難民受け入れで生じる問題とは? フィンランドの事例から

20151209_fujiwara_2.jpg

市内の中心広場には毎年恒例となるクリスマスマーケットが始まりました。クリスマスにちなんださまざまな手作り商品が軒を連ね、今年はおよそ30店舗が出店しています。

今年も残すところあとわずかとなりました。フィンランドでは一年の中で最大のイベントであるクリスマスを目前に控え、街中が賑わい始め、街行く人々も高揚しています。

今年のフィンランドは、景気不況から政治が難航するなど残念ながらあまり良い話題はありませんでした。加えて欧州圏内で揉めに揉めている難民問題も山積み状態で年を越すことになりそうです。

今年最後のコラムは、その難民問題について、EU圏内の一国としてフィンランドがどのような対応をとっているのか。そして今でも増え続けている難民をどう救っていくのか、について紹介したいと思います。

幸先の良い受け入れ態勢

今年9月に一気に難民が押し寄せてくることになった直後、大統領の難民受け入れ宣言をはじめ、首相自ら自宅の一部を難民に提供するなど、国の幹部が積極的に受け入れ態勢を表明しました。首相または国民の自宅に難民を受け入れる「ホームステイ型」は今までは違法でしたが、今回の難民の数や緊急性を考慮して、やや見切り発車と言われながらも政府はホームステイ型の難民受け入れガイドラインを作成しました。

また、草の根活動である市民ボランティア支援の勢いは、SNSなどで瞬く間に国内に広がっていきました。難民たちのお世話をする人たちのボランティア、物資の寄付ボランティアなど、とにかく難民を救おうという勢いは、難民が押し寄せるスピードと同じぐらいの速さのようにも感じられました。そして企業の間でも、社会貢献の一環として、Finlayson社が寝具セットを、Elisa社が携帯電話を寄付するなどの動きも活発化していきました。

20151209_fujiwara_1.jpg

我が家の近くにある赤十字社の中には、『難民受付センターへの寄付はこちらへ』という案内板が。我が家も微力ながらここへ衣料の寄付をしました。

どこの国でも人種差別は起こる

難民受け入れに対して積極的な姿勢を示しているフィンランドですが、一方で、国内には難民受け入れに反対する人々も多くいます。
とくに今年は国内景気が最悪な状況のため、難民救済よりも自国民を救済する方が先だ、という反対意見が多くあります。確かに、企業の解雇命令が後を絶たず、失業率がついに2ケタに上った今年は、難民受け入れに難色を示す人が以前に較べて多くなっているのです。

そういった人々は反対デモを各地で繰り広げていますが、その中でも国内だけではなく北欧諸国、ないしは欧州諸国でも物議を醸し出したある事件が起こりました。

Lahti(ラハティ)という街に難民を載せたバスが難民センターへ到着したところ、花火や投石をしたり野次を飛ばすなどの事件が発生。この暴動を起こしたグループの一人は「クー・クラックス・クラン」(通称"KKK"=白人至上主義団体)の白装束で頭部全体を三角白頭巾で覆った恰好をして、フィンランドの国旗を持っていました。

日本からみるとフィンランドは、人種差別とはほど遠いイメージがありますが、やはりここにいる国民も同じ人間ですから、「よそ者を受け入れたくない」「今はその余裕はない」という理由があって当然のこと。

ただ、今回のような奇抜で象徴的なものを掲げての反対デモは、やはり国内外の物議を醸し出すことになり、これに対して首相は近隣諸国のメディアなどへ「フィンランドは人種差別の国ではない」とネガティブイメージを払拭しようと必死に働きかけていました。

数が増えると問題も複雑化

さて9月に始まった難民受け入れ対策も連日難民の数が増えるに従って、難民センターなどの施設問題やその周辺住民との関係性にも問題が出てきました。難民センターを設置した近隣の住民からは、例えば近隣に中学校がある場所では「レイプの恐れがある」などと、この学校に通う女子中学生の親御さんたちが不安を募らせていました。

残念ながらこの不安は的中し(実際事件が起きた街はこの親御さんたちが住む街とは別の街でしたが)、これにより難民申請が一層厳しくなり、強制送還させられるケースも出てきました。一方、既に難民申請を終えた人たちの住まいで今までテントなど簡易施設だった場所は、早急に使用されていない学校などの公共施設を提供するように整備を始めています。

SNSなどでは、難民たちから「フィンランドは寒くて暗くて、しかも誰もいない森でなんて生活できない」という声もあったようです。隣国スウェーデンの国境近くの難民センターはそのような環境にあり、私でもそんな場所での難民生活には不満を募らせるに違いありません。

政府はこのような声を反映して、難民センターの設置場所を変更するなど近隣住民との共存や双方の安全性をより一層考える方針を打ち出しました。

人道支援を第一に

フィンランドは昔から階級社会ではなかったので、社会の階級差別はほぼ存在しません。また現在のフィンランド社会は、難民や移民へ向けた語学学校などが整備され、彼らがフィンランド社会にとけ込むための文化交流などが積極的に行われている方だといわれているようです。

それでもやはり難民の人々にとっては母国を離れ見知らぬ北国で、食べ物も言葉も違う国でどうやって生活をしていくか。そんな大きな不安を抱えてやってくるのですから、彼らへは「人道支援」という本質を基本にして、これからも慎重に受け入れていくべきだと思います。

フィンランドが「共和国」として100周年を目前に控え(今年は独立98周年を迎えました)、今年は大きな曲がり角に直面しました。長引く不況やこの難民受け入れ問題など、国としてさらに成熟していくための課題をどう解決していくのか。来年のフィンランド共和国はどのような年になるのか、移住者の筆者にとっても目が離せません。

さて、今年1年間このコラムを読んでいただきありがとうございました。また来年もフィンランドからいろいろな視点でこの国について紹介できればと思っています。

それでは皆さん、良いクリスマス&お正月を!
Hyvää Joulua ja Uutta Vuotta Kaikille!

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

藤原斗希子さんの記事一覧はこちら