ある日、英語レッスンで生徒さんがNHKのラジオ語学講座のテキストを持ってきてくれました。
Cut the Mustardって何?
NHKからはたくさんの語学テキストが出ていますが、今回のはビジネス英語。このビジネス英語のテキストに出てきた表現"cut the mustard"に注目してみました。
Wall Street always needs top-level talent, and I'm sure Brian will be able to cut the mustard.
「これってよく使うんですか?」 と聞かれ、文脈から意味は想像つくものの、実際、私は使ったことはありませんでしたし、まわりで誰かが使ったのも聞いたことはありませんでした。すぐに目に飛び込んでくるのがこの"mustard"という名詞でしょう。 「か、からし??」というように突発的にふって沸いたような名詞が入るイディオム。日常的に使っていれば気にならないはずでしょうが...。
英語にはいろいろなイディオムがあり、とくに体の部位が入ったものなどは、わりとよく使われているように思います。in the blink of an eye とかput one's foot in one's mouth、bite my tongueなど、挙げていったらキリがないほどです。
さて、cut the mustard。古い言い回しの感じはしたものの、はたしてどのくらい古いものなのでしょうか。
Mustard by Mike Mozert
ネイティヴに聞いてみると...?
試しに40代の夫に聞いてみると、「使われれば意味はわかるけど、自分は使ったことないし、まわりにも使う人はいない」とのこと。自分の父親くらいの世代なら使うかもね...。という程度の古さのようでした。
Facebookを通じてほかの人にも聞いてみました。 50代の夫の従兄は野球トピックで聞くイディオムだといいます。ただし、NHKテキストで出てきたように、肯定の形で使われることはあまりなく、ほとんどネガティブなことをいう場合に使われるとのこと。
確かに英英辞典で引いてみると(not) cut the mustardとあり、The American Heritage® Dictionary of Idiomsには下記の例文と共に、The expression is often in negative form, as in the exampleともありました。
例)We need a better catcher; this one just doesn't cut the mustard.
40代後半の義姉は聞いたことはあるがほとんど使われないと言い、私と同年代の友達は、ちょっと気取った人のマネをする時くらいじゃない?とのこと。 まぁ、簡単に「古い表現で、あまり使われませんが使ってもOKです」というのが回答となりそうです。
さて、夫の20代の姪に聞いてみたところ、「それは言わないけど"cut it"なら言う」という返答。"Sorry doesn't cut it." (ごめんなさいじゃ済まないよ。)や、"If he can't cut it, then we'll get someone else to do the job." (もしあいつができないんなら、ほかの人に頼むよ。)など、確かにcut the mustardと使われ方も同じです。
どうやら"cut it"という表現が"cut the mustard"よりも新しい表現であり、おそらくそこから変化したもののようです(ワシントン州立大学、ポール・ブライアンズ名誉教授)。
英語も生きている言葉。時代と共に、使われ方や表現そのものも変化していきます。ちょっと気になったフレーズはどんどん調べて、使えるものは自分のものにしていってくださいね。
ボーダレスマインドで行きましょう。