第4回 数字で見る生活保護

生活保護問題が、嫌なかんじで続いています。
収入たくさんある芸人のくせに、親の面倒くらいちゃんと見ろ、不正受給が横行していてけしからん、そんなにもらえるなら働きたくない、などバッシングからマッチョな正論、得したい感表出という世論の流れが作られつつあるような。制度の問題を追及するために野党議員が標的にしたのが人気芸人で、結果的に個人の事情や、不正のやり口など「面白いこと」が注目され、本来の問題点から目がそらされている、という気がしないでもありません。お金、特に国からの給付金など「もらえるお金」に関することは、損か得か論争になった方が盛り上がりますからね。

裏返すと、私たちは生活保護制度のことをどれだけ知らないか、ということだと思います。知らないから、誰かがなんだか得してるらしい、ということに過剰反応してしまうのではないでしょうか。
ということで、スマートにお金と向き合いたい私たちとしては、なるべく冷静に事実を知っておきたいもの。あまりに複雑で深い問題ではありますが、理解できる範囲でまとめてみます。

生活保護制度とは?


生活保護は、憲法25条に規定された生存権に基づき、「健康で文化的で最低限度の生活」を保障するための制度。年金と同様社会保障制度による給付金で、低所得により貧困に陥るのを防ぐ、最後のセーフティネットの役目を担うもの。

誰がもらえるのか?


国が決めた「最低生活費」以下の収入しかなく、現金や貯金もわずか(最低生活費の半月分相当)で生活に困窮している日本国民。外国人は永住者、定住者、日本人または永住者の配偶者等のみ。居住地がない(つまり路上生活)と受けられないということはない。

最低生活費とはどれくらい?


地域や年齢で細かく決められているが、家賃・医療費・介護費を別にした生活費が1人暮しで6~8万程度、2人で9~12万円程度、3人で12~15万程度がおおまかな目安。
2009年、国民の所得の中央値の半分である貧困線は112万円で、相対的貧困率(貧困線に満たない世帯員の割合)は16.0%で、収入金額では、単身世帯では月収9万3千円未満、4人世帯で18万6千円未満となり生活保護基準とさほど変わらない。
ちなみにOECDが発表している2000年代半ばのデータによると、日本の相対的貧困率14.9%はOECD30カ国中4位
※生活困窮者のサポートをしている「自立生活サポートセンター・もやい」サイトの「生活保護自動計算」ソフトでは、自分の最低生活費を算出することができます。http://www.moyai.net/

実際にどれくらいの人に支給されている?


2009年度の受給世帯は約127万世帯、176万人で、世帯類型別の内訳は、高齢者世帯44.3%、傷病者・障害者世帯34.4%、母子世帯7.8%、その他の世帯13.5%。1975年度を100とすると、高齢者世帯254.5、母子世帯141.8、その他世帯189.2と増加している。2011年7月の利用者数は約205万人。

生活保護が必要な人はどれくらいいる?


厚労省の国民生活基礎調査(07年)を元にした推計によると、生活保護の水準以下の低所得世帯は337万世帯で、貯金を保有しない家庭は約229万世帯。このうち保護を受けている家庭は約108万世帯で、受給している率は32.1%。このような捕捉率についての国が公表したのは初めてで、それまでの研究者の調査では捕捉率は15〜20%とされている。諸外国の捕捉率、スウェーデン82%、アメリカ59.1%、イギリス47%などに比べ著しく低い

不正受給が増えている?


2006年度1万4669件、2009年度1万9726件。09年度内訳は、被保護世帯数127万世帯の1.54%。不正受給金額は102億円で、生活保護費3兆520億円に対し0.33%。


ふぅ。いかがでしょうか。
制度と現状のおおまかな部分をかいつまむだけでも、ナーバスで難しい問題が横たわっていることが想像できます。
それにしても全体をとおして感じるのは、「日本は経済大国のはずなのになぜこんなに貧困率が高いのか。生活保護の捕捉率がなぜこんなに低いのか」ということ。特に女性が関わる統計では、世界の中でだいたい下位にいるのです。そして標準的な世帯(正規雇用の夫、専業主婦の妻、子)から外れると、いきなり困窮する要素が満載のこの国。生活保護のほんの一部分に目くじらを立てている場合ではないのです。

独断的「わたしとお金」本棚-4


『現代の貧困』 岩田正美 (ちくま新書/2007年)

ikiteiku_vol4.jpeg「ワーキングプア/ホームレス/生活保護」というサブタイトルのとおり、近年日本の貧困テーマについて、多角的に調査分析しています。格差社会とか豊かさによる病理みたいなキャッチーなものにまぎれて、貧困問題を「ない」ことにしてきた、という指摘。3章 現代日本の「貧困の経験」、5章 不利な人々など、貧困が遠いものじゃないことを突きつけられます。

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<出典>
自立生活サポートセンター・もやいHP
厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査の概況」
生活保護問題対策全国会議のブログ
平松茂『Q&A貧困とセーフティネットの基礎知識』
厚生労働省「平成21年版厚生労働白書」
国立社会保障・人口問題研究所「生活保護に関する公的統計データ一覧」
「生活保護の総合情報」
湯浅誠『反貧困』

Rhythmoon編集部

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