フィンランドのキッチン事情から見える女性が活躍する社会

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マイナス10度の日中の景色

移住する前に義家族の家に泊まった時のこと。

私「あれ? 食器の水切りはどこでやるの?」
夫「ここだよ」

と、彼が指差した先はシンクの上の棚。

私「え? ここ?」

その扉を開けてみると、あらびっくり!
お皿やコップが底抜け棚に並んでいるではありませんか!

そうです。フィンランドのキッチンには水切り棚がビルトインされているのです。
これを初めて見た時、正直「棚の高さが高くて届かないし、しかも一番下の棚に収まっている食器が上に置いた食器の水で濡れてしまうのでは?」なんて思っていました。

20150205_fujiwara_1.jpgけれども、ここは北欧。日本と比較すると乾燥しやすい気候であり、室内の湿気は平均20〜30%。そして前回のコラムに書いたように室内温度は常に21度に保たれているので、1時間もすればあっという間に乾いてしまいます。洗った食器はそのままこの棚にしまっておけば自然乾燥されて、そのまま食器棚としての役割も果たしてくれるので、一石二鳥。敢えて食器棚を買いそろえる必要はありません(もちろん食器棚は売っていますし、個人的にインテリアとして楽しんでいる方もいらっしゃいます)。

食洗機とのセットで女性の社会進出を促進

そもそもこの食器棚兼水切り棚は、学校の先生が戦時中に提案して普及したのだとか。そしてフィンランドは戦後直後、人口が少ないが故に男女ともに働かなければならない社会であったために、家事の手間を省くためにもこの棚は当時から活躍していたようです。

これであれば食器を拭く、食器棚にしまう、そしてそこから再び取り出すといった食器移動の一連の流れの手間と時間が省けて、その時間を別の時間に当てられます。

また、フィンランドのキッチンには食洗機を置くスペースがだいたいの家庭に確保されており、機器もほぼ導入されているので、これとセットに使えばキッチンに立つ時間がぐんと減ります。

ちなみにフィンランドの食洗機の普及率はだいたい7〜8割程度。日本は3割程度のようで、両国の食事や生活文化が違うので一概に数字だけでは比較できません。しかし、日本女性の社会進出を促進しているのであれば、企業の育児制度や保育園の建設などに力を入れるだけではなく、こういう住宅事情、特にキッチンシステムの改善にもっと努力を注いでも良いのではないかと実感しています。

というのも、家事を助ける道具が普及しその利用率が増えるほど、女性が家事に携わる時間が減り、女性が社会へ進出して労働力に参入できるようになるということが多くの研究結果で示されているようです。日々の家事に役立つ家電や道具と政府が行う育児政策のセットで、ここフィンランドをはじめとする北欧諸国の出生率および女性の労働率の向上を促してきたといわれています。

仕事と子育ての両立に向けて

さて移住してきてこのキッチンにも慣れてきたのですが、当初は感じた「棚の高さ」を調整することはもちろん不可能です。そもそも私は背が高くないので、それを「良い言い訳」として我が家の場合は、食洗機とこの棚との間の食器移動は、夫が担当と決まりつつあります。

おかげで私がキッチンに立つ時間は日本に住んでいたときよりもぐんと減りました。これにより仕事の時間は以前よりも確保できるようになりましたが、このキッチンシステムだけで子育てとの両立が成り立つものではないですね。両方のバランスを保っていくにはやはり一筋縄ではいかないようです。

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仕事の合間に近くの森へ散歩

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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