がん経験者の情報を動画で配信。今闘病中の人へと繋ぐ|がんノート

誰かの大切な想いを知ること。
そして、その想いを未来へ紡いでいくこと。
それは、今を生きる私たちひとりひとりの役割なのかもしれません。

「未来へ紡ぐストーリー」では、誰かのために、社会のために、地球のために活動するみなさんをご紹介していきます。第8回目は、「がんノート」代表の岸田徹さんにお話を聞きました。

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悪性黒色腫(メラノーマ)経験者の徳永さんにインタビュー

「がんノート」の活動について教えてください。

「がん経験者の情報を、いま闘病中のあなたへ。」をコンセプトに、がん経験者ががん経験者にインタビューし、その内容をインターネットで生放送発信するという活動をしています。サイトでは、リアルタイムで観れなかった方々のためにインタビュー動画やインタビューの要約記事も公開しています。

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岸田さん(キシリトールさん)がゲストがん経験者へインタビューする形で進行します。

がんノートでは医療情報"以外"の情報を扱っています。人はがんに罹患すると、例えば、家族にどう告知するのか、仕事・学校にどうやって復帰するのか、お金はいくらぐらいかかるのか、わたしは結婚・出産できるのかどうかなど、がん治療"以外"にも悩むことが多いのです。そのようなことから、がん経験者の「生の声」を大切にして発信しています。また、これは注意しないといけないところですが、治療方法などの医療情報については、それぞれの状況が異なりますので、主治医や病院にご相談いただくように促しています。

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気になる「恋愛」について、悪性リンパ腫経験者みかさんにインタビュー。

がんノートでは、普通だと聞きにくいことをゲストのがん経験者にインタビューし話してもらうようにしています。なぜならそれが本当はがん患者が必要としていて、医療従事者に聞いてもわからない、インターネット上、どこにも載っていない(もしくは限りなく少ない)情報だからです。それをがんノートが発信することで、今、不安に思っているがん患者の前向きな見通しになるきっかけになればと思っています。また「がん」についての知識や理解を深めてもらうため、中学校や高校などのがん教育の場で体験談のお話もしています。

なぜ、そのようなご活動、支援を始めようと思われたのですか。

きっかけはぼく、インタビュアーである岸田徹が罹患したがんの種類とそれによる後遺症からです。ぼくのがんは、「胎児性がん」といいます。みなさんは聞いたことありますか? おそらくないと思います。正式に言うと、胚細胞腫瘍のなかの、非セミノーマというカテゴリーのなかの胎児性がんという種類です。余計にわからないですよね(笑)。約10万人に1人が胚細胞腫瘍になり、その中の約5%が胎児性がんという種類のがんです。つまり、胎児性がんは希少ながんで、それに関する情報が少なかったのでもっと情報が欲しいと思いました。

そして、がんに罹患してから克服などをして元気に生きている人の情報も少なかった。もっと乗り越えた人たちの情報がもっとあってもいいのではと闘病中ずっと思っていました。

また、ぼくは抗がん剤や手術の後遺症で性機能に障害を持ちました。いま、自然なかたちで子どもは望めません。その後遺症が治るのかどうか医者に聞いても「わからない、様子を見よう」と言われたため、インターネットで情報を探したのですが、まったくと言っていいほど満足できる情報は見つかりませんでした。

その時に、あぁ、こういったかなりプライベートな情報って誰に聞いても、どこを見てもないのだな......と思い、絶望し、がん宣告以上に悩み苦しみました。その経験から、「いま闘病している患者にはそんな思いをしてほしくない」と思って今の活動をするようになりましたね。それも日本全国の人が見ることが出来るインターネットを通じて。また、がんになっても前向きに克服していた(している)人を、画面を通して見てもらうことで、闘病中の人の見通しや目標になってもらえたらなと思って配信するようになりました。

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今 闘病中の方へのメッセージを慢性骨髄性白血病経験者のはるかさんから。

活動をして嬉しいこと、反対にちょっと大変なことはありますか。

嬉しいことは、がん患者が生放送をみて、「私もがんを克服したらこの番組に出たい」と言ってくれることです。また、希少ながんの人をゲストに招いたときは、閲覧してくれていた希少ながんの患者同志を繋げることもできました。

大変なことは、インタビューの映像編集と文字起こしです。放送当日は、数名のがん経験者が手伝ってくれたりするのですが、現状、仕事をしながら休日の時間や合間を使って「ノート」の活動をほぼすべて1人で活動している状況です。

放送が終わって編集してからYoutubeにアップしていますが、素人なので時間がかかり、また文字起こしもすごく大変です。そのため、ホームページなどに載せるまでにかなり時間がかかってしまっていて、前の編集を終わってもないのに次の収録が来たりして、てんやわんやな感じです(苦笑)。まだまだ試行錯誤しながらという感じですね。

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乳がん経験者あいこさんにインタビュー。出張放送中(「暮らしの保健室かなで」にて)

たとえば、患者さんやそのご家族が直接、質問をしたい、お話を聞きたい、またはお話を聞いてほしいという場合に、何か手段はありますか。

もちろんあります。放送は生放送なのでニコニコ生放送USTREAMを活用しています。そしてそこで放送中にリアルタイムに質問できるようにしています。随時、書き込みなどの質問が来たらゲストに聞くようにしています。それによって双方向のコミュニケーションもできたり、インタビューの内容が深まったりすることがありますね。今後は、Twitterでも質問を受けることができるようにとか、他の配信ツールやサービスなども検討中です。より多くの方に接する機会をつくっておきたいなと思っています。

「未来へ紡ぐストーリー」ということで、これからの未来に望むこと、未来へ紡いでいきたいことはありますか?

がんがもっとオープンな社会になったらいいなと思っています。今や2人に1人はがんになる時代です。なのに、社会に出るとがんになったら「隠そう」という人も多いと感じています。それは、がんを公表することによるデメリットがメリットよりも大きいからだと思っています。

たとえば、以前のように仕事ができなくなるとか、死ぬと思われてしまうとか。もう6割以上の方は生きていける時代になっているのに......だから、がんになっても安心して暮らせる社会になるよう、もっとオープンな世の中になってほしいと思っています。がんノートでは元気ながん経験者、前向きながん経験者をゲストに迎えてこれからもいっぱい発信していくので、がんに対するイメージを少しでも変えていけたらいいなと思っています。

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胃がん経験者ゆうとさんにインタビュー。罹患後の食事の好みがかわったそうです。

現在必要としている支援、参加してほしいことなどありますか?

ほぼ1人で活動をしている状況ですので、この活動に共感して一緒に活動してくれる方や、プロボノなどで映像編集・文字起こし・当日の受付・告知掲載・がんノートホームページやFacebookに写真をアップロードしてくれる方など、ちょっとでもお手伝いしてくれる人がいたらうれしいです。また、近々NPOか一般社団法人化も検討しているので会計士・弁護士などの方もお手伝いいただけると本当に助かります。一緒にがん患者の未来ために活動ができると嬉しいです。

リズムーン読者の方にメッセージをお願いします。

あなたは、いま「がん」になると思いますか?

思っていない方も多いと思います。ぼくもそうでした。なっても80歳とか90歳でしょ......と。

でも、実は、いまのあなたの身体の中にはがん細胞は日々つくられています。がん細胞は、健康な人の体でも5,000個できているということを唱える学説もあります。そしてそれを免疫細胞が撃退してくれており、わたしたちの身体の中では、毎日毎日、たとえば「5000勝0敗」の闘いが繰り返されているのです。(参考:がん対策推進企業アクションHPより

このようにお話したのは、別に不安を煽りたいわけではありません。がんは誰になってもおかしくない病気なのです。

そしてがんになったとき、目標があれば前向きに闘病できるのですが、どうなるかわからないといった目標となる情報がない時、一気に不安になり、落ち込み、どうしていいかわからなくなると思います。がんノートでは、そうなった人の少しでも立ち直るきっかけをつくることができたらなと思っています。

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慢性骨髄性白血病はるかさんからのメッセージ。「生きているってすごいこと」 過去にとらわれず 未来に怯えず 今を生きよ

がんノートの中でもゲストがん経験者が「がんの経験を通して、はじめて日々のありがたみに気づくことができた。普通なことなど何一つない。」とおっしゃっていたりもしています。

みなさん、今日も1日を大切に!!

take action−いま私たちにできること−

恐怖や悲しみ......がんと聞くとそのようなイメージが先に立ってしまうかもしれません。
でも、「がんになること」は、知らない誰かの話ではなく、誰がいつなってもおかしくないこと。

自分や家族やパートナーなどの大切な人ががんになった時、状況を理解し、正しい情報を得ること、そして、経験者のお話を聞くことで、安心でき、どれだけ前向きになれるかによって、きっとその後の病気との付き合い方も人生も大きく変わってくるのではないかと思います。

自分ががんになったら、身近な人ががんになったら、そして、がんとは縁がないと思っている人も、がんノートの存在をいつも頭の片隅に置いておけば、きっと心のよりどころとなってくれるに違いありません。

がん経験者の方々が時には苦悩し葛藤して感じたこと、導き出したものを誰かに伝える。人の心を支え、勇気を与えるとても大切な活動です。

さあ、このストーリーを未来へ紡いでいこう。

林 美由紀

Writer 林 美由紀

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。モノを書く以外にも、イラストレーターと合同でカフェでの作品展示など、形にとらわれない創作活動も。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。子は男の子2人。

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