先月、2月29日にロサンゼルスのハリウッドで行われたアカデミー賞はご覧になりましたか?
今年は始まる前から黒人が少ないという批判から始まり、ついにはボイコットすることを公にしたセレブもいて、なにかと話題になったアカデミー賞でした。
"Pixar Oscar" by Marcin Wichary
聞き起こしの仕事とは
普段は日本語から英語の翻訳をしている私ですが、その日は、アカデミー賞のレッドカーペットでのインタビュー映像の聞き起こしの仕事をしていました。
英語の映像に日本語字幕をつける場合、ドラマや映画ならもともと台本がありますが、インタビュー映像の場合は台本に沿ってセリフを言っているわけではないので、撮影が終わった時点ではスクリプトは存在しません。そこで、話者が何を言っているのかを聞き取ってすべて書き出す作業が発生するのです。
聞き起こしをする際、一語一句を時間内に書きとらなければならないので、やや緊張します。ただ、アメリカ英語は、自分が一から勉強してきた英語ですし家族もアメリカ英語ですので、聞き取り自体にはあまり不安はありません。イギリス英語を聞き取るよりは早く終えられるだろう、と思っていたのですが、今回自分が担当したところは意外にも2人の外国人女優のインタビューでした。
外国人の英語
一語一句書きおこさなければならない場合、英語ネイティヴでない人の英語を聞き取る際には少し注意が必要です。
まずは「発音」です。イギリス英語、オーストラリア英語など、基本的に自分が慣れ親しんだ訛り以外の英語を聞き取る際には、その人の訛りに一度慣れる必要があるので、少し時間がかかります。
もう一つは「ボキャブラリー」です。これはネイティヴの人でもあり得るのですが、非ネイティヴの場合、適切な言葉が浮かんでこない場合に、それを連想させるような単語を言って終えてしまったり、母国語の単語を入れる人もいるためです。
映像があるので、顔の表情や身振り手振りなどから、言おうとしていることはわかるものの、書き出した文字を読んでみると意味がわからない、わかりにくいということがあります。
そしてこのスクリプトを元に、今度は英日字幕の翻訳者が字幕翻訳をするのですから、意味が通じない文が並ぶのは困りものです。そんな時、何度も巻き戻して聞くことになるので、通常よりも時間がかかります。
"Learning" by CollegeDegrees360
今年のオスカー受賞者は外国人が多い
さて、ハリウッドのインタビューで自分の担当箇所が外国人になるとは...と思っていたところ、今年のアカデミー賞では受賞者の多くがアメリカ以外の国の人だったことを知りました。
もちろん、これはさきに述べた人種差別の問題を受けたこともあるのだと思いますが、もともとアメリカの映画を対象に作られた賞にしては、以前よりもいっそう国際的になってきているように感じました。
ボーダレス・マインドで行きましょう。