目指せおもてなし文化? フィンランドのカスタマーサービス

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Kesämökki(ケサモッキ)=サマーコテージで過ごすのがフィンランド流夏休みの過ごし方。湖畔、海沿いまたは森の中にあるサウナ付きの家で家族や友人たちとゆっくり時を忘れて過ごします。サウナのあとはもちろん海へ! Photo by Kivirannan Lomamökit

いよいよフィンランドの夏休みがはじまりました。6月から8月中旬または9月までの2〜3カ月間の休みです。この間にフィンランド人がクリスマスと同じぐらい楽しみにしているJuhannus(ユハンヌス)夏至祭があります。今年は6月25日。目前にせまり現在フィンランド人はその準備に大忙しです。

さて夏休みシーズンに入ると旅行や外出先で接客を受ける機会が増えます。そこで今回はその接客やカスタマーサービスについて。観光地はもちろん、日常で接するフィンランドのサービスとはどのようなものなのかをお伝えします。

接客は個人の常識に委ねる?

私が移住前にフィンランドを訪れた際、ファーストフード店で商品の注文を30分ほどすっぽかされて、謝罪の言葉もなく無言で商品を渡されたことがありました。また、移住後にはデパートの店員がガムを噛み雑誌を読みながら接客していた光景を見たこともあり、「残念な接客」が多い印象がありました。たまたま夏休みのバイトや新入社員の人たちだったのかもしれませんが、日本の接客に慣れてしまっていた私は、がっかりしてしまったのです。一方で、商品の会計時にシステムトラブルなどで長時間待たされた時にディスカウントチケットが配られた衣料店もあり、対応のばらつきがかなりあるのもフィンランドの特徴といえるかもしれません。

日本であればどんな立場の店員でも接客の基本をトレーニングし理解していると思いますが、ここではカスタマーサービスのマニュアルが一般的には存在せず、個人の常識の範囲内で対応、という暗黙の了解のように見えます。

DIY(Do It Yourself)文化が根強い

日本でも広がってきているDIY文化。自分たちで何かを作ったり修繕したりする生活文化が根底にあるような気がします。

例えば、引越し。日本では引越し業者*へ依頼することがほとんどですが、フィンランドでは自分たちでトレーラーを牽引したり、友人知人の人手を募って行います。持ち家も自分たちで作る人もいます。義家族の家も手作りですし、知人たちも将来時間が出来たら作りたいと言うほど。サマーコテージなどはその肩慣らしとして作る人もいるとか。

他には家具や家の補修や改修、車の修理なども普段の生活の中でやってしまう人が多いです。とくに家の補修や改修は業者に頼んでもすぐには飛んできてもらえないからか、ホームセンターで修理部品を買ってきて自分たちで直してしまうのが一般的なようです。また商品のアフターケアなどのサービスも少ないです。このように何でも人任せにせずに自分たちでやるという概念があるからか、お金を払ってサービスを受ける習慣があまり定着していないことも、カスタマーサービスの充実度に影響しているのではないかと思います。

* 引越業者や修理業者などはもちろんあります。最近はカスタマーサービスの概念が広まりつつありすぐに対応してくれる業者も少し増えてきてはいるようです。

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トレーラーはレンタルまたは10万円ぐらいで購入できます。今の時期、このトレーラーを牽引している自家用車をよく見かけます。とくに週末はサマーコテージで過ごすための日用品を積んだりヨットやボートなども牽引して港に向かう車も多いです。Photo by Muuli

浸透し始めた「顧客主義」

首都ヘルシンキを中心に、ここ数年食文化などが活発になり、日本からはもちろん、他国からの観光客が以前よりも増えています。そのためヘルシンキのレストランやホテルなどの接客サービスが良くなってきたと聞きます。大手デパートや接客に力を入れているお店はマニュアルがあったり、勉強会などへ参加しているとも聞きます。

またフィンランド企業の社会的責任(CSR)の世界では、"Asiakas on kuningas"(顧客主義)がようやく注目され始めました。企業が社会で存続する責任の一つとして顧客のニーズを理解し満足を高める。ただし、労働者の権利が守られる範囲で、長時間労働や夜の宅配サービスなどは法律上禁止されていますので、日本の迅速で、かついつでもどこでも受けられるカスタマーサービスとは基本的には異なります。

他にも大手スーパーの日曜営業時間が延びたり、顧客満足度調査を行う家電量販店が出て来たり、少しずつ変わってきているフィンランドのカスタマーサービス。日本の「おもてなし」と言われる接客文化とまではいかなくても、DIY文化を継承しつつ、国内全体に満足するような接客が定着すれば、小国家の市場がもう少し活性化するのではないかと思います。

Thumnail photo by Muuli

藤原斗希子

Writer 藤原斗希子

CSR(企業の社会的責任)/Sustainabilityに関するリサーチャー兼アドバイザー。2013年より在住。現在、フィンランド人の夫と育児中。
リズムーンでは、「世界から届く多様な生き方のヒント(フィンランド編)」にて、現地の暮らしぶりやフィンランドからみた日本についてなどを連載中。
ホームページ:「今と未来のあいだ」https://actokin.com/

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