った、ウィズハウスプランニングの社長とのご縁から始まりました。自然共存型のライフスタイルを実現させるためにはまちづくりが重要という先方の考えに共感しながら、もしかしたら自分のマスメディアでの経験が活かせるのでは? と思ったんです。でも、やるからには広く認知されないと意味がないので、平日は毎日更新をルール化しました。それはいまでも継続しています」

もともと編集畑出身で、個性豊かな人たちと仕事をすることが日常だった北原さん。「メディアは自分一人の視点で運営するよりも、複数の感性が集まった方がおもしろくなる」と感じていたという。サイト立ち上げ後、北原さんはお気に入りの森や地域イベント、または取材先で何か光るものを感じた子育て中の女性たちを口説き落としてリポーターとして参加してもらうように。こうした地道な行動が、いまの森ノオトの体制をつくりあげていった。

もっと自由に羽ばたくために。NPO法人化への覚悟

vol88_2今年1月7日、森ノオトはNPO法人になった。きっかけは、2011年の2周年パーティ。100人以上ものひとが祝ってくれた、その光景を目の当たりにしたとき、森ノオトが地域コミュニティとして育ったことを確信したそうだ。同時に、次のステージへ進む必要性を感じたという。「森ノオトにとって、もっと自由な環境で、発信力を強める時期がきたと思いました。スタッフに収入のある仕事へつなげることも目的でした。わたしなりの覚悟です」

法人化してすぐに取り組んだのが、記事のクオリティを上げること。まず、森ノオトの理念を理解したうえで主体的に動けるリポーターを育てるため、「リポーター養成講座(3回連続)」を開講した。講師は北原さん。企画から取材、撮影、原稿執筆、校正などリポーターに必要な技術や考え方を教えるもので、この春からリポーターデビューした女性もいる。
「記事では取材先に必ず出向くことを徹底しています。実際に相手の話を聞き、関係性を築いた記事でないと掲載はしません。取材の醍醐味は、取材を通して出会ったひととそれまでとはまったく異なる信頼関係が生まれること。みんなには自分の安全地帯から飛び出して、積極的にひとと交わってほしいし、こうした姿勢が主体的なまちづくりへのコミットにつながると思っています」

北原さんがリポーター一人ひとりに伝えているという「5W1H」の「Why(なぜ)」は、そうした思いを継承するための重要な柱となっているようだ。「"なぜ"を意識して行動することで、取材対象者がそこで活動する理由や思いがみえてきます。またリポーター自身が取材する理由も突き詰めつつ、それらがにじみ出た原稿を目指しています。取材は一期一会ではなく、地域のなかで関係性が積み重なり続いていくもの。だからこそ、取材者と取材対象者がともに奏でるハーモニーが全面に出た構成でありたい。最近は、森ノオトを通してみんなの成長する姿を見るのが楽しくてしかたないんです。幸せを感じます」

森ノオトは過渡期のもの。みんなで上手に次のステップへ進みたい。

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8月17日(土)には、法人化して初の上映会となるドキュメンタリー映画『よみがえりのレシピ』を開催。横浜市地産地消推進事業として、会場のアートフォーラムあざみ野から徒歩1分の惣菜店とタイアップ野菜や漬物の販売、監督とのコラボディナーなど企画満載。 ●詳細はこちらから>>

いつも誰に対しても飾らず、等身大で接する姿が印象的な北原さん。取材対象者ともすぐ打ち解けられるのは、地域新聞時代のスキルが生きているのかも、と話す。フリーランスになったのは成り行き、というが、得意とする「生活者視点」は、「フリーライターとして地球環境のために自分が貢献できることは何だろう」と考えた末にたどりついた答えだという。

「会社を退職時、時間や家庭に縛られずテーマに邁進する環境ジャーナリストの姿に羨望の気持ちをもったこともありました。知識や経験はそこそこあるけれども、子育て中で各地を飛びまわるのが難しい自分の能力を最大限に活かせるものは何か、追求しながら走り続けてきた結果が、今の活動につながっています」

現在は、森ノオトの仕事に大きな手ごたえを感じながらも、常に"卒業"を意識しているという。「わたしはこの活動が10年目を迎える6年後には卒業したいなあと思っています。だから、仲間たちにどう森ノオトの理念、行動、また自分の仕事や役割を引き継いでいくかを常に考えているし、こまめにアウトプットしています。森ノオトはそれぞれの過渡期に出会うもの。スタッフには、子どもが就学する頃には自分の"好き"で仕事をするために、今のうちに土壌をつくってほしい。自分のプロフェッショナルについて考えを深め、いつか上手に卒業してほしいなと思います。自分も含めて」

北原さん自身も、活動の視点が、以前は環境を守ることを目的に市民参加を目指すものだったのが、最近は地域コミュニティづくりのために環境を語る、に変化しているという。「卒業後は、さらにテーマを深めるために大学院に学士入学したいですね。最近、ようやく自分のテーマが見えてきたような気がします。憧れの大学は学費が高いので、がんばってためています! 同時に、じっくりと深く入り込むルポルタージュの世界に足を踏み入れたい。テーマは『女3代』。わたしの母世代・わたし世代・わたしの子世代の環境・社会運動や食の運動の変遷を聞き取りして、長編ルポを手がけたいです」

北原さんのお仕事道具を拝見!

vol88_5A4の紙を八つに折って使う取材ノートのホルダーは、クラウド・サービス「Evernote」の特典。また、「ほぼ日手帳」のヘビーユーザーで使い倒しているそう。「ごめんなさい。携帯のカバーがボロボロで。気に入ったものが見つからないままこうなりました」

ある一日のスケジュール

03:45 目覚ましが鳴る(モソモソと起き出す)
04:30 Facebookのチェックと発信、メールチェック
05:00 朝の一仕事
06:00 朝食準備開始
07:00 朝食
08:30 子どもを保育園へ送る
09:00 仕事開始
18:00 仕事終了
18:30 保育園お迎え
19:00 帰宅
19:30 夕食
21:30 就寝
平日はドタバタですが、毎週金曜日は「夕飯つくらなくていい日」。義母に甘えています。 休日の完全OFF日や長期休み以外は、いつも頭の中で仕事や企画がめぐっています。でも、睡眠は最低でも6時間、できれば8時間が理想です。

ピンチもこれがあればOK!私の最終兵器はコレ

「娘の写真を見ているときが幸せです。あー、かわいいなーって。ホントに親ばかなんです」。動画もよく見るそう。「まだ言葉が舌足らずだったり、一生懸命だったりかわいくて。今限定の場面を撮りためています」。メイド・イン・アースのストールは、「さわり心地が柔らかくて愛用しています」

Q&A - 自分スタイルの働き方を実現するための5つの質問

スタッフとのコミュニケーションツールは?
facebookのグループ機能を活用しています。最初はMLを利用したけど反応が悪くて。facebookは、スタッフも個人的に使っているため更新情報のチェックも容易なこと、開封チェックでスタッフ全員の閲覧状況が把握できる点が便利。返事のないスタッフには気にかけることもできます。
座右の銘は?
Think Locally, Act Locally. (Solen Hamansen)
北原さんにとって宝ものは?
まずは、娘と夫。さらに、森ノオトのリポーター一人ひとりです。本当に彼女たちそのものが「宝の原石」だと思っています。地域に眠る才能や宝物を見つけ、そこに光を当てているリポーターたち、彼女たち一人ひとりが、わたしの自慢であり、宝物です!
キャリアデザインについての考え方は?
まず自分の時間の持ち駒を把握します。平日、休日、24時間の中で、自分のために(地域のために)使える時間は何時間か、そこで何ができるのか(移動も含めて)を考えます。同時に、人生の時間割も。わたしは、10年後までの年表を書き出し、自分と家族の年齢を書き込み、進捗管理をしています。すると、今年すべきことが見え、準備すること、覚悟しておくべきこと(例えば両親が病気になるかもしれない、など)も見えて、いざという時にも慌てなくなるかもしれません。自分のライフステージで、あるべきポジションを意識するのです。森ノオトは「子育てしながら参加できる」ものでありたいので、50代になってまでやるべきものではない、と思っています。
北原さんのような働き方を目指す人へアドバイスを。
「苦手な人の10時間より得意な人の1時間」のほうが、何事もよいものができると思っています。だから、自分の力が最大限に発揮できることは何か、それを考えてほしい。好きなことならば、多少は無理をしてもがんばれます。でも、苦手なことをイヤイヤやっても、いいものにはならないと思います。

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