譲渡することができない「著作者人格権」ってなに?

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photo by Tomomi Kobayashi

みなさん、こんにちは。弁護士の長谷川千代です。
残暑も続いていましたが、少し秋めいてきましたね。
やっと汗だくの日々から解放されるでしょうか。
ふわふわのかき氷が食べたいと思っていましたが、食べないで終わりそうです。

さて今月は、「著作者人格権」って何なのかということについてです。

著作権というのはよく耳にするかと思いますが、著作者人格権というのはあまり聞きなじみがないかもしれません。著作権法に定められている権利としては、著作権と著作者人格権、著作隣接権があります。

ものづくりをされる方は、よく契約書で著作権の帰属等について定められるのではないでしょうか。
そして、ご存知の通り、著作権は譲渡することができます。それは、著作権が財産的な利益の部分の権利だからです。
これに対して、著作者人格権は譲渡することができません。著作者人格権は著作者の人格的な権利ですから、人格的な権利を他の人が行使するわけにはいきませんので譲渡できないのです。

著作権法の著作者人格権の項目には、

  1.  公表権
  2.  氏名表示権
  3.  同一性保持権

が定められています。

それぞれどういう権利か見ていきましょう。

公表権

公表権とは、まだ公表されていない著作物をいつどのような形で公表するかを決定する権利です。
ただし、公表権は著作権を譲渡した場合等には、公表に同意したものと推定されます。また、一定の行政が提供する場合等も適用除外になっています。

氏名表示権

氏名表示権とは、著作者名を表示するかしないか、表示するとしてどういう著作者名を表示するかを決める権利です。ただし、一度著作者名を表示してからは、特に意思表示をしなければ、その表示にしたがって表示することができるとされています。
また、(1)著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害する恐れがないとき認められるときで、(2)公正な慣行に反しない限りは、著作者名の表示を省略することができるとされています。その他、一定の行政が提供する場合等も適用除外になっています。

同一性保持権

同一性保持権とは、著作物やその題号の同一性を保持する権利で、著作者の意思に反して改変を受けないという権利です。
ただし、学校教育の目的や、建築物の増改築等の目的、ブログラムの著作物をコンピュータで使えるようにする目的、そしてやむを得ない場合の改変は適用除外になっています。

そして、上の3つの権利以外にも著作権法113条6項は、

 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす

と規定しています。この規定でも著作者人格権を主張できます。

さらに、著作権法60条は、

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない

と規定しています。このように著作者が死亡しても、著作者人格権が保護されています

著作権はすべて譲渡していても、このような人格権は著作者にあるのだということを覚えておくと、いつか役に立つかもしれません。

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長谷川千代

Writer 長谷川千代

弁護士
2010年司法試験合格(選択科目:知的財産法)。第二東京弁護士会所属。現在、後藤正志法律事務所に所属しているが、独立採算型をとっておりフリーランスといえる。民事事件から刑事事件まで広く取り扱っている。
・「フリーランスのための法律相談所

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