報酬の振込手数料って負担しなくちゃいけないの?

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Photo by Tomomi Kobayashi

みなさん、こんにちは。弁護士の長谷川千代です。
寒くなってきましたね
私は1ヶ月くらい前にひいた風邪の、咳だけが残り、なかなか治りませんでした。
周りの人に聞いてみても、今年の風邪は喉にくると言っていました。
みなさんも、しっかり加湿して、風邪をひかないように気をつけてくださいね。

さて今回は、このような相談を取り上げたいと思います。

請求書に「振込手数料はご負担ください」と書いていても、報酬から振込手数料をひかれてしまいます。どうしたらよいでしょうか。(ライター・M)

実はこちらのトピック、リズムーン編集部内でも話題になりました。職種によるのか、上記の方と同様に振込手数料をひかれてしまう方が編集部内にもちらほらいたのです。

下請法の適用はありますか。

リズムーンの読者の方には、下請代金支払遅延等防止法(以下では単に「下請法」と書きます)の適用のある方が多いのかと思いますので、今回は下請法の適用のある場合を前提に書いてみたいと思います。

まずはご自身と依頼者の間に下請法の適用があるかを見てみてください。
①ご自身と依頼者の資本金や出資金の額の条件を満たす場合で、
②製造委託等を受けている場合
に適用があります。製造委託等とは、製造委託、修理委託、情報成果物作成、役務提供委託をいいます。リズムーン読者の方で多いと思われるプログラムの制作や、イラスト、記事の作成は基本的に②に含まれます。

次に、下請法の適用がある場合ですが、公正取引委員会は「よくある質問コーナー」で、


下請事業者の了解を得た上で、下請代金を下請事業者の銀行口座に振り込む際の振り込み手数料を下請代金の額から差し引いて支払うことは認められますか。

という質問に対し、

発注前に振込手数料を下請事業者が負担する旨の書面での合意がある場合には、親事業者が負担した実費の範囲内で当該手数料を差し引いて下請代金を支払うことが認められます。

回答しています。

ここでのポイントは質問の「下請事業者の了解を得た上で」と、回答にある「発注前に振込手数料を下請事業者が負担する旨の書面での合意がある場合には」というところです。つまり、両者の合意がないと振込手数料を差し引くことはできないということです。

公正取引委員会が上記の回答をした根拠条文は下請法4条1項3号です。その条文は以下のようなものです。

第4条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

この条文だけを見ると、下請代金を減らしてもよいのは下請事業者に責任があるような場合だけです。振込手数料を差し引くのも「下請代金の額を減ずること」にあたります
では、なぜ上記のような回答になったのかというと、両者の合意がある場合だからです。「下請事業者の了解を得た」場合や、「発注前に振込手数料を下請事業者が負担する旨の書面での合意がある場合」は、両者の合意があったと言えるので、振込手数料を引くことも認められるとしているのです。

振込手数料を差し引かれないようにするには

では、振込手数料を引かれないようにするにはどうすればよいのでしょうか。
まずは、振込手数料は親事業者の方が負担するのが原則です。立場が弱いこともあるとは思いますが、安易に合意しないようにしてください。そして、合意のない場合は、振込手数料を差し引くことを合意していないことを示すために請求書に「振込手数料はご負担ください。」と記載することも有効だと思います。

いくら言っても差し引いてくる親事業者がいた場合には公正取引委員会への申告も検討しましょう。インターネットによる申告もできます。

※この連載のバックナンバーはこちらからご覧ください。
※著者への質問も随時受付しています。こちらからお寄せください。
長谷川千代

Writer 長谷川千代

弁護士
2010年司法試験合格(選択科目:知的財産法)。第二東京弁護士会所属。現在、後藤正志法律事務所に所属しているが、独立採算型をとっておりフリーランスといえる。民事事件から刑事事件まで広く取り扱っている。
・「フリーランスのための法律相談所

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