食物の性質を表すモノサシを使った日々の献立の考え方

こんにちは。国際中医薬膳師のムラカミレイコです。
季節の変わり目の食養生をお届けする「四立の薬膳」。本日5月5日は立夏です。夏が極まる大暑に備えてエネルギーをきちんと保持しながら、梅雨などでたまやすい不要なジメジメを体内から排出する身体作りをしておくことが大切です。今回の四立の薬膳で、皆様の夏の準備に役立てば幸いです。

食べ手と食べ物のバランスの調和と調整

前回の立春の回では、お膳全体でバランスを考えることの大切さに触れました。中医学では、「平衡がとれた状態」についてさまざまな表し方をします。陰陽、五行、正邪、虚実、臓腑、などそれらをモノサシに、バランスの状態を考え、分析し、方針を決め、組み立てたお膳が薬膳の基本的な考えですが、今回は、食べ物の性質、効能を表すモノサシをご紹介しながら、立夏の養生についてお話していきます。

食物の性質を表すモノサシ:性味・帰経

人も、そして、それを取り巻く環境である世界も、お互いに影響し合う関係が続くという整体観念がありますが、その影響を実際に物として身体の中に取り込めるのが「食物」です。動物の中でも人間は、多様な食物から栄養や食物自体のバランスを受け入れることができ、そしてさらに調理などによって吸収の仕方を変化させてバランスを調整する能力を持っています。そういった変化、調整を長期に渡る経験などから理論にまとめたものが中医学、東洋医学、薬膳、民間療法などです。

食物の性質を表すものとして、「性味(四性五味)」と「帰経」という言葉が薬膳では頻繁に使われます。バランスを考える上で不可欠なものですので、詳しくご紹介していきます。

[性味:四性・五味]

四性は、薬材や食材がもつ作用の中で、身体を冷やしたり温めたりする傾向を分類したものです。寒、涼、温、熱の四種で四気とも言われます。寒が一番冷やす作用が強く、その次に涼。反対に、温める作用が一番強いのが熱、その次に温。そして、冷やすでも温めるでもないものが平として分類されます(平を含め、五性・五気という場合もあります)。

20160505_yakuzen_1.png

五味は、食材の性質を五つの味(酸、苦、甘、辛、鹹)に分け、分類したものです。味覚と密接な関係にありますが、そのものの味とこの五味が必ずしも同じということでもないのが少し難しいところですが、長い歴史の中で、それぞれの働きや効能の傾向に分類したものが現在の食材の五味の属性となっています。

五味

引き締める作用
汗や水分が出過ぎるのを止める

不要なものや、熱や過剰な水分を排出
乾燥

エネルギーを補う
痛みを和らげる

滞りを発散
通りを改善

固まりを和らげる
むくみを改善


酸はきゅっと引き締め外へ漏れることを防ぎ、苦は下に不必要なものをおろしジメジメを乾かし、甘は不足している気力や疲れを軽減し、辛は滞りを解消させ、鹹は固まりを柔らかくし不要な水分を排出するといった作用があります。

酸:梅、レモン
苦:苦瓜、ウド
甘:山芋、キュウリ
辛:生姜、シナモン
鹹:昆布、エビ
などが実際の食材とその味の分類ですが、基本的には実際の味覚に近い物が多いです。キュウリや山芋などが甘というのは少し想像しにくいかもしれませんが、補ってくれるものというイメージの甘であると考えれば、理解しやすいかもしれません。

[帰経]

食材が効果をもたらしやすい臓腑のことを表したものが帰経です。帰経には12の臓腑経絡があり、蔵は心、肺、脾、肝、腎の五つでそれをまとめて五蔵といい、腑は坦、胃、小腸、大腸、膀胱、三焦を六腑といいます。これらが五臓六腑、人体を作る大事な要素です。その大事な要素に、日々食べる食材は作用し、影響を与えていると考えられています。

食物と人の調和

このように食材には温めたり冷やしたりの性質を表す四性と味覚をベースに分類した五味を合わせた「性味」、そしてどの臓腑に効果があるかを示した「帰経」という特性があり、それらをモノサシとして食事の調和を考えることができます。薬膳辞典や素材の性味表を使ってこれらを調べることができますが、それぞれを細かく覚えることはなかなか大変です。ましてや、本を片手に店の中をうろうろするのもあまり現実的ではありません。

そこでとても役に立つのは旬のものです。とくに自然の状態で旬を迎え店頭に並んでいる食材は、その時期バランスを保つのに必要な要素を持っています。これを食養・養生といいます。

ですが、これは食べる側のバランスが取れていることが前提です。食べる人間のバランスが崩れている場合、なぜ崩れているのかを分析し、上記モノサシを使って必要な要素をもつ食材を選定、献立を計画、調理することで実行することで、調整をとることができます。これを「食療」といいます。そうはいっても、どちらが自分に必要かわからない!そんな時は、旬の物を取入れながら、身体が冷えてるかな?熱っぽいかな?など自分自身の体調に意識を向けてそれを改善する食べ物はどういったものだろうと意識をむけるだけでも改善への一歩となるはずです。

次回は、今回ご紹介したモノサシを使って考えた立夏のレシピをご紹介します。

ムラカミレイコ

Writer ムラカミレイコ

日本、香港、カナダで育つ中、言葉や文化の違いの中でそれぞれが暮らすということ、に興味をもつ。カナダの大学を卒業後、日本に戻り、ITコンサルティング会社の研究開発部門に勤務。退職後、中医学を軸とした薬膳を学び、国際中医薬膳師の資格を取得。時間を見つけては、国内外問わず知り合いを訪ね、
その土地の暮らし方、食文化と出会う旅を続けている。
身体は食べ物で直すより、食べ物への意識で直す、を推奨する。柑橘の時期は愛媛県大三島の様々な種類の蜜柑の販売をしたり、旅に便利な物を密かに開発したりも。

ムラカミレイコさんの記事一覧はこちら