4週間の休みが義務!? フィンランドの贅沢な夏休み

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筆者のエネルギーチャージ場所の一つとなっているコテージ近くの海辺

フィンランドは今年50年ぶりの冷夏と言われていましたが、8月に入って20度を超える日が多くなり、例年であればそろそろ秋らしくなってくる頃ですが、うれしいことにまだ夏の気分を味わっています。

そんな中、今週あたりから子どもたちは新学期、親御さんたちは普段の仕事の日々が始まります。「えっ!? もう夏休み終わり?」そうです。フィンランドの夏は短いのです! そこで今回はフィンランドの夏の過ごし方について紹介したいと思います。

フィンランドの夏休みはいつからいつまで?

北国に住む人々にとって、「夏」には特別な思いがあるようです。毎年雪が解け始め、木々が芽吹く頃になると、今か今かと夏を待ちきれず、心がソワソワしてくるようです。それもそのはず。毎年11月頃を境に太陽の陽射しがぐっと少なくなり、その後の数ヶ月間は、まるで暗黒の世界に住んでいるような気分に陥りますから当然です。

そんな憂鬱な期間を経て太陽がキラキラと輝くフィンランドの夏は、一般的には6月から始まります。6月はフィンランド人にとってクリスマスに次ぐ、もしくは同等と言われている一大ベントがあります。それは "Juhannus(ユハンヌス)"「夏至祭」です。このユハンヌスを皮切りに待ちに待った夏が本格的に始まるのです。学校の夏休みや企業や公的機関の夏休みが始まるのも6月から(所によって、人によってですが)。学生たちの夏休みは8月中旬ぐらいまでの2ヶ月半くらいで、企業で働く人たちは、この2ヶ月半の間に有給休暇として、なんと4週間の夏休みが義務づけられています。

夏休みは何もしないで、ひたすら休み、人生を楽しむ

ユハンヌスでは、前夜祭に"Kokko"(コッコ)と呼ばれる焚き火を焚いて、「夏至が過ぎても陽が長く照り続けますように」という北欧ならではの願いを込めると言い伝えられています。

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深夜0時近くに焚き始める。左に炎が見えるのは隣のコテージのコッコ

ユハンヌスは国民の祝日とされ、この日はフィンランド全土のお店や企業はお休みとなり、お店や住宅地にも国旗が掲げられます。そしてフィンランド人が夏休みに過ごす代表的な場所である"Kesämökki(ケサモッキ)"「サマーコテージ」にも国旗が掲げられます。

このケサモッキ。フィンランドの国民の多くが所持していると言われ、夏休みには家族揃ってここで過ごします。ここに欠かせないのが、「サウナ」。サウナの近くには必ず海または湖があります。サウナに入ったあと水の中に飛び込む! これがフィンランド流サウナの正しい入り方です。ちなみにここにアルコールを加えて「サウナ」と「ビールを呑む」を交互に繰り返すのも、フィンランド人がサウナを楽しむ一つの方法ですが、これは日本人はマネしない方が身体によさそうです。

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童話の世界に出てきそうな森の中のコテージ

このほかにもコテージでは、BBQをしたりボートで島巡りをしたり、その周辺では森の散歩やサイクリング、川では釣りやカヤック、海ではヨットなどのアウトドアを楽しみます。

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コテージの周辺の島々をボート散策

周辺の森では今ちょうどブルーベリー摘みやキノコ狩りが時期を迎えています。森に入れば誰でも採ることができるので、夏休みの楽しみの一つです。

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コテージ近くの森で摘んだブルーベリー。この時は少なめの200グラムでした。

もちろんコテージでハンモックに揺られながら本を読みふけったり、ボードゲームに夢中になったり、また冬場にできない大工仕事など(フィンランドは日曜大工文化、名付けて「DIY文化」のメッカです)、普段の生活ではなかなかできないことでも、この長い休みならゆっくりと楽しみながらできます。

この時期フィンランドの北部は白夜となり、南部でも日照時間が20時間弱ありますから、外で遊んでコテージで遊んで、それでもまだまだ陽は沈まず、まるで一日が36時間ぐらいあるかのように感じられます。

そんな毎日を子どもたちも思う存分楽しんでいます。なんといってもこの2ヶ月半の間に学校の宿題は1つもないのですから!! もちろん塾の夏期講習なんてのもありません。ボーイスカウトなどのサマーキャンプに出かけることはあっても、「勉強」というものは一切ないし、本人たち自らやることももちろんありません。

その親御さんたちも4週間の夏休み中に仕事を抱えてくることもありません。職場の全員が同じように4週間の夏休みを交互に取るので、みんなバックアップ体制を整えて休みに入ります。ある程度の引き継ぎは行うようですが、出社している社員が限られてしまうので、会社自体が開店休業中の状態になります。

夏休みはケガにご用心

休み中の公的機関は、通常一週間で手続きが終わるところ1〜2ヶ月かかったり、病院だと医師や看護師も休みに入るので、たとえば救急以外の手術は(出産はもちろん別ですが)9月以降に計画されるなど、徹底して国全体がこの2ヶ月間を休むようになっています。

そんな状況ですから、例えば休み中にケガや病気をすると大変です。とくに公立病院だと、通常でも予約がなかなか取れない状況の上、医師や看護師がいないとなると、もうお手上げ状態。私立病院へ駆け込むしかありません。それでも同じような状況の人たちで予約待ち、なんてこともあるので、夏休みは普段以上に病気やケガに注意する必要があります。

心身ともにしっかり休むことが良い仕事をする秘訣

4週間も休んだら仕事忘れちゃうんじゃない!?と心配するのは、ここでは日本人の私だけ。周りのフィンランド人をみていると、この期間は一切仕事のことは考えず、手にもつけない。思う存分夏休みを満喫する。子どもと一緒になって朝から晩まで遊ぶ。もうこれを徹底しているかのように目に映ります。

そもそも自分の人生の中で、自分の時間や家族の時間、子どもの時間に夫婦の時間など、仕事以外の時間がたくさんあるのだから、毎日仕事が終わった後はそれらの時間に充てる、と誰もがそう考え、ここでは実行して(できて)います。

そのためには一人ひとりのパフォーマンスをあげ、効率よく仕事をしなければならない。すると一人ひとりのモチベーションを向上し維持していくことが大切です。それには、やはり心身ともにリフレッシュしエネルギーを蓄えなければなりません。この4週間の休暇とは、そのエネルギーチャージを行うための期間としているため、誰も仕事はしません。

このような環境に住んでいると、私のようなフリーで働く身でも一週間の休暇は取るようにしますし、周りのフィンランド人のフリーランサーは、やはり4週間取っている人もいれば、2週間だけ取ってまた秋の休暇(フィンランドでは一週間の秋休みというのもあります)と絡めて取るという人もいます。

ケサモッキと呼ばれるサマーコテージで家族と過ごし、普段の生活から離れ自然の中に身を置いた環境で過ごしてみると、人間が本来持っている生物的な感覚が取り戻されるような気がします。

そんな感覚を覚えたら、恐らくエネルギーチャージ完了!となるのでしょう。

チャージ完了したフィンランドの国民たち。これからどんなパフォーマンスを発揮するのか。自分へのプレッシャーも含めて次の大イベントであるクリスマスまでのあと4ヶ月間を乗り切りたいと思います。

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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