「覚えた」ではなく「できる」?子どもたちの新しい"英語"

この連載では、いま日本で進められている教育改革の意味と、その動向についてご紹介してきました。目玉となる高大接続システム改革は、大学入試を変えることで教育全体を変えていく構想です。

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photo by Aleksandar Cocek

これまでの教育では難しかった「話す」と「書く」

改革の鍵といわれるアクティブ・ラーニングは、学びの姿勢を根本的に変えるもの。国際バカロレアのTOKなど国際的な教育にヒントがありそうなこともお伝えしました。そして、国際社会と言えば、多くの人が、日本の教育課題のひとつとして「英語」の学習を思い浮かべるのではないでしょうか。

日本人は英文を「読む」「聞く」はできるけれど「話す」「書く」が苦手だと言われます。英語学習については、導入の年齢や方法などさまざまな意見もありますが、国はどのように考えているのでしょうか。

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photo by U.S. Army Corps of Engineers

小・中・高で、生涯使える英語"コミュニケーション力"を

文部科学省(以下、文科省)は、オリンピック・パラリンピックが開催される2020年にむけて、小・中・高の抜本的な英語教育改革を進めています。今の小学生が社会で活躍する時期についても下記のように述べ、英語教育を重視。高等学校卒業時に、生涯にわたって「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を積極的に使ったコミュニケーションをする英語力を身につけることを目指しています。

現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。(今後の英語教育の改善・充実方策について報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~

小・中・高等学校を通じての一貫した教育も大切と考えられており、2022年には、東京都が都立立川国際中等教育学校を小中高一貫教育校にする予定です。

テストも変わります。英語力は、4技能を見て「知識を身につけたかどうか」ではなく、「何ができるか」で評価。競うためのテストではなく、各自の力を知って学びを確認するためのアセスメントとして使います。

英語力を見る基準としては、欧米で広く使われているCEFR(セファール:Common European Framework of Reference for Languagesの略)があり、これが、学校外の各資格・検定試験と関連づけられ、入試や授業に活用され始めています。CEFRには「A1(初級学習者)」から 「C2(熟達した学習者)」までの6レベルがありますが、現在の日本人の80%がAレベルだそうで、やはり、何とかしたいものです。

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大学入試にも「話す」「書く」が。英検、小学生の英語にも変化が

入試にも上記の試験や資格が活用されますが、「聞く」「読む」がメインのセンター試験も、「話す」「書く」力まで問われる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に変わります。中・高の授業でもコミュニケーション能力を身につけることが重視され高校では英語で授業を行うことが基本となっているところ。さらに、それを中学校でも行うことが適当とされています。

そして、今年から「英検」も大幅リニューアル。新しく、スピーキング・テストが4〜5級も含む全級に、そして、ライティング・テストが2級に導入されます。

20160125_semba_5.JPGまた、小学生が受ける私立中学などの一般入試(帰国子女のための特別試験などを除く)では、英語を導入する学校が増加しているとのこと。この冬、首都圏では64校が「英語(選択)入試」を実施します(首都圏模試センター調べ)。

一般の小学校では、現在、5、6年生が英語活動にとりくんでいます。しかし、今後は3、4年生が英語活動でコミュニケーションの素地を築き、5、6年生は「聞く」「話す」に加えて「書く」「読む」も取り入れた教科としての英語を学習し、評価も受けることになります。

これにも先進的な動きがすでにあり、たとえば、多摩市立愛和小学校では、公立小学校でも5、6年生の英語活動の時間に、民間企業(ベストティーチャー)の教育プログラムを活用。オンラインでネイティブの講師と「話す」「聞く」をしながら「書く」「読む」までを体験しています。先日は、スピーキングも含めたテストTOEFL Primary®も実施。やはり、英語を使って何ができるかをみるテストです。

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多摩市立愛和小学校の英語活動。ICT教育の可能性を探ってきた愛和小学校では、3月にi和design-Final Presentationを開催予定。

保護者も一緒に。「何を覚えたか」よりも「何ができるようになったか」

新しい英語教育のもと、家庭ではどんなことができるでしょうか。

英語教育の各方面で活躍されている、神田外語大学外国語学部英米語学科の田中真紀子教授(児童英語教育研究センター 副センター長)にお聞きすると、「学校でとりくんだ英単語などの内容を家庭にも知らせてもらい、子どもに授業の内容をたずねるなど、会話の中で何気なく復習させながら、保護者も一緒に学ぶといい」と、アドバイス下さいました。

保護者も、英語で「何ができるようになったのか」「何をできるようにするか」を意識して、子どもと話しながら、自分の学びも進められそうです。

変わり目の時期。アンテナを張って

こうした変化は起きているものの、全体的にはまだまだ模索している段階。新しい大学入試のスタートも、当初の2020年から引き伸ばされたところです。しばらく変わり目の時期は続きますが、英語教育でも、やはり目指す方向性を本質的に捉え、アンテナを張って、学びの環境を選んだり整えたり、そして、できる人は提供したりしていけるといいと感じます。

仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

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