【職種別座談会】ライターに寿命はあるのか? 後編

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前編に続き、「ライターに寿命はあるのか」をテーマに、ライター歴が長い、アラフィフの先輩ライターお二人をゲストに迎え、働き方のこと、ライターとしてのこれからについて話をお聞きしました。

ゲストスピーカーProfile

柏木珠希さん

大学時代に出版社の編集部でアルバイト。就職活動では映画会社の試験を受けるも全敗し、そのままアルバイト先だった出版社の仕事を請け、なし崩しにフリーランスのライター人生をスタートさせた。著書は『おひとりさま女子の田舎移住計画』『小さなカフェのつくり方』『会社を辞めずに自分の店を持つ 週末店主』など。現在は書籍の執筆を中心に活動している。長野県で夫と二人暮らし。

柏木さんの田舎暮らしの様子はこちらの記事でCHECK! 仕事前のスノボーが息抜きに。田舎暮らしを満喫するライター兼ビルオーナー@長野県


山崎伸子さん

愛知県の出版社でエリア情報誌の編集をしていたが、30歳を目前に「映画ライターになる!」と思い立ち1年後にフリーランスに。映画の仕事は東京にしかないからと上京する。MovieWalkerを中心に多くの映画関連ニュースやインタビュー記事を手掛ける。都内でご主人と二人暮らし

人に紹介してもらえる人材になろう

赤荻)お二人は、いまでも営業はしているんですか?

柏木)時々してますよ。いっとき、売り込むということはニーズがないということだから、頼まれたことだけをやろうと思っていたら全然依頼がなかったですね(笑)。だから今は、やっぱり売り込みに行くようにしています。でも、営業は苦手で......。書籍の場合は、自分で営業せずに、フリーの編集者や出版プロデューサーに営業してもらうことがときどきあります。自分で営業して「私ってこんなにおもしろいですよ。おもしろいネタありますよ」というよりも、人に「柏木さんっておもしろい人がいて、こういうネタ書けます」と言ってもらうほうが信ぴょう性あるので。

山崎)私の場合も、新規のほとんどが紹介です。「やりたいな」と思っていると、自然とその仕事が入ってくるんですよ。マイナス思考にならず、決して腐らず、誠実にやっていると、仕事をした人の横のつながりから紹介してもらって......という感じで。名刺交換の場でも、自分一人だけでするのでなく、誰かと一緒にいてそのときに紹介された時のほうが、後になって仕事になることが多いですね。

赤荻)やはり紹介は強いですよね。紹介する側も変な人は紹介できないという思いもあるし、される側もその思いがわかるから、より信頼するんだと思います。

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働き方を柔軟に変えられるのがフリーランスの魅力

赤荻)お二人はご結婚されていますが、結婚前と後でお仕事スタイルに変化はありましたか?

柏木)基本的に、「取材しただけではなくて、自分がちゃんと体験したことについて書く」というスタイルは変わりません。2008年から2年間カフェ経営をしたことをもとにカフェ経営の本を出し、カフェを経営したことで「店舗は借りるより買ってやったほうがいいなー」と思うようになって、ビルを買い不動産投資の本も出しました。2011年に長野県に移住したので、その時の体験も本にしました。

思いがけず最近結婚してからは、夫の転勤で長期間海外に行くことも多いので、雑誌のようなタイトなスケジュールの仕事は余計に請けられなくなりました。日本にいるときにぎゅっとまとめて取材して、長野または海外で執筆しています。

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山崎)結婚するまではそれこそ本当に馬車馬のように働いていました。結婚してすぐは、仕事を2割くらい減らしたのでその分収入も減りましたね。夫は「食」をとても大切にする人なので、夕飯を何品も作らなくてはいけないし、それにできるだけ一緒に食事をしようと思うと、仕事の時間をどうしても削らなくてはならず......。普段の食事は私が作りますが、時間があるときは、夫は私よりもちゃんと料理をするので、その辺は何も言えないんですけどね(笑)。
そんなわけで、今までは薄利多売でとにかく体を動かして稼ぐという感じでしたが、最近はクライアントと信頼関係をきっちり結んで、しっかりやりますから報酬もきっちり、という仕事が増えてきたので収入も安定してきて、生活にも目を向けられるようになりました。

ライターは、プレゼンターであれ

赤荻)ライターとしての将来の目標やイメージはありますか?

山崎)そうですね。書くという表現手段を使って映画について書き続けたいです。ディスられる映画もありますが、監督に話を聞くと、監督にはきちんとやりたいことはあって、それが世間にあまり理解されないというだけのこと。だから、映画ライターでいる限りは、映画のプレゼンターでありたいと思っています。いろいろなタイプのライターがいますが、映画に関して辛口なことはあまり言いたくないな。

赤荻)映画ライターは、最終的に映画評論家になっていくことが多いようですが、そういった目標はありますか?

山崎)あまり思っていないんです。夢や目標は......、それがどんな形かはわからないけれど、いつかは映画のクレジットに入りたいな、とは思っています。

一同)おー!

赤荻)柏木さんの目標はなんですか?

柏木)上島竜兵さんになること(笑)。というのは半分冗談ですが、仕事はいただける限り、この先もずっとやっていきたいと思っています。なんでも「ネタになる」と思ってやっていることが多いので、その時々に合ったネタを見つけて書いてそうな気がします。あと、いずれまたカフェはやりたいですね。企画書を持ち込むノウハウを講演するのもよいかな、と思っています。

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誠実に仕事をしていれば、次は必ずある

赤荻)では最後に、ライターのみなさんにアドバイスやメッセージをお願いします。

柏木)私の場合、出版社、Webコンテンツ制作会社だけでなく、意外と企業の広報や広告用のDVDなど、出版に関わらないところからの相談も多く、そこから仕事につながることもあります。頼まれたらとりあえず請けてみるという姿勢は大切ですよね。評判が良ければまた次もくるし、ダメなら来ないということです。それで次第に淘汰されて、自分のジャンルや得意なものが浮かび上がることもあるはずです。よく「ジャンルを絞ってブランディングするのがよい」と言う人もいるけど、若いうちは戦略的に決めすぎないこともありだと思います。

山崎)仕事って、編集者の意図をくみ取って締め切りを守って...という感じで、誠実に仕事をしていれば、次は必ずあると思うんです。リピートしてもらうためには、まず目の前のことを一つひとつちゃんとやることなのかなと思います。

あと、友だちから以前「サラリーマンのVSOP」って言葉を聞いたんです。20代は「V」のバイタリティ:気力、やるき。30代は「S」のスペシャリティ:専門性。40代は「O」のオリジナリティ:独自性。そして50代は「P」のパーソナリティ:人柄。結局はパーソナリティが仕事を呼ぶんだと。サラリーマンではないですが、この言葉は自分の仕事にでも当てはまると思い、それ以来参考にしています。その点で言えば、40代の「O」はどうしようかと悩み中ですが(笑)、私にしか書けないもの、私独自の視点を文章にしていきたいなと思っています。

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―――今回、お二人とも今後の展望を持たれていたことがとても頼もしく、20代の代名詞であったバイタリティを今でも持ち続けているような、しなやかな活力を感じました。
「ライターの寿命」は年齢や人間関係ではなく、目の前の仕事に対し、以前と変わらない熱量を持っていられるかという自分の内面が要因のようです。経験を積んでいくことは、新しい仕事を作り出すチャンスととらえているところが印象的でした。

撮影協力:GOOD MORNING CAFE&GRILL

虎ノ門ヒルズの真向かいにある、ガラス張りの外観と開放的なテラス席が目を引くカフェ。モーニングだけでなく、ランチ、ディナーのメニューも充実しています。

赤荻瑞穂

Writer 赤荻瑞穂

編集・ライター。Rhythmoon編集部メンバー
会社員時代に雑誌や書籍の出版、エンタメ系ポータルサイトメディアの運営に携わり、2008年フリーランスに。現在は子どもや女性、地域、ライフスタイルなどをテーマにした企画、編集、執筆を手掛ける。人と人をつなぐことを得意としており、イベントなどの企画から運営、管理なども多数経験。私生活は4歳と1歳、二人の男児の母。

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