第8回「専業主婦と共働き、どっちが得?」を数字でみる

このところ、おもに欧米で、「仕事と家庭の両立は無理か」論争が持ち上がっているようです。きっかけは、プリンストン大学の教授で、国務省政策企画本部長を務めたアン・マリー・スローターが米『アトランティック』誌に発表した「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」という記事。激務をこなしながら家事労働しても評価されない、両立は無理、と国務省を辞めて子育てに専念する、という内容が大きな反響を呼んだためです。これに反発したフェイスブックのCOOで2人の子育て中のシェリル・サンドバーグ、さらに妊娠中でヤフーのCEOに就任したマリッサ・メイヤーの例などもあり、エグゼクティブの両立問題がクローズアップされているようです。

日本でも『クーリエ・ジャポン』で取り上げられ、ネット上で一時期見かけましたが、あまり議論になっている様子はないですね。そもそも日本は女性のトップリーダーや管理職がほとんどいないので、共感できる人が少ないのかもしれません。何しろ管理職に占める女性の比率は、日本は134カ国中109位、先進国では際立つ低さなのですから。

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そんなわけで、スローター論争が今ひとつピンとこない日本女性が気になる論争といえば、「専業主婦と共働き、どちらが得なのか」ではないでしょうか。シングルも、結婚後でも子育てしていても、20〜30代女性と話すと、すぐそんな話題になります。若い女子に専業主婦願望が強くなってるとか、扶養控除の範囲で働くのがおいしいとか、そんなところから「妊娠したら退職して、子育てが落ち着いたら無理のない範囲で働く」というのがたぶん一番お得なんじゃないか、という流れになっているような気がします。

ほんとにそうなのか。 あくまでお金の面のみ、数字上から読み解いてみることにします。

まず専業主婦について。色々なデータがありますが、『「婚活」時代 』でおなじみの山田昌弘氏のわかりやすい調査がありました(明治安田生活福祉研究所「日本の未婚者の実情と、「婚活」による少子化対策の可能性」2010年)。これによると、「結婚後の女性の理想の働き方」について問われると、女性の28.7%が専業主婦と回答。パートが1位で37.8%、フルタイムは20.6%です。「結婚後の家計は夫が支えるべきだ」という考えについては72.3%、「子どもが小さいうちは母親が育児に専念すべき」66.6%ですが、これはどちらも男性よりも高いポイント。さらに相手に望む年収は、400万円以上が67.9%と大半を占めます。「ダンナが稼いで、私は家で子どもをみていたい」という女性の専業主婦願望がくっきり浮き彫りです。
しかし、この調査の男性の平均年収は、25〜29歳277万円、30〜34歳345万円で、400万円以上の独身男性は25.1%しかいません。夫の収入だけで理想の暮らしをするというのは、大変な狭き門のようです。

そうはいっても、「少しだけ働いて、ダンナの扶養家族になるのがお得じゃない?年金も払わなくていいんだし」という声も多そうですね。これは税金面での「配偶者控除」と、年金の「第3号被保険者」、健康保険の「被扶養者」がそれぞれあって、受けられる基準も微妙に違うのですが、まるっというと3つとも何かしらの恩恵にあずかるには、妻の年収は、130万円未満(ざっくり、ですよ)。少し超えて、健康保険料、年金保険料を払い、夫の所得税も増えてしまうくらいなら、基準内に収める方がいい、というのがお得派意見でしょう。

しかしこれも、今までは、の話です。例えば、3号被保険者の要件は「第1号被保険者の被扶養配偶者」ですから、厚生年金や共済組合に入っているサラリーマンや公務員の妻、ということになります。第1号、つまり自営業やフリーランス、また契約社員や派遣社員など、厚生年金に入れない人もNGです。2011年の統計では、25歳〜34歳男性の雇用者のうち、15.2%が非正規と、今や少なくありません(総務省統計局「労働力調査」)。

あるいは税制がコロコロ変わっているので、所得控除についても、今年から年少扶養控除が廃止されたように、配偶者控除もいつまであるかわかりません。3号問題は今回は見送りでしたが、年金制度改革の原案では「3号被保険者の廃止が柱」とされていましたから、次には手をつけられるかも。
厚生年金適用拡大や、有期労働契約が無期に変わるルールができるなど、働く環境も刻々と変化しています。意識の方も柔軟に、何が自分にとってお得か、見極めていくのがよさそうですよ。

<参考文献>
・アン・マリー・スローター記事原文
Why Women Still Can't Have It All

・「クーリエ・ジャポン」編集部ブログ
http://courrier.jp/blog/?p=12388
http://courrier.jp/blog/?p=12432

男女共同参画白書 平成22年版

平成23年 労働力調査年報

・朝日新聞
主婦年金廃止しサラリーマン年金に吸収 民主原案

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