教育水準世界一! フィンランドの読書文化

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3階建ての図書館。天井が高く、ゆったりとした空間で読書などができます。

フィンランドは9月に入りぐっと朝晩の気温が下がりはじめ、北部ではもう紅葉が始まっています。

秋といえば、さまざまなことを行うのに良い季節。ここフィンランドでも文化的な活動やスポーツなどのアクティビティのイベントが目白押しです。そんな中、今年のフィンランドはブックイヤーと題して、大統領夫妻自らが後援者となって国家プロジェクトとしてこのイベントを盛り上げています。

教育の基本は「読書」にあり

フィンランドは世界の中でも読書を趣味とする国民の数が多く、図書館の利用率は世界一と言われています(国民1人当たりの年間貸し出し冊数は21冊)。とくに女子の間では読書クラブなどに所属している生徒も多数いるようです。

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平日午後3時ごろの図書館内の様子。まだ空席がみられますが、この後、一気に学生たちで埋め尽くしていました。

さてこのイベントでは、大統領からのこんなメッセージが寄せられています。

「読書とは、われわれフィンランド文化の軸となるものだ。多くの子どもや青少年たちは日頃から沢山の本を読んでいると思うが、まだ読書慣れしていない子どもにとってはもっと多くの読書時間が必要であろう。そこで国民全員、特に子どもたちにもっと本を読ませて(読んであげて)、彼ら自身の人生を豊かにしたいと思う。読書を行うことは、物事を「考え」「想像し」「心で感じ取る」こと。それに読書はそもそも「楽しい」ものである」

とても基本的でそしてシンプルなメッセージを国民へ向けていますが、その土台には、わずか540万人の小国家としての人的資源を一番に考えていることがよくわかります。

それは国として生き残るためには、国民一人ひとりの質をあげることが必要で、その質とは教育であり、教育の一番の基本はやはり「読書」であると考え、そのことを大統領自ら発信したり、政府が教育プロジェクトの一環でこうした本に関連するイベントを積極的に行っています。最近の例では、2001年から2004年にかけて、文学の知識を増やし、母語の読み書きの能力を伸ばすことを主な目的とした「ルク・スオミ」というキャンペーンが開催されました。

本を取り巻く充実した環境

子どもの頃から夜寝る前には必ず本を読んでから寝る、どこかへ出かけるときには必ず1冊本を持って行く、などと言われて育った家庭が多いようで、街中のカフェや公園で読書をしている人を多くみかけることがあります(もちろん家庭によっては全く本との関わりがないというところもあります)。

こうした本との密接な時間を過ごすには、手軽に借りれる図書館の充実が必要です。と言っても何も特別なことはありませんが、たとえば現代ならではの"e-books"の貸し出しや楽器の貸し出しなど、本に関連したものの貸し出しを行うところもあります。

また、バスや車、自転車による移動式図書館が充実しています。都心部から郊外を抜けて田舎町やロシアやスウェーデン国境付近の町まで、とくに過疎地を中心としてフィンランド全国津々浦々までに本を届ける仕組みができています。

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移動図書館 Photo: Helsinki City Library

催し物については、日本の図書館とさほど変わらず、映画の上映会や読み聞かせに朗読会、文化交流会などが盛んです。

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子ども用のコーナーでは、普段、特に乳幼児用のおもちゃなどが置いてありますが、左側のカーテンを仕切りにして読み聞かせ会や人形劇のようなイベントが開催されます。

夏はほぼ一日中サンサンと降り注ぐ太陽の下でサングラスをかけて日光浴がてらの読書。夏休みには湖のほとりのサマーコテージで心ゆくまで読書。そしてこれからの時期、寒い冬は一日中降りつづく雪を見ながらロウソクを焚き暖炉を目の前にしての読書。それにフィンランド人にとって一年で最も大切なクリスマスには、クリスマスプレゼントとして本を贈る人も多いです。こうした本を取り巻く環境が充実しているからこそ「本好き」な国民が多くいるのだろうと思います。

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真夏の川沿いには読書を楽しむ人々がベンチを占領していました。ちなみにもう1つ先のベンチに座っているのも女性でした。

一方、男子の読解力低下が問題に

しかし、実は国民の読解力が以前から問題になっているのです。特に15歳の男子においては、そのおよそ7000人に読解力の低下がみられるとの研究結果が発表されました。

原因については書かれていませんが、読解力の低下は将来の高等教育や就職に影響すると指摘され、長年、男子の読解力が依然低いことも指摘しています。前述した「ルク・スオミ」プロジェクトの中にも「男子生徒への教授法の改善」という目的も含まれていたようです。ちなみにこの記事は9月8日の国際識字デーに公表され、この問題を国民に再認識させるような意図があったようです。

そしてこの識字デーにブックイヤーを関連づけて、本好きが本を持って国内23ヶ所の広場や図書館前に集まり10分間の読書をする、というちょっとしたイベントがありました。もちろん集まった人々は、ほとんどが女性でした。

いずれにせよ、本好きにはたまらない今年のブックイヤー。ホームページでは月ごとに各地での催し物を紹介しています。またSNSが盛んなようなのでフィンランド語がわからなくてもハッシュタグで検索して本のデザインなどを見て楽しむのも良いかもしれません。

しかし投稿者のほとんどは女子ですから、読書好きな女子が多いということは、教育、強いてはフィンランドの人的資源は女子力が高いことが伺えるようですね。

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乳幼児および児童向けの日本語コーナー。われわれ日本人、特に子どもがいる家庭にとっては、貴重な日本語の資源です。

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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