「らくがきアート」で子どもを殺さない社会をつくる|一般社団法人ジャムピカソ

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第7回目は、「一般社団法人ジャムピカソ」発起人理事であり、らくがきアート作家でもある佐藤健郎さんにお話を聞きました。

20151007_jam_1.jpg

2014年カンボジア国境地雷原の村プレア・プット小学校体験会にて

「ジャムピカソ」の活動について教えてください。

ジャムピカソの活動は、「らくがきアート」による国内外の子どもたちへの支援(らくがきアート夢自立支援奨学金)をはじめ、地域の活性化や企業の販促企画を行っています。

具体的には、東日本大震災の被災児童の教育機会をつくる「公益社団法人ハタチ基金」やカンボジアの小学校の教育環境整備活動を行うNPO法人との寄付プロジェクトの実施、そして、個人のお子様かららくがきをいただき、それを記念品としてアート作品化する「家族の絆プロジェクト」の実施などがあります。

「らくがきアート」とはなんですか?

らくがきといえば、通常は忘れ去られ、捨て去られるものかもしれません。でも、子どもたちの描くらくがきや絵には柔軟な発想力、溢れ出る躍動感などパワーがあります。そんならくがきにアーティストやクリエイターが価値を与え、アートへと変化させたものが「らくがきアート」です。「子どもと家庭・社会を結びつけるデザイン素材」にすることで使用対価が生まれ、それは、ただの芸術のみならず、子どもの将来の夢チャレンジや自立のために経済的な支援にもなります。

jam2.jpg

東日本大震災被災児の教育機会を支援するハタチ基金プロジェクト作品 「0G I think about you」 (2013 THE LUMEN PRIZE 世界100選入選)

なぜ、このようなご活動、支援を始めようと思われたのですか。

東日本大震災が起きた2011年の夏に、復興支援祭ボランティアや地元のママサークル、社会福祉施設や保育園・幼稚園の現場で「ふるさとのすきなとこ」を描く、らくがき体験会を実施しました。

jam3.jpg

2011年石巻で子どもたちが描いたふるさとの絵をらくがきアート応援旗にして寄贈

その中で、10歳の女の子を持つお母さんが、こんなことを言いました。

「3月11日の大津波で、私は親も夫も友だちもみんな流されてしまいました。それ以来、子どもに隠れて、毎日死にたい死にたいと泣いていました。でも、娘は毎日笑って、私に抱きついてくる。そのたびに私はこの子に救われたのですよ。今があるのも子どものおかげ。残された人生は、この子に精一杯、恩返しです」

私はその場で涙を抑えることができず、大泣きしてしまったのです。それをまたそばにいた小さな子どもが「先生、なんで泣いてんだよー」といって頭をなでてくれたのです。

それまで私は、子どもは大人(社会)から一方的に養育される存在だと感じていましたが、この日、私は初めて「子どもこそが大人(社会)を支えている真実」を知りました。

jam4.jpg

2014年プレア・プット村小学校で子どもたちと描いた190点のふるさとの絵をらくがきアート応援旗にして贈呈。作品名「プレア・プット村」

それからというもの、「もしリビングや街角、オフィス、もっといえば銃声がとまらない紛争地など社会のいたるところに、子どもの精神が宿るアートが存在したら、それが灯火となり、大人(社会)は子どもを傷つけ殺す闇から解放されるのでは?」と考え、この世界に「らくがきアート」が生まれた意味とそれを広めていく使命感を実感しました。

「らくがきアート」はどのような過程を経て、製品になったり寄付につながるのでしょうか。

まずは、子どもの生存や教育を支援する国内外の非営利活動団体とパートナーシップを組みます。団体の活動現場で、支援する子どもたちとの「らくがき体験会」を開催して、体験会で集めた絵を著作権・使用権等を含めて提供してもらい、らくがきアート作家ca37(シーエーサンナナ)が、らくがきアートを制作します。その後、ギャラリーでの展覧会や店舗事業者に呼びかけ、空いてる壁を使ったひと壁展示を行ったり、広告や商品デザイン素材として事業者に販売したりします。作品販売収益(純利益)の20%を積立て、らくがきを提供してくれた非営利活動団体に年度末に一括して寄付を行うという流れが基本になっています。

活動をしてうれしいことやちょっと大変なことはありますか。

うれしいことは、らくがきという日頃は捨てられるものが「らくがきアート」になることで、大人を感動させ、また子どもたちの成長を助ける資源となること。また活動の現場で子どもたちや団体の皆さん、タスキを受け取ったさまざまな立場の方と出会い、つながりの深い友だちになれることです。

jam5.jpg

2011年 福島県南相馬市原町第二中学校復興支援祭で行ったらくがき体験会

大変なことはこうした活動を知ってもらうことや支援先団体を募集する際、活動の趣旨がなかなか伝わらないこと。海外に展開する場合のつながりがとくに不足しています。

ジャムピカソが未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

私たちが「らくがきアートリレー」を通じて実現しようとメッセージしているのは、「子どもを殺さない社会であり世界」です。

子どもは社会人となるまで親やまわりの大人次第で、その生死や人生が決まります。紛争などの政治的なものから、虐待や育児放棄といった要因がある中で、その多くが子どもからのSOSが聞こえてこない。そこに視覚や直接心に訴えかけるアート本来の役割があると考え、そのような問題に働きかけるツールとして、私は「らくがきアート」をもっともっと提案していきたいと考えています。

jam6.jpg

認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア・プレアプット村小学校の環境整備をサポートする作品「Four bars」(2014THE LUMEN PRIZE 世界100選入選)

そして、らくがきアートが社会の風景=インフラや、個人的な洋服や持ち物などに活かされる未来をつくっていきたいと考えています。

リズムーンの読者にメッセージがありましたら、お願いします。

私は、お子さんが残した「らくがき」は、2度と同じものは描けない、その「瞬間」を切り取る宝物だと思っています。そんな宝物をアーティストとともに作品に仕上げ、ぜひ、お誕生日や進級進学、また、独立される時などにプレゼントする、そんなふうにひとつでも多くのらくがきアートを介して、家族の絆が深まっていけばいいなと考えています。また、幼稚園や小学校の卒業制作などにみんなのらくがきをひとつのアートに仕上げることもできますのでお気軽にご相談ください。

jam7.jpg

当時1歳のYUUYAくんのらくがきをアート作品に「X'mas eveの夜に」

「らくがき」からはじまる支援。
国内外問わず、世界中の子どもたちが生きたいと思える社会を実現するために、ぜひ、みなさんの手を貸してください!

take action-いま私たちにできること-

「平和な社会を目指す」とひとことでいっても、それを実現するための「1つ1つのこと」は草の根運動の積み重ねですね。子どもたちが描く「らくがき」を捨ててしまうのではなく、価値のあるものに変え、そこから彼らの未来を、夢を応援するジャムピカソの試み。「子どもの愛おしさ」をタスキにしたアート活動が、世界に広がっていくことを願ってやみません。

さあ、このストーリーを未来へ紡いでいこう。

【一般社団法人 ジャムピカソ】
ホームページ:http://www.rakugakiart.jp/rakugakiarttop.html
Facebook:https://www.facebook.com/jampicaso
らくがきアーティスト ca37 ホームページ:http://www.ca37.info/

林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

林 美由紀さんの記事一覧はこちら