家庭でアクティブ・ラーニング。思考を鍛えるカギは?

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卒業式もほとんど終わり、新年度を迎える季節。今年の冬は、たくさんの受験生が頑張る傍らで、このシリーズでお伝えしてきた、国をあげての教育改革の動きも進み、入試内容にも、その兆しが見られました。今月は、高大接続システム改革会議の最終報告もまとめられたところです。課題も残り、見送られた内容もありますが、昨年末には、新しい大学入試の問題例も、記述式問題の導入が決められた国語・数学で公表され、やはり思考力や判断力、表現力などが求められるものでした。

今、「変わり目」の子育てへのフォローも忘れない

改革の鍵とも言われるアクティブ・ラーニング導入についての模索や議論も、ますます活発化しています。携わる方々のご苦労やご活動の様子も垣間見て頭がさがる日々ですが、この冬、私が、取材やセミナー、面談などを通して目の当たりにしてきたのは、保護者の方々の戸惑いです。改革のはざまにいる子ども達や、子どもを産み育てている人たちにも、不都合や孤立、混乱があってはいけないと思わされてしかたありません。

何度もお伝えしている通り、今は「最新情報」がめまぐるしく変わるため、大切なのは、改革の本質を捉えることだと言えるでしょう。教育や情報を提供する側も、営利非営利問わず、新しい教育の実現と、子育ての支援という、社会からの大きな目線を持ち続けなければいけないと思います。

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「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の国語の記述問題イメージ例のひとつ。これまでの選択式のマークシートとは異なる様相。旧来の教育を受けてきた子どもたちは、どうしたら?

家庭でアクティブ・ラーニング。「丸暗記した知識」も、活用して言語化

今回の教育改革には、将来の社会課題を乗り越える人材を育てるという切実な思いがこめられています。ですから、新しい学びのヒントとして、国際的に展開される教育プログラムや、産業界での人材開発、ICTの活用などが注目されているのです。家庭でも、できるだけ、子どもたちに、そのような方面の学びが得られる環境を意識したいところです。

そして、新しい教育の特徴は、「思考」や「表現」の力を大切にすることでもあります。「思考力」と言っても要素は複雑ですが、"従来型教育"のパターンで「知識の丸暗記」をしてきた(または、している)子どもたちに対して、まず家庭でしたいのは、「その知識を活用する思考」の基盤を育てることではないでしょうか。

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photo by Magic Madzik

日頃の声かけやおしゃべりを変えるだけでも、思考は育ちます。たとえば、学校で習ったひとつのことについて、①その子本人の暮らしや興味と関連づけて話すこと、②まったく価値観や環境の違う人や国の問題に置き換えて話すこと。この2つをするだけでも、同じテーマに対して、ぐっと目線が近くなったり遠くなったりして、思考は鍛えられます。

対話によって言語化し、表現しあうこともポイントだと言えるでしょう。また、子どもに考えさせるためには、まずは、大人が本気で興味を見せて考えておしゃべりしたり、そこから行動をおこしたりしたいところです。

キーワード「多様性」に注目。答えのない問いへの思考を続ける

また、このように子どもと話しながら思考を育てていく中で意識したいキーワードがあります。それは、教育改革でも重要視されている「多様性」です。

多様性を叶え、価値観の異なる人たちとも平和的に課題を解決していくことや、ひとりひとりの個性に沿った能力を発揮しあうことが、今後の社会の課題。でも、実際は、とても難しいテーマで、まさに、前例も答えもありません。

自分らしさの意味、自分と異なるものの捉え方......。それを大人も子どもも一緒に考え続けるような家庭を築くことができたらいいのではないでしょうか。

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photo by Vicki C

固有の形を追求し、全体に通用するものを生み出す

この1月、以前ご紹介した国際バカロレア(IB)のTOK(Thory of Knouwledge:知の理論)のエッセンスを理解するための本が出版されました。私の夫(後藤健夫)が編集し、私自身も制作の一部に関わらせていただいたものです。

これに収録された対談で、国連国際学校47年の教員経験を持ちIBのティーチャートレーナーとしても活躍する津田和男氏が、土着の持つ創造性につながることを提言しています。TOKの中の「土着の知識の体系(Indegenous Knowlege)」という領域に関連してのお話ですが、それぞれの地域で生まれ受け継がれた、独自の知恵や知識の可能性が語られています。

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1月に出版された『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた『知の理論』 』。IB校で教科書として使われる書籍からの翻訳などを収録。今、TOKのエッセンスを理解するための本として。

多様性を実現するためには、独自・固有ものを追求し、それを全体に通じるものにしていくという道がありそう。私たちも、それぞれの人や、家庭、地域、国、文化......その特質のもとで生まれ育ったものを、大切に全体でも共有し、生かしあうことを意識できるといいのではないでしょうか。

そして、そんな動きが当たり前になる未来が、来ればいいなと、思います。

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photo by Wayne Silver

仙波 千恵子

Writer 仙波 千恵子

ライター・Rhythmoon編集部メンバー
大学時代に編集プロダクションでライターを始め、フリーランスに。結婚後、知的障がいの息子を含む3人の育児が少し落ち着いた時期に、新しい教育を追求して学習塾に勤務。その後再び独立し、教育、働き方、女性の生き方、地域などの取材記事の執筆や、教育コンテンツの開発、講師などをしています。東京郊外の高尾に在住。
http://fwook.net/

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