家庭保育で補助金が出る!? フィンランドの多彩な保育サービス

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photo by Beth via flickr

前回フィンランドの子育て支援制度についてご紹介しましたが、その制度を利用しながら、実際の保育サービスはどんなものがあるのか。特に、"3歳未満の「家庭保育」への補助"については、日本ではあまり馴染みのないサービスかと思いますので、今回はこれについて詳しくご紹介したいと思います。

家庭保育とは?

「家庭保育」と聞いて皆さんはどんな保育を思い浮かべますか? 日本の家庭環境で考えると、専業主婦の母親が家で子どもを育てるということを思い浮かべるかと思います。

フィンランドの家庭保育とは、子どもが3歳になるまでは家で保育を行い、その保育にかかる費用の補助金を受給できる、例え正社員で働いていても3年間は家庭で子どもを育てることができる、3年間の育児休暇を取得する、ということです。

え!? 誰でも3年間育児休暇が取れるの?と思われるかもですが、これは現実的に可能で、企業はこの制度を利用する従業員の希望を退けることはできません。また育児休暇後の復職についても、以前のポジションを維持するか、または同等のポジションを保証しておくことがほぼ義務づけられています。

どんな立場で働いている(正社員、契約・派遣、フリーランスなど全ての)親でも、働いていない親でも、3年間、家で保育をすると補助金を受給できますから、国から育児に対する給与をもらっているという見方もできると思います。保育という行為が法律的にも社会的にも認められている福祉国家ならではの制度です。

また補助金の支給先は、厳密にいうと「家庭保育を行う両親または親族」に対してなので、例えば義家族も含めて家で保育ができる大人がいつでもいれば、母親が常にいなくても家庭保育は成り立ちます(ここでは制度を利用する上での話しです)。

なぜ家庭保育の制度ができたのか?

フィンランドでは第二次世界大戦中以前より、男女平等社会の伝統が根強くあり、戦後も男性に代わり女性の労働市場が大きく、給与所得者としての地位を確立していました。

1960年代には急速に都市化が進むと、さらに女性の労働市場が増え、子どもを持つ女性の労働環境の改善が必要になりました。

そこで1973年に保育法が制定され、自治体は保育サービスを提供し、その保育にかかる費用に対する補助金は国が給付することが定められました。これが現在の「家庭保育」です。

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実際に家で保育するということ

我が家は夫婦共々家で働いていて、家庭で育児ができる環境にありますので、家庭保育を選びました。子どもと一緒に過ごせるのは育児の喜びでもありますが、仕事とのバランスを取りながらですと、子どもの遊びのネタが尽きてきてくるので、遊びにバリエーションを持たせることが必要になってきます。そこでこうした家庭保育の子どもたちが利用できる保育サービスがいくつかあるので、それを大いに利用しています。

Ävoin Päiväkoti(オープン保育園)

我が家が一番利用しているのは、日本の児童館のようなオープン保育園です。何曜日の何時から何時まで空いているので、好きな時に行って好きなように遊ぶ。そこに保育士さんが常駐しているので、困ったことなどを相談しながら子どもの保育を一緒に見てくれる、という場所です。

基本的に親御さんと一緒に遊び、利用料は無料で、6歳児まで利用できます。特に家庭保育を利用している親御さんにとって良い息抜きの場所です。

我が家は週1〜2回ここへ足を運び、そのときに来園している子どもたちと遊んでいます。まだ我が子の月齢が小さかった頃、まわりの子どもがスプーンを使って食べているのを見て刺激を受けたのか、家に帰るとスプーンに手を伸ばして食べるマネをしたことがありました。こうしたところで家庭保育だけでは成り立たない部分が補われるのは、非常に有意義な機会だと思います。

Puistotäti (公園おばさん)

自治体と契約した保育の世話係が、担当地区内の公園で子どもを遊ばせて保育するサービスがあります。これを名付けて「公園おばさん」と呼んでいます。

歩き始めた子どもを対象に、公園内で一日数時間、公園おばさんが子どもたちを遊ばせてくれるので、ほんの数時間でも母親は大助かり! 公園内で遊ばせてケガや事故がないように子どもたちを見ているだけなので、おむつを替えたりおやつをあげたりなどというサービスはありません。
ただ、さすが北国! 真冬の間は、気温がマイナス12度以下になると子どもたちにとっては寒すぎるということで休園になります。

このサービスは自治体が運営しているので、所によっては無料と有料のものがありますが、有料の場合でも安価で利用できます。世話係は、保育士の資格保有は必須ではありませんが、契約するにあたり、一定のトレーニング(応急手当など)を受講する必要があるようです。

もちろんこのような自治体運営の保育サービス以外にも、民間企業が運営している屋外アスレチック施設や図書館、ショッピングセンターなどには子どもの遊び場はたくさんありますから、家庭保育を利用していてもいろいろな場所で保育をする機会はあります。

それぞれの家庭に合った保育サービスを

社会保険庁(KELA)の調査によると家庭保育の利用率は、0歳児は90%ぐらい、1歳児は80%、2歳児は50%、3歳児になると40%と、3歳に到達しても4割の家庭が利用しているようです。

私のまわりの知人たちも家庭保育を利用している家庭が多いですが、民間企業が運営している終日の保育園へ生後9カ月から通園している家庭もいます。

このほかにも、一時預かり保育のようなサービスや、家庭保育士と呼ばれる専門家がある家庭で数人の子どもを保育するサービス、突発的に人の手を借りなければならなくなった時に利用するナニーのようなサービスがあります。

昔から女性も働かなければ国が成り立たなかったフィンランド。そのような歴史背景から育児制度の整備が早い段階で着手されたことで、フィンランドの女性たちはその制度を利用しながら子育てと仕事のバランスを取ってきたようです。

我が家で利用しているオープン保育園の担当保育士さんが、あるときこんなことを話してくれました。

「子育てと仕事のどちらかを取るのではなく、その時、その状況に合った選択肢を選ぶことが、女性の人生にとって大事なことであり喜びなのよ」

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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