前回紹介した大判ショール(スカーフ)の巻き方を基本に、今回は帽子とのコーディネートを紹介したいと思います。
記事ではスカーフを4枚、帽子を7種類使っていきますが、アイテムや色を組み合わせる時にどんな風に考えているかという「考え方の例」としてぜひ捉えてみてください。スカーフとハットの組み合わせだけでなく、トップスとスカート、スカーフとパンツのように、他のアイテムの組み合わせを考える時にも、いくつかの点で応用できるはずですよ。
それではさっそくみていきましょう!
1. スカーフのなかの1色(同系色) × ベレー
ストールは前回と同じHERMESの「Aux Portes du Palais(王宮の扉)」。デザイナーはクリスティンヌ・アンリ。
このストールの巻き方自体が、ドレープが幾重にもできる豊かなニュアンスをもった巻き方ですが、そこにスカーフのなかの一色、ロイヤルブルーのベレーをもってくると、調和のとれた優しげで女性的印象になります。
ロイヤルブルーのベレーは、単体でみると「インパクトありすぎるかしら?」と感じますが、案外なににでも合うのに無難にならないところが優秀なアイテムです。
2. 黒(スカーフ内にない強い色)× 中折れ帽
全体として真っ白と鮮やかなブルーを感じられる色柄のこのストールは、パーソナルカラーでいうとWINTERに属します。そして、黒も同じくWINTERの色(パーソナルカラーについてはこちらを参考)。
コントラストの強さに加えてハットというアイテムを組み合わせることで、男性的で、クールっぽさが出てきます。
そのままクール路線で行くなら、マットな質感の黒のレザージャケットと合わせてもかっこ良さそう。よく見かけるレザージャケット✕アフガン巻きよりは個性的な印象になります。ボトムはスキニーや、黒のスウェードのレギンスを合わせてもよいですね。
3. スカーフのなかの1色(アクセント) × 中折れ帽(ブリム小さめ)
スカーフは同じ巻き方をしていますが(ちょっとした調整の差で形が違って見えます)、色と柄で雰囲気がだいぶ変わります。ブラシで描いた刷毛跡のようにも見えるデザインと、ハットの羽飾りがリンクして、どことなくウェスタンなコーディネートにも見えてきませんか?
「LA FEMME AUX SEMELLES DE VENT(風の足跡をもつ女)」というタイトルがついているHERMESのスカーフは、広げると山岳地帯を放浪しているように見える絵柄で、ボヘミアンな雰囲気も漂わせています。フレアジーンズなどあわせると面白いかもしれません。
4. スカーフのなかの1色(ドミナント) × 中折れ帽(ブリム大きめ)
クラウン(頭が入るところ)がグレーのハットは、黒一色のハットよりも柔らかさが出てきて、またブリム(ツバ)が大きいので、マニッシュさよりもエレガントな印象になります。
歩いた時に余韻を残すような揺れをつくる柔らかい素材感のフレアスカートと合わせたらステキそう。あるいは、グレーのカシミアのスウェットパンツといったアイテムで外すのもいいかもしれません。
超カジュアルで楽チンなアイテムを崩しすぎず上品にまとめられるので、旅行にもうってつけ。
5. スカーフのなかの1色(控えめな色) × 中折れ帽(ブリム変形、ソフト)
HERMESの「LE LABORATOIRE DU TEMPS(時の実験室)」と名付けられたこのスカーフ。ダークブラウンの地色に、青や赤、緑、そしてショッキングピンクのような色まで入っているので、色をリンクさせたコーディネートがしやすい1枚です。
写真ではネイビーのラビットハットをあわせました。ハットのベルトはブラウンのレザーなので、ブラウンとネイビーの2色でスカーフとリンクしています。ハット自体も、この記事に登場するほかのハットと違って、ブリムが変形した(正対称ではない)、芯のない1枚フェルトといった作りでミステリアスな上品さが漂います。
素材の上質さがあるので、ウールのパンツにあわせてもよさそうですし、色の快活さとリンクさせて白シャツにデニムといったカジュアルなコーディネートにもはまりそうです。
6. スカーフのなかの1色(インパクトある色) × 中折れ帽
HERMESのEtriers(鐙)と名付けられたストール。デザイナーはFrancoise de la Perriere。色の組み合わせが、いまどきっぽくないレトロな1枚。これまで使ってきたストールと比べると絵柄も具象的で大柄で、色の派手さもあいまって全体的に大胆な力強さを持ったストールです。ハットも真っ赤なボディに黒のリボンでインパクト大。
単体で使うと、それぞれがコーディネートのスパイスになるアクの強さを持ったアイテムですが、こうして強いもの同士で合わせると、逆にカドが取れて丸くなり、個性的な印象は残しつつも調和が生まれるように感じます。
ハットの黒のリボン部分とのリンクで、トップスもボトムスも黒でおさえるとコントロールしやすそう。でも、このストールとハットの個性も活かしたいのであまり無難にしてしまうのも残念です。色は黒で抑えつつ、大胆なストールに負けないテクスチャーをもった、例えばコットンレースのような素材のセットアップなどをあわせるのもいいでしょうか。
7. スカーフのなかの1色(控えめな色) × ラインストーン付きベレー
同じく、HERMESのEtriers(鐙)に、今度はスカーフのなかにも使われているボルドー色をベレーでもってきてみます。6の真っ赤なハットの時よりもグッとシックになりました。形が自由に変わるベレーはハットのかっちりした印象とは対照的にゆったりした柔らかさが出ます。色は落ち着いていますが、フロントとトップについているラインストーンのおかげで地味にならずに、顔周りが明るくなりそうです。
光沢のあるベージュやゴールドの落ち感のあるパンツでゴージャスな感じにあわせても、柔らかな素材のブラウスとネイビーやブラックのキリッとしたドレスパンツにあわせても、品のいい淑女スタイルができそうです。
いかがでしたか?
スカーフやストールは、巻き方が分からないから使いこなせないという声をよく聞きます。でも、それらを上手に使いこなしている人たちも、決して、何百もの巻き方をマスターして毎回違う巻き方をしているわけではないのです。
同じ巻き方でも、使うスカーフの色や柄、テクスチャー、合わせる小物や洋服によって、ずいぶん印象は変わるもの。どのアイテムもそうですが、スカーフも使うのに慣れるには何度も使ってみることが大事です。同じ巻き方をいろいろな服や他の小物と合わせて何度も試してみると、いつの間にか板についてしっくりくるようになると思いますよ。
ちなみに、帽子もかぶり方でかなり雰囲気が変わります。真正面でかぶるのか、目深に被るのか、左右どちらかにやや傾けて被るのか、顔がよく見えるように後ろに下がるようにかぶるのかなど...。
ぜひ試してみてくださいね。
<今月の旅するファッション>
今回は旅服ではないのですが、トレンチコートで有名なBURBERRYのパーティでのスタイリングです。大判スカーフ・ストールの延長ということで、この秋冬に流行っていたポンチョを例として挙げてみました。 ブルーグリーンのこのポンチョ、BURBERRYのもので、下の方はストールを細かく割いたようなフリンジになっている今年らしいデザインです。 ブランドのパーティという状況でもあり、今期最も注目のアイテムであったポンチョを主役にするスタイリングにしたかったため、ポンチョとは反対色のボルドーのニットに、ニットの色に近いワインレッドのリボンを巻いたハットをあわせています。ちなみに、この黒ハットは記事内のものと同じですがリボン部分だけを付け替えました。 ポンチョに細かな絵柄がない分、全体としてカラーブロッキングのようになっていて、大胆で印象的なスタイリングになっていると思います。実際、会場内でも声をかけられることが何度かありました。 一緒に写っているのはBURBERRYのCEOでクリエイティブ・ディレクターを務めるクリストファー・ベイリー氏。彼のような強烈なオーラや影響力をもつような人と一緒にいても沈みすぎない、また彼へのギフトになるようなスタイリングを意図しています。