自分の経験やノウハウをいつか本にするために知っておきたいこと〜後編

前編に続き、本を出したい人と出版社のマッチングをしているNPO法人「企画のたまご屋さん」共同代表の小島和子さんに、編集者の心をつかむ出版企画書についてお聞きしました。

編集者の心をつかむ出版企画書の4つのポイント

「企画のたまご屋さん」では、所定のフォーマットでまとめられた出版企画書を、出版社の編集担当者に毎朝メールで配信しています。メールで送られてきた内容を見ただけで編集者に興味を持ってもらうには、ちょっとした書き方のコツがあります。今回は、企画書の中でもとくに大事な4つのポイントについてお伺いしました。

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1.タイトル:その本はどんな本なの?

まずひとつめのポイントは、本の顔となる「タイトル」。といっても、刺激的なタイトルや意表をつくタイトルをつけて、興味をひこうということではありません。

「企画書のフォーマットにある、タイトル、サブタイトル、キャッチコピー、本書の内容ぐらいまでで、ある程度その本の内容が分かりますよね。そこで興味を持てなければ、編集者もその続きは読まないでしょう。以前、メール配信に登録くださっている編集者にアンケートをしたのですが、『3分の2の方は"タイトルを見て良さそうであれば読む』とおっしゃっていました。その意味でも掴みになるタイトルは重要です」

出版企画書に書かれているタイトルと、実際に本になって世に出るときのタイトルとは一致しないケースがほとんど。それは企画を練っていくうちに、内容が変わっていくからだといいます。書店に並ぶ本のタイトルは読者に訴えるタイトルですが、企画書に書かれるタイトルは編集者に訴えるタイトルなのです。

「ポイントは、テーマをまっすぐ伝えるものであるかということです。タイトルの付け方というよりはテーマの選び方と言ってもいいかもしれません。商業出版なので、商品価値のあるテーマを設定する必要があります。つまり、読みたいと思う人がいるかどうかを考えるということですね。その本を読む前と後で読者はどう変わるのか、実用書なら読者が役に立ったなと思えるかどうか、そこまでイメージしてテーマを絞れれば、本の内容をそのまま伝えるだけで良いタイトルになります」

2.類書:その本はどんな棚に並ぶの?

次に、「企画意図」や「企画の背景」、「類書」で、本の商品価値を訴えます。このパートを書くにあたっては、大型書店で棚を眺めることをおすすめすると小島さんは言います。なぜでしょうか。

「類書というのは、そっくり同じ本ということではないんです。もし、そんな本があれば、2冊目を出す必要はないでしょう。類書は何かというのは、店頭に並んだときにどんな本の近くに置かれるのかということです。オンライン販売でも本のジャンルは書かれていますし、"これを買った人はこんな本も買ってます"と出ますよね。どの本と並び得るのかを類書として挙げてほしいということです」

売れる本にしていくためには、最初に企画書で提案した内容と切り口を変えていかなくてはならない場合もあります。本来、編集者なら「類書」は自分でも探せます。それでも「類書」の欄を設けているのは、読者が読みたい本、買いたい本にブラッシュアップしていくために、どんなライバルがいるのかを著者に認識してもらうという意味もあるのです。

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3.企画の背景:その本の"旬"はいつ?

こうして、新しい商品を考えているのだという意識ができるようになると、「企画意図」と「企画の背景」に書くポイントも見えてきます。

企画意図はなぜ、その本に商品価値があるのか、企画の背景には、その本を出版するタイミングがなぜ今なのかを書いていただきたいんです。同じ本でも去年では早すぎて、来年では遅すぎるという"旬"があるはずなんです。この項目をうまく書くには市場を客観的に見る力が求められますが、"今だから、この本"というところでピンと来たら、編集者もやりたいなと思いますよね」

4. プロフィール:なぜ、あなたがその本を書くの?

小島さんが企画書で手を入れることが多い項目は、実は「プロフィール」なのだそう。放っておいても出版社が取り合いをするネームバリューのある著者ではないからこそ、このプロフィールの書き方が重要なのです。

「企画書は履歴書ではないので、何年何県生まれとか、何大学卒とか、そういうことはそれほど重要ではありません。それよりも、あなたにこの本を書く価値がある理由、あなたがこの企画を出す必然性をここで示したいんですね。たとえば、つい最近の例では、独自に編み出した英語学習法の企画を出された方。この方は英語を武器にするなんて考えもしていなかった、ごく普通の会社員だったんですが、独自の学習法でTOEICを受験したところ、いきなり高得点。さらに同じ方法で通訳ガイドの勉強をしたら見事合格して、いまや給料も倍になり、通訳ガイドとして大活躍しているというんです。人生が変わったその学習法を伝えたいっておっしゃるんですけど、その方の最初のプロフィールは、正直あまり魅力的ではなかった。個性が伝わってこないんです。そこで、あなたの経験をぜひプロフィールでもっとアピールしてくださいとお伝えして書き直してもらったんです。そうしたら、4社から問い合わせが来ました」

その分野についてどのぐらい詳しいのか、本を出したいという熱い思いがあるなら、充分エピソードは持っているはず。「私しかこの本は書けない」とアピールできれば、編集者もこの人に会ってみたいと思うかもしれません。

商業出版で本を出したいと思われる方はまず、上でご紹介した4つのポイントを意識して企画書を考えてみてくださいね。

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今回お話を伺った方

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小島和子さん
NPO法人企画のたまご屋さん共同代表・出版プロデューサー)
フリーランスのライター&エディター。最初に勤めた出版社で約10年間、語学書や旅行記など、異文化にまつわる書籍を中心に編集を手がける。環境をテーマにした本づくりをきっかけにキャリアチェンジ。政府系機関やNGOで環境問題に関する情報発信に携わるなど、出版業界以外の経験も豊富。近ごろは東北復興の取材で現地に足を運ぶ機会も。共著『つながるいのち―生物多様性からのメッセージ』。

本多小百合

Writer 本多小百合

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
建材メーカーで広報誌や販促物の企画・製作・進行等に携わった後、ランドスケープ系の団体で主に機関紙の編集に従事。結婚を機に、全国どこでも働けることを目指してフリーランスライターを志し、目下独立準備中。リズムーンでは、同士であるフリーランスを目指す方を応援できたらと思っています!

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